市川市「ゲソ天そば」の密かな名店 市川駅「鈴家」

市川市

「ゲソ天そば」の密かな名店 “途中下車”してでも行きたい市川駅「鈴家」

 

JR市川駅南口には高層ビルが2棟ある。そのうちのザタワーズイーストの2階に、カウンター10席程度の小さな大衆そば屋「鈴家」がひっそりと営業している。『そんなところにあったっけ?』という人も多い目立たないお店だが、実は「鈴家」は大きな「ゲソ天」の店として有名なのである。

ほとんどのお客さんが「ゲソ天そば」目当て
「鈴家」は1977年、市川駅南口すぐで創業したが、その後の駅前再開発で3度引っ越して今の高層ビルに落ち着いた。駅改札から1分という立地。10月の第4週の水曜日の午前10時頃に伺うと、大将がいつものように笑顔で迎えてくれた。

「鈴家」ではお客さんのほとんどが「ゲソ天そば」(470円)を頼むという人気ぶりである。他には「ソーセージ天」(110円)、「かきあげ天」(100円)が人気だそうだ。

さっそく、「ゲソ天そば」を注文した。待つことしばし1分で着丼。まさにどんぶり一面にゲソ天が載って登場したわけである。そして、小切りにしたねぎもたっぷりと載っていて、淡い緑色がきれいで食欲をそそる。
「ゲソ天そば」は北海道旭川で人気化した
「ゲソ天そば」は、一説には北海道旭川の大衆そば屋で人気化したそうで、いまでも主にヤリイカを使った「ゲソ天丼」や「ゲソ天そば」が旭川では人気である。首都圏では、須田町や中延でおなじみの「 六文そば 」、日暮里の「一由そば」、小伝馬町「 田そば 」でも人気となっている。「一由そば」では主にムラサキイカを使い、解凍したイカゲソをブツ切りにして生のまま揚げてゲソ天を作っているが、「鈴家」ではいったん湯通ししてから、ゲソを切って揚げるスタイルで独自の調理法である。大将いわく「揚げて硬くならないようにする」工夫だそうだ。

そうは言っても、全部食べると結構あごが疲れるのは確かだ。それでもこのゲソ天の旨さの虜になって、途中下車して食べに来る人も多いという。
関西風で絶品のつゆ
「鈴家」のつゆは、鰹節、サバ節で出汁をとり、薄口醤油とザラメなどを合わせてつくった透き通った関西風のつゆである。「海(潮)のつゆ」などとマニアからは呼ばれている絶品のつゆ。ひと口飲むとふくよかな旨さが広がる。

そばは近隣の製麺所のゆで麺を使用しているが、コシもありなかなかバランスがよい。どんぶり一面の「ゲソ天」をかじりながら、そばを食べる醍醐味。大将と話をしながら食べていたら、あっという間になくなってしまった。

そこで、ゲソ天の次に人気だというソーセージ天をトッピングした「ソーセージ天+ナス天+冷やしそば」(530円)を追加で注文してみた。またまた1分で着丼だ。こちらもたっぷりのねぎに、海苔も載っている。

「ソーセージ天」と冷やしのつゆも格別
「ソーセージ天」は柳家喬太郎師匠の枕「コロッケそば」の中でおなじみの、「バルタン星人がウルトラマンに切られる方法」(横ではなく縦に切るという意味)で切って鞍掛けにして揚げたタイプである。揚げ具合が程よく、揚げ置きでも十分にうまい。そして、何よりも、冷やしのつゆの旨さといったら格別である。温かいつゆより、出汁のうま味がじわっと前面に出て来ており、まさに「海(潮)のつゆ」の真骨頂である。

2つの丼に残ったつゆを交互に飲んでその違いやつゆの余韻を味わっていると、年配のご夫婦が来店して、相談しながら「ゲソ天そば」を注文して食べ始めた。ご主人がかつてよく来店していて、そんな思い出の店を奥様に紹介したかったのだろう。大衆の良店ではよく見かけるほっこりする光景である。

NHKのニュースでも、昨年、イカの高騰が話題になり、「鈴家」もその中で取り上げられていたのだが、今年はさらに不漁でイカの値段は高止まりしたままで大変だそうだ。しかし、「鈴家」の大将は、この値段で、このままの味でがんばりたいという。再訪したい店である。