市川市
鎌倉期からの文化遺産 参道と一丸でまちづくり 中山法華経寺【ふさの国探宝】
比翼入母屋造り様式で造られた全国唯一の仏堂「祖師堂」。その威容から「大堂」とも呼ばれる=市川市の中山法華経寺
鎌倉時代から続く日蓮宗大本山の中山法華経寺(市川市中山)。安房国で生まれた開祖・日蓮聖人が記した国宝の『立正安国論』をはじめ、国指定重要文化財の祖師堂、法華堂など貴重な文化遺産が多く残る。駅から寺に続く参道には多彩な商店が軒を連ね、昔ながらの門前町を形成。参道を活気づけようと、寺や商店街、地域住民が一丸となってイベントや景観保護に向けたまちづくり活動を続けている。
JR下総中山駅から法華経寺に至る一本道の参道を進むと、京成中山駅を越えたところに「黒門」と通称される総門がある。さらに坂を上ると「赤門」と呼ばれる、見上げるほど大きな三門に行き当たる。この間、参道の両脇には和菓子店や中華料理店、生花店など多彩な店舗が連なる。
三門から続く石畳の道は、春は絶好のお花見スポットだ。毎年2~3月には、寺と商店街、地域住民でつくる中山まちづくり協議会の主催で、街中の至る所にひな人形を飾るイベント「中山のおひなまつり」を開催。今年は三門にもひな人形が飾られ、来場者を楽しませた。
うっそうと生い茂る木々の間から、五重塔の突端が見えてきたら境内はもうすぐ。塔は国指定重要文化財で、元和8(1622)年に加賀前田公の寄進で建立された。手前にはレトロな趣の休憩処があり、軽食で小腹を満たしたり、お土産を買ったりできる。
龍淵橋を越えると、木々がなくなり一気に視界が開け、「大堂」とも呼ばれる祖師堂の威容が目に入る。「比翼入母屋造り」という様式で造られた全国で唯一の仏堂で、大改修を経て1997年に建立当時の姿に復元された。
法華経寺は修行僧の荒行の場でもあり、毎年11月~2月の100日間、真冬の水行など厳しい修行が行われる。2月の成満の早朝には全国から修行僧の親族や檀家が訪れ、修行の成就を見届ける。
一方で、普段の境内は近くの子どもたちの通学路であり、地域住民の憩いの場でもある。11月には秋の大法要に合わせ恒例の骨董市が開かれ、大勢の来場者でにぎわう。
こうした活気を参道にも波及させようと、寺側も積極的にまちづくり協議会の活動に参加する。寺で執事を務める田中見定さん(62)は「法華経寺という文化遺産がある中で、参道の文化も一度壊れてしまうと元には戻らない。ひなまつりイベントや景観保存を通して、参道に人が来て、まち並みを楽しんでもらえるようにしたい」と語った。
◆一口メモ 中山大仏
法華経寺の境内には、享保4(1719)年に造立された「中山大仏」がある。同寺によると江戸時代から「関東三大仏」と呼ばれており、関東では神奈川県の鎌倉大仏に次ぐ大きさ(身丈3.56メートル)という。
腐食が進んでいたため大修理を施し、今年4月に開眼式を行った。12月8日には完成を祝う落慶大法要を予定。同寺の田中見定さんは「東京五輪もある中、市川市の観光資源として活用できれば」と期待する。