【千葉県民の警察官】「一つでも多くの事件を解決」

【千葉県民の警察官】(下)捜査1課 野村正明警部補(60) 「一つでも多くの事件を解決」

 

「悪いことをした人間を野放しにしてはいけない。まずは逮捕して住民を安心させ、その後罪を認めさせなきゃいけない」-。警察官拝命当時からの信念を静かに語った。殺人や放火、強盗といった凶悪犯罪の捜査を担う捜査1課を中心に刑事としてのキャリアを着実に歩んできた。

県警の警察官拝命は昭和52年。学生時代から「将来は国や人のための仕事をしたい」と考え、自衛隊や警察への憧れがあったという。最終的に警察官を志望したのは「当時やっていた刑事ドラマの影響もあるかな」と笑顔を見せる。

拝命後は松戸署を振り出しに、茂原署や市原署、機動捜査隊などでの勤務も経験。その中で最も大きなウェートを占めるのは捜査1課の刑事だ。警察官としての41年6カ月のうち、刑事勤務は37年以上になった。

これまでの刑事としての人生で、最も印象に残っているのは平成15年に千葉市若葉区で発生した16歳少女の殺害事件。駆けつけた現場は、少女が金づちや約70キロの墓石で頭や背中を殴られて殺害され、焼かれた状態の遺体が発見された凄(せい)惨(さん)な状況だった。変わり果てた姿の娘の遺体を確認し、泣き崩れる母親を見て「絶対に犯人を逮捕しなければ」と心に誓ったという。

遺体を調べていた捜査員の「オイルの臭いがする」という一言から、周辺の店の防犯カメラなどを徹底的に調べた。その中の1つにオイルを複数本万引する複数の男の姿が映っていた。そこから犯人を割り出し、当時16~22歳の男5人の逮捕までこぎ着けたという。

凶悪な犯罪を犯した容疑者の取り調べを担当する中で、1番重要なのは「静かに淡々と事実のみを突きつけること」だと言う。刑事として培った長年の経験から「大声を出したりして、萎縮させるのは時代遅れ」と言い切る。もちろん、捜査結果を見せても認めない容疑者も多い。しかし、「いつまでも黙ったり、嘘をつき続けるのは非常に難しい。容疑者の心情も考えながら、起こったことを話してもらう」とベテランらしい自信を見せる。

昨年12月に発生した富津市と木更津市で起こった郵便局連続強盗未遂事件では、強行班捜査班長として取調官を担当。逮捕した容疑者の完全自供を引き出した。こうした仕事の姿を見て「熱い心を持ちつつも、頭は冷静を保つ人。取り調べでも、相手の出方をうかがいながら言葉を引き出していて参考になる」と後輩捜査員からの信頼も厚い。

仕事で最もうれしい瞬間は過去に携わった事件の犯人が出所後に「今後は真面目に生きていきます」などと書いた手紙を受け取ったとき。「社会に復帰してしっかり働いてくれている。仕事をしてよかったと思える」と顔をほころばせる。

ベテラン刑事となった今も、「一つでも多くの事件を解決しなきゃいけない」と衰えぬ意欲を見せる。県民の生命と財産を守るため、拝命当初からの信念は変わることがなく、県民の安心安全のために働き続けている。