2018年経済を揺さぶる11のイベント

世界経済は拡大の一途か?日本経済は?2018年経済を揺さぶる11のイベント

 

アメリカ・トランプ政権の発足で幕を開けた2017年。欧州でもフランス大統領選挙をはじめとしてイギリス、ドイツなどの主要国で選挙が行われ、中国も最高指導部の顔触れが決まった。こうした動きに触発されたわけではないだろうが、日本も衆議院選挙になだれ込み、引き続き安倍政権に経済運営のかじ取りが委ねられることになった。

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北朝鮮問題や中東問題など地政学リスク(注:ある地域での軍事的、政治的な緊張の高まりが地理的な位置関係で、その地域内や関連する地域に及ぼすリスク)による暴発は依然くすぶっているものの、各国での政治の枠組みが一応定まったことで金融市場も堅調な動きを見せている。

日米をはじめとする主要国の株式市場の株価は上昇し、欧米で金融引き締めの動き(注:中央銀行による、指標となる金利の引き上げや、市場に資金を潤沢に供給する政策の反転)が顕在化し始めたものの、まだ緩やかなため市場金利が急上昇するといった事態には陥っていない。

このように政治主導の2017年が終わり、幕開けした2018年。果たしてどんな年になるのだろうか。主な経済イベントを紹介することで、今後を占ってみよう。
【1月:積立NISAがスタート】
投資はしたいけど、そんなにお金はないし、リスクも冒したくない。何より税金を取られるのがしゃくに障るー。そんな人に朗報なのが2018年1月から始まる「積立NISA(少額投資非課税制度)」だ。毎年40万円まで最長20年間にわたって、金融庁の指定する一定の投資信託に限り、運用益(分配金や譲渡益など)に税金がかからないというもの。つまり、800万円までの投資が非課税になるのだ。通常は約20%の税金が課せられるのでこの差は大きい。

似たような制度で2014年にスタートした「NISA」があるが、一番の違いは対象商品と非課税枠。NISAはリスクの高い株式への投資もできるなど自由度が高い反面、非課税枠は毎年120万円、最長5年(運用期間を10年に延長することは可能)の計600万円と小さい。

このほか細かな違いはあるが、注意してほしいのは、NISAと積立NISAの両方に投資ができないという点。ひと言で言えば積立NISAはコツコツ少額を長年積み立てたいという人に向いているので、これから資産運用を考えているミレニアル世代は検討してみるのもいいだろう。

 

【1月:アメリカ税制改革法が施行】
世界景気への影響が大きいのは、何と言ってもアメリカの税制改革法だろう。個人と法人を合わせた減税規模は、過去最大級の10年で1.5兆ドル(約170兆円)に上る。

減税の柱は、法人税率の引き下げだ。現行の35%から先進国でも最低レベルの21%にするほか、海外子会社からの配当課税も廃止することで、アメリカへの資金還流を促し、投資を活発にしようというのが狙いだ。世界最大の経済大国であるアメリカの景気が良くなるのは、世界経済にとってもプラス。日本にとっても最大の輸出相手国であるため、追い風が吹く。

ただし、懸念材料もある。これまで海外にとどまっていた巨額のマネーがアメリカに還流するということは、すなわち新興国などからの資金流出を意味する。ただでさえ欧米共に金融引き締めの動きが継続することが予想されるため、経済理論的には欧米の長期金利は上昇する。仮に金利が急上昇するようなことがあれば、新興国からの資金流出は加速、大打撃となりかねない。日本企業もアジアをはじめとしてグローバル展開を積極化している。たとえアメリカ市場で潤っても、こうした新興国市場で落ち込みが目立てば、全く影響がないとは言えないのだ。
【2月3日:イエレンFRB議長の任期が満了】
2月3日にジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が1期4年で退任、後任には、理事のジェローム・パウエル氏が昇格する。パウエル氏は急激な金利引き上げには慎重な穏健派とされており、イエレン氏の路線を踏襲する可能性が高い。実際、2018年には年3回程度の金利引き上げが予想されており、着々とこなしていくものとみられる。

FRB議長のポストは、約40年にわたってエコノミストに占められてきたが、パウエル氏は法律専門家で投資ファンドの経営に当たったり、ブッシュ父政権下で財務次官を務めたりするなど、官民での豊富な経験を持つ。そんなパウエル氏が平時だけでなく、市場の急変時にどんな手腕を見せるのかが注目される。

 

【3月29日:「東京日比谷ミッドタウン」が開業】
東京都心で続く再開発ラッシュ。日比谷の旧三信ビル、旧三井住友銀行本店の跡地に3月29日オープンするのが「東京日比谷ミッドタウン」だ。2007年3月に六本木に開業した東京ミッドタウンに次ぐ、2つ目のミッドタウンが誕生する。

三井不動産が開発を手がけ、日比谷公園を眼下に望む、高さ約192メートル、地上35階、地下4階の超高層ビルで、延床面積約18万9000平方メートルを誇るオフィス・商業施設となる。約60店舗にシネマコンプレックスなども備えた「街」の誕生は、再開発が続く東京の新名所となりそうだ。
【3月末:NAFTA再交渉の期限】
トランプ大統領の選挙公約にも挙げられていた北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉。NAFTAによって貿易不均衡が拡大したと主張するアメリカが、カナダとメキシコに譲歩を求めているもので、再交渉の期限がくるのが3月末だ。

最大の焦点は、域内で生産された部品を一定割合以上使えば関税がゼロとなる「原産地規則」の厳格化。アメリカは自動車の部品の調達比率の引き上げを求めているが、カナダ、メキシコは抵抗し、議論は難航が予想される。

日本や日本企業にとってもこの再交渉の行方は対岸の火事ではない。メキシコを中心に自動車メーカーや部品メーカーが大挙して進出し、NAFTAの恩恵を受けているからだ。さらなるアメリカでの部品調達が必要になれば、サプライチェーンの見直しが迫られる。

日本政府にとっても、アメリカがNAFTA再交渉で大幅な譲歩を勝ち取れば、今後本格化させるとみられる日本との貿易交渉でも強気の姿勢で臨んでくる可能性は高いだけに、安閑とはしていられない。
【4月8日:黒田日銀総裁の任期が満了】
第2次安倍内閣発足後の2013年4月に日本銀行総裁に就任した、財務省出身の黒田東彦氏の5年の任期が4月8日に切れる。関係者の間では、アベノミクスを金融政策の面から支えてきた黒田氏が続投するという見方が強い。最大の理由は、黒田氏以外に現在の難局を引き受けられる人が誰も見当らないことだ。

日銀は物価が安定的に2%を超えるまで、異常ともいえる現在の超金融緩和政策を続ける方針だが、達成目標時期の先送りを繰り返している。「黒田氏のまいた種は黒田氏が摘むべき」という冷ややかな見方もある。

しかし、万が一、黒田氏が退任するようなことがあれば、次期総裁の人選次第では金融市場が大きく揺れることになりかねない。特に金利正常化に向けて消極的な人物が就くようなことになれば、「通貨の番人」たる日銀の信認はますます失われるだろう。ひいては「円」の価値下落にもつながるだけに、国民生活にも影響が及ぶのは必至だ。

黒田氏に先立って3月19日には学者出身の岩田規久男副総裁、日銀プロパーの中曽宏副総裁の任期が切れるが、当然、副総裁人事は、総裁人事とセットで絡んでくる。財務省OB、日銀プロパー、学者など出身母体でいかにポストを分け合うかも人選に影響しそうだ。

 

【6月:東京外郭環状道路の一部区間開通】
首都圏の渋滞緩和に一役買うのが、6月に計画されている東京外郭環状道路(外環道)の三郷南インターチェンジ(IC)~高谷ジャンクション(JCT)間の開通だ。埼玉県三郷市から千葉県松戸市、市川市などを通る総延長15.5キロの区間が新たに開通すれば、外環道の6割に当たる東京都練馬区大泉JCT から高谷JCTまで約50キロがつながることになる。

これによって都心への乗り入れがう回できるため、人やモノの流れが活発になり、物流や観光への効果も期待できるのだ。外環道のさらに外側には首都圏をぐるっと取り囲む圏央道の整備も進んでいる。企業の中にはこうした道路整備を見据えて、物流倉庫や工場の設置といった投資を検討しているところも少なくなく、波及効果は大きい。
【10月1日:株式の売買単位が100株に統一】
全国の証券取引所で、企業によって異なっていた株式の売買単位が10月1日までに100株に統一される。投資家の誤発注などを防ぐためだけでなく、売買単位が下がると買いやすくなり、売買が活発になるからだ。例えば1000株では100万円だったのが、100株で10万円になれば投資できる層が増えるとみている。

2007年11月から取り組みを始めているもので、当初は8種類存在していたが、2014年までに100株と1000株の2種類に集約。日本取引所グループによると、2018年12月1日現在、東京証券取引所の上場会社の94.3%(3351社)が100株単位になっている。
【10月11日:豊洲市場が開業】
土壌汚染や汚染水などの問題で当初予定から遅れに遅れていた築地市場の豊洲移転。豊洲市場の開業日が10月11日に決まったことで、東京都政最大の難題がようやく前進する。

ただこれで懸案がなくなったわけではない。「豊洲は汚染されている」といったイメージがすっかり定着した今、築地の魚と同様のブランド力を築くには並大抵の事ではない。

小池百合子都知事がぶち上げた移転後の築地の食のテーマパーク構想にも疑問の声は強い。もともと、豊洲で同様のコンセプトで観光施設の整備が進められており、近距離で共倒れするのではといった声が根強いからだ。実際、豊洲進出を予定していた温浴業者も撤退を示唆するなど、「オープンしたはいいが閑古鳥が鳴く」といった事態に陥りかねないのだ。小池都政にはいばらの道が続く。

【秋ごろまで:新元号の発表】
今上天皇が2019年4月30日に退位し、翌5月1日から新元号に移行する。明治以降は生前退位が認められていなかったため即発表となったが、今回は国民生活を配慮して「遅くとも半年前には公表するのが望ましい」という声があるようだ。

では元号はどのように決められるのか。「平成」の際などを参考にすれば、まず総理大臣が著名な漢学者や国文学者など数人に候補名の提出を依頼し、数個の原案を選定。さらに有識者の意見を踏まえた上で衆参両院の正副議長の意見を聞いた後、閣議で決定するという流れ。ただし、今回はたっぷり時間があるだけに、何らかの形で国民の声を反映するといったことも考えられなくはない。

選定される元号には条件がある。漢字2文字である、読みやすい、書きやすい、過去に使われていないなどのほか、明治、大正、昭和、平成のイニシャルが重ならないほうがいいとされる。事前にマスコミに出たら差し替えられる可能性も高い。「平成」まですでに247の元号が使われている。はたして248番目はどんな漢字2文字になるのか。
【秋ごろ:消費税率引き上げの可否の決断】
二度あることは三度ある ー 。政財官の関係者誰もがひそかに思っているのが、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げのさらなる延期だろう。これまで2015年10月、2017年4月に予定されていた増税時期を2回にわたって先送りしており、3回目もあり得るというのが偽らざる思いなのではないか。

その最終判断は、秋ごろまでがタイムリミットとみられる。問題は9月中に予定されている自民党総裁選挙の前か後か。ただでさえ「安倍一強」の状況で、党内には目ぼしいライバルがいないとはいえ、不利なことは争点にしたくないのが政治家の性(さが)。このため、総裁選後に判断するのではとの見方が強い。

安倍首相は「2008年のリーマンショック級の事態が起こらない限り引き上げる」と明言しており、仮に今回、納得のいく説明なしに先送りすれば、日本の財政運営に対する信頼は地に落ちるはず。国内外から厳しい目が注がれている。