日本芸術院賞を受賞した市川市出身の書家で大東文化大特任教授の土橋靖子さん(62)の書展が市川市芳澤ガーデンギャラリー(同市真間)で開かれている。「回帰・感謝・誠の花へ」をテーマに清澄で気品漂う作品約30点を展示している。
土橋さんは中学時代から書道部に入部して本格的に書を学び始めた。夏休みなどに祖父で書家の日比野五鳳(ごほう)さんの自宅(京都市内)に出かけ、1対1で厳しい指導を受けた。日比野さんは「よう、見なさい。書を見て、感じて、考えて、前に進む。知性と感覚のバランスが大切だ」と孫娘に教えたという。
土橋さんは医学部を志望していたが、高校2年のとき「書の道で生きていこう」と一大決心。古典や古筆を学んだ。
「書は、二度と同じものを書けない。精神性が伴う。思いつきでは駄目です。しっかり、鍛錬して自らの個性をゆっくり求めていく」と語る。
万葉集や近現代の詩歌などを題材に、清澄と気品を書の理念として研鑽(けんさん)を重ねた。昨年、作品「かつしかの里」が日本芸術院賞を受賞した。「たいへんなことです。喜びと責任の重さを同時に感じた」と振り返る。
今回の書展のテーマのひとつ「誠の花」は、室町時代の能の世阿弥(ぜあみ)の言葉だ。「年齢を重ね、人間性と芸術性、そして心を磨いて本当の花を咲かせる」との思いを込めたという。
受賞作品や、万葉集に歌われた市川・真間ゆかりの美女、手児奈(てこな)関連の作品などを展示している。
土橋さんは「心のシャッターを下ろさず、作品を見て、純粋に感じて、自由に楽しんでほしい」と来場を呼びかけている。
24日まで。一般300円。午前9時半~午後4時半。月曜休館。問い合わせは市川市芳澤ガーデンギャラリー(047・374・7687)。