松戸市   “パン好きの聖地”「ツオップ」

松戸市   “パン好きの聖地”「ツオップ」の2階には妖精が住んでいる?

 

松戸市郊外の住宅地にあるものの、遠方からもファンが訪れる人気パン店「Backstube Zopf」(バックステューベ ツオップ)。400種ものラインナップから、毎日300種以上の多彩なパンが並ぶ“パン好きの聖地”として有名だ。

■ カフェでは料理やドリンクとともに焼きたてパンを楽しめる

「Backstube」とはドイツ語でパン焼き小屋という意味。言い得て妙とはこのことで、都内の個人パン店のようにそれほど広くはない。この空間に多彩なパンがぎっしり並べられているのが魅力でもあるのだが、グリム童話に出てきそうな欧風の設えも愛らしい。ところで、この2階がカフェとして営業しているのをご存じだろうか。

カフェの店名は「Ruheplatz Zopf」(ルーエプラッツ ツオップ)。こちらはくつろぎの場所という意味で、コンセプトは“どうぞごゆっくり”。パン店の上にあるという特性を生かした、焼きたてのパンを料理やドリンクとともにくつろぎながら楽しめる。

■ 朝7時から営業している予約推奨の人気店

カフェでは単品のパンは提供されていないが、メニューはきわめて多彩。しかも朝7時から営業しており、出勤前に利用する人もいるという。そんなモーニングは10時までとなり、セットは680円の「かるく朝食」から用意されている。

ただ、朝の名物となっているのは1650円の「ゆっくり朝食」だ。これは100%果汁ジュースにはじまり、ヨーグルト、フルーツ、卵料理、スープと続いてパンの盛り合わせも当然食べられる、ボリューム満点の内容。

なお、10時以降はランチとなり17時まで営業しているが、昼はもちろん朝も大人気なので、予約をすることがオススメだ。またXmasはスペシャルメニューが提供されることもあり、特に人気となっている。

パン店、カフェともに混雑しているため、取材はカフェの定休日である水曜にうかがった。対応していただいたのは伊原靖友シェフの奥様・りえさんだが、明かりを灯すや否や、家具のレイアウトが気になったのか「あら、座敷童がイタズラしたのかしら?」と一言。おそらく冗談であろうが、本当にいてもおかしくない、ここはそんなファンタジックな雰囲気に包まれている。そういえば、同店の異名は“パン好きの聖地”。おいしい香りに誘われて、パンの妖精もお邪魔しているのかもしれない。

■ 毎日300種以上の多彩なパンが並ぶ

ツオップは決してアクセスのいい店ではない。最寄り駅はターミナルの松戸駅ではない北小金駅であり、そこからでも徒歩で約30分。だが遠方からでもどんどんお客がやってきて、すぐに行列ができる。この道程だから聖地なのだろうか? それともグリム童話に出てきそうな欧風の設えだから?

答えはどちらでもなく、もっとシンプル。パンが圧倒的においしくて、種類も圧倒的に多いからだ。しかも、どれだけ行列になってパンがなくなっても、常に焼いているためすぐに補充される。そしてできたてなのだ。コンセプトが“かならずお気に入りのパンが見つかるでしょう”というだけあり、まさにその通り。だからパン好きの聖地なのである。

たとえばライ麦やサワー種を使うドイツパン。同店にはドイツパンだけでもさまざまな種類があるが、代表作といえば「ヨーグルトライ」(367円~)だ。これは発酵種にカスピ海ヨーグルトを混ぜた独創性の豊かなパンで、伝統的なドイツパンより酸味がやわらかくまろやか。またフランス系のパンのなかでは「クロワッサン」(216円)が人気だ。

■ おいしさのための“できたて”という冒険

そして特に名物といえるのが「カレーパン」(248円)。これも揚げたてだ。出数も多いため、1日に揚げる回数は、50回以上にもおよぶという。そう聞けば、「ツオップほどの人気店で職人も多く、パンもどんどん売れればできたてを提供できるでしょう」と思うかもしれない。だがそれは結果論といえよう。

まだ行列がなかった2000年のオープン当初、スタッフが少数のころからできたてを提供していたのだ。廃棄も少なくなかったというが、おいしいパンを提供するために、めげなかった。だから噂が噂を呼び、全国からパン好きが集まるようになったのである。“できたて”はある意味怖くて踏み込めない、冒険といえるかもしれない。純粋においしさを求めて切り開いたからこそ、この小屋は“聖地”となったのだ。