千葉市 地域の集客・交通に役立つ導線改善アプリ

千葉市   最大40倍の誘導も!地域の集客・交通に役立つ導線改善アプリ

 

スタートアップ企業が、スポーツ分野における新しいサービス案・事業案の開発・検証を行なうアクセラレータプログラム「SPRING UP! for Sports」。TIS社が主催する本プログラムは4月に募集を開始し、27社の応募の中から7社が選ばれ、6月から3ヵ月間を事業期間として、サービス開発や実証実験などを行なってきた。
スタートアップ企業が、スポーツ分野における新しいサービス案・事業案の開発・検証を行なうアクセラレータプログラム「SPRING UP! for Sports」。TIS社が主催する本プログラムは4月に募集を開始し、27社の応募の中から7社が選ばれ、6月から3ヵ月間を事業期間として、サービス開発や実証実験などを行なってきた。

8月20日に開催された「SPRING DAY」では、各社のサービスやビジネスモデルの紹介、その成果発表のピッチが行なわれ、取り組みや成長度の視点からTIS SPRING賞最優秀賞を選定。その表彰が実施された。それでは本プログラムに参加し、事業開発に取り組んできたスタートアップ企業とそのピッチを紹介しよう。
センサーを搭載したインソールで収集したデータで実現するデータ銀行
ワイアードゲート社はセンサーを搭載したインソール「Smart Insole」を活用し、そこで得られたデータを活用したサービスをプレゼンした。Smart Insoleは、足の裏に8ヵ所の圧力センサーを搭載ししているほか、加速度センサー、ジャイロ、GPS、LED、Bluetoothを搭載し、運動中の力の伝わり方などのデータを取得する。本プログラムの事業期間にはこの仕組みを用い、遠隔地のコーチングが成立するかの実証実験を行なったことを報告した。

また、集めたデータをどう活用するかについては、ブロックチェーンを用いたデータ銀行の設立を検討。データ銀行にデータを集約することで、スポーツやヘルスケアなど、さまざまな方面で活用できることをアピール。データを提供するユーザーには、そのデータ活用によるお金の流れなどをすべて透明化して見えるようにし、還元することを提案する。なお、データの解析については外部と連携することを考えているとのことだ。

このデータ銀行におけるデータを使用することで、スポーツに関する解析やパフォーマンスの向上、あるいはヘルスケアにおいては目視で行なっていたリハビリなどを定量かしたデータを元にして行なえるようになる。今後はAPIを公開して、さまざまな企業などとのコラボレーションを検討している。

IoTとAIを活用し、スポーツによる体の故障リスクを低減
primesap社は健康状態を数値化するIoTやAIソリューション「Trac」を提供しており、スポーツにおける障害リスクの最小化とパフォーマンスの最大化をテーマとしている。今回は、野球をする子どもたちの障害リスクを最小化する試みを行なった。

野球では、ほとんどの選手がなんらかの故障をし、特に投手はケガでその3割がキャリアを断たれてしまう。そのほとんどが肘や肩の故障で、原因は投球が多すぎること、思い切り投げ続けていることが原因だ。そこで、選手たちにセンサーを取り付け、投球数のトラッキングを行なった。

さらに、事前事後の問診やこれまでのスポーツ履歴・野球履歴を加えてAIで診断すると、故障の瞬間までわかるので、リスクを避けながらいい選手に育てることができる。投球動作の速さや強度を同時に評価し、キレや体幹動作がどれだけスムーズに行なえているかという評価が、ビッグデータなしでできることを実証実験で確かめたという。

またこれらはスポーツ以外の可能性も大きく、たとえば、高齢者の動作評価もできると考えている。デイケアなどの施設内でどのような動作をしているか、食事や起床動作などをAIで評価できるとのこと。心肺機能や体力年齢、脳梗塞の聴講をセンサーを使ってパターンを調べるといった使用法にも広げていきたいとアピールした。

アスリートの腸内細菌からコンディションを管理
AuB社はアスリートの便を収集し、その中に含まれている腸内細菌を研究。その成果や知見を元にビジネスを行なっている。本プログラムにおいてはサッカー選手25名をモニターにデータを収集し、その分析結果などを基にその成果を発表した。

人の体内には1~2kgの細菌がいて、その数は数百種類に及ぶ。その菌によって体質や身体的特徴が変わるのだそうだ。まったく同じ遺伝子を持っている一卵性双生児で片方が太っていたときに、その腸内細菌を無菌のマウスに投与したところ、与えたマウスだけが太り始めたことからも、DNAではなく、体内にいる菌が体へ影響を与えていることが判明している。

今回モニターとなった選手からは、筋肉を増やしたい、疲労を回復したいという要望を持つ選手が多く、3グループに分けて、サプリや食事の改善を行ない、その前後の腸内細菌の検査を行なった。筋肉をつけるには、腸内細菌の多様性が多いほうがいいと言われており、今回どう改善したかについては分析が間に合わなかったということで詳細は提示されなかったが、集中力に関係している菌、美肌に関する菌などがあり、解析レポートに取り込む予定とのことだ。

ビジネスとしては、食品メーカーの受託研究、商品の作用のレポーティング、企業向けセミナーなどのほか、腸内細菌の解析サービスを行なうことを検討している。解析サービスはスポーツジムなどで対面で進めることを前提として、人が説明することで説得力を上げる。ビジネスチャンスとしては検査結果を見た瞬間がもっとも高いので、個人に合わせたサプリの販売などを行なうツールとして活用してもらうことを考えている。

従業員の健康状態を把握し、健康経営を継続
ドリコス社は、最適な栄養素をオーダーメイドで粉末にする「ヘルスサーバ」を製造・販売する企業。健康経営に注目し、従業員の健康についての課題を解決するため、本プログラムに参加した。

健康になるためには健康状態を測ることと、計測してから何をするかのアクションが必要。ヘルスサーバでは生体センサーにタッチすることで健康状態を測れ、そのスコアに対して必要なサプリメントを計算してその場で出してくれる機構を持っているが、その利用によって健康経営になることを今回実証実験で検証した。

ヘルスサーバから出されるサプリメントを摂取した後のスコアを測定することでパーソナルスコアがわかるが、身体年齢を数字やグラフで表示し、その健康状態を知ることができるほか、スコアの変化による健康意識の向上にも役立つという。今回TIS社から30名実験に参加したが、測定者からは自分の体のことがよくわかった、運動の機会が増えたという声が寄せられている。

現在はまだ途中経過だが、実験前に測った身体年齢よりも若返っているという測定者が半数という結果が出ており、ヘルスサーバを使うことで健康意識ができたり、行動変容ができているのではないかとのこと。2週間でこの結果が出ているので、2ヵ月後の結果に期待してほしいとコメントされた。

電子トレーディングカードでスポーツチームやアスリートを応援
スポーツチームやアスリートがファンから直接資金調達をできる電子トレカ「whooop」を提供するventus社。オリンピックなどのスポーツ大会を見て応援したいと思ったアスリートなどに直接お金を落としたくてそれができない状況を、このwhooopで解決する。

whooopはスポーツチームやアスリートの選手カードがランダムに出る電子トレカで、その売り上げの9割はチームなどに入り、直接支援をすることができる。さらにトレカを集めることでチケットに替えられるといった特典も用意している。このwhooopは単なるトレーディングカードではなく、チームやアスリートの応援証明書として、ずっと応援してきたことを示すこともできる。

本プログラム期間中はプロモーションなどをせず、サービスをしっかりと作ることに注力し、ユーザーが求めるものを実装していった。さらに素材提供などのレスポンスが遅くなりがちな部分では、参加チームを対象としたマニュアルの作成、チーム側で触れる管理画面を作るなどの対処をしたとのこと。

今後は、whooopを通じて、もっとも大きなスポーツ応援コミュニティーを作り、ファンが集まる場所を作りたい、そして、電子トレカをどれだけ持っているか、どれだけ記事を読んだかなどをマネージメントし、まったく新しい形のファンマネージメントを実現したいとアピールした。

スポーツを通じた日中交流プラットフォームを構築
中国の子どもたちのスポーツ環境の改善と日本の地方創生を連携させ、スポーツツーリズムで日中交流のプラットフォーム作りを目指すGACO社。

外国時観光客誘致によって日本を訪れる外国人は増えたが、そのほとんどが大都市圏に集中している。しかし、それ以外の地域にはスポーツ環境が揃っており、日本のスポーツを通じた教育なども含め、海外からは興味深い観光資源になっている。中国ではスポーツ環境の改善や教育人材不足といった課題を抱えており、ここに日本の地方創生を連携させることで、双方の問題を解決する方法を検討した。

本プログラムでは、西伊豆で実証実験を行ない、野球をテーマに中国の子どもたちを1週間滞在させ、日中の子どもが一緒に野球を学び、礼儀正しさやルールなどのしつけ教育なども行なった。中国側はスポーツや教育についての関心度が高く、日本側も文化交流やビジネスの観点から受け入れ体制のニーズが確認でき、今回の実証実験で興味をもってもらい、今後の協力や連携合意を取り付けたとのことだ。

この取り組みでは、日本の地方の情報をワンストップで中国に提供するマッチングサービスを展開。アスリートや旅行業者、協力できる住民が登録でき、スポーツ施設などの新しいコンテンツの情報を提供する。中国側は来日の日時や子どもの人数などを入力し、旅行パッケージとして提供する。今後はブロックチェーンを導入し、地域の仮想通貨などの投入や評価によるインセンティブを与えるシステム構築を検討している。

スマホによって位置情報を集め、そのデータの活用で人の行動を変容
スマホにインストールするだけで、位置情報付きの日記を自動生成するライフログアプリ「SilentLog」を提供しているレイ・フロンティア社は、本プラグラムにおいて、位置情報を利用したスポーツの実証実験を行なった。

実験が行なわれた千葉市ベイエリアでは、多くの予算を割いているにも関わらず、ZOZOマリンスタジアムや幕張メッセのイベント以外に集客できず、そのイベント前後に人が周遊していないという課題があった。今回はSilentLogをインストールしたユーザーに周辺スポットの情報と、交通手段としてのシェアサイクリングを与え、行動を変えられるか実験した。

その結果、実験前には海浜幕張駅、スタジアム、幕張メッセに集中していた人の導線が、それ以外の地域にも移動したほか、ベイエリア以外の滞在も増え、最大40倍の誘導が行なえた。参加者へのアンケートでは、自分で訪問ルートを作りたいが、作成に苦労しているほか、予定以外の寄り道もしたいという結果が導き出された。

審査の結果、審査委員特別賞にventusとGACOが、最優秀賞にはレイ・フロンティアが選ばれた。