松戸市
葛飾区3度目の正直。南北走る貨物線転用、次世代路面電車実現に意欲の背景
昨年、東京都葛飾区は区内を南北に走る貨物専用線(通称:新金貨物線)に、旅客列車を走らせる計画を発表しました。新金貨物線は、葛飾区の金町駅と江戸川区の小岩駅を結ぶ約8.9キロメートルの路線です。葛飾区は、そのうちの区内の金町駅―新小岩駅間約7キロメートルをLRT(Light Rail Transit:次世代路面電車)に転換した上で、旅客・貨物線として併用することを目指しています。
かつて東京をはじめ全国各地で走っていた路面電車は、高度経済成長期に自動車が増えたことなどを理由に次々と廃止されました。一度は廃れてしまった路面電車に、再び光が当たり始めている背景はどういった理由があるのでしょうか?
新金貨物線の起点に想定されている金町駅は、葛飾区の交通の要衝地でもある
葛飾区の鉄道網、実は南北方向が脆弱
葛飾区は、人口約46万人を擁する東京のベッドタウンです。区内にはJR常磐線や総武線、京成本線・押上線・金町線などが走っています。一見すると、葛飾区は鉄道網が充実しているように見えます。しかし、これら鉄道網は東西に延びており、葛飾区の住民が千代田区や港区、台東区といったと都心部に通勤・通学するための手段として利用されているのが実態です。
一方、葛飾区内を南北に縦断する鉄道は、京成の金町線しかありません。これでは、区民が区役所や病院、区民センター・スポーツセンターといった公共施設を使うのに不便です。そうした脆弱な区内の南北鉄道網を補完しているのが、路線バスです。葛飾区内には都営バス・東武バス・京成バス・京成タウンバス・日立自動車・マイスカイバスの6社が路線バスを運行しています。
「葛飾区はバス事業者の数が多いので、区独自のコミュニティバスは運行していません。しかし、行政には区民の交通の便を充実させるとともに、交通空白地帯を解消しなければならない使命が課されています」と話すのは葛飾区都市整備部交通計画担当課の担当者です。
今年1月22日から3月31日までの約2か月間、葛飾区は民間バス事業者に試験的に新しいバス路線を運行してもらう“バス社会実験”を実施しました。
この社会実験では、JR常磐線の綾瀬駅・亀有駅から発着していたバス路線を延伸させる形で、2016年にオープンした水元総合スポーツセンターまでの新路線が設定されました。水元総合スポーツセンターは、駅から離れた場所にあります。そのため、区民にとって、アクセスしづらい環境にありましたが、バス路線の延伸で改善されたのです。
この実験結果を踏まえ、4月から綾瀬駅・亀有駅―水元総合スポーツセンター間のバス路線が正式に定期運行されることが決まりました。
公共バスによる対応の限界
葛飾区がバスの社会実験を実施して、新しい路線を設定するのは今回が初めてではありません。2014年にもバス社会実験を実施し、その結果を踏まえて金町駅と新小岩駅とを結ぶ“新金01系統”が誕生しています。
また、妊婦さんが健診等のため、病院に通いやすくしたり、買い物といった外出時の負担を軽減する“マタニティパス”の交付も昨年から始めています。
こうした区民の“足”に関する政策に力を入れている葛飾区ですが、輸送量の小さいバスでは需要を満たすことにも限界があります。区内の主要幹線道路は道路渋滞が激しく、バスの運行本数を増やせば道路の混雑はさらに深刻化する恐れもあるからです。また、近年はバスの運転手は慢性的な人手不足に陥っており、需要があってもバスを増便しにくい状況になっています。
そうした背景から、葛飾区は輸送量が大きく、道路渋滞も起こさないLRTの整備を検討することになったのです。
過去にも検討されてきた新金線の旅客転用
「区が新金線の旅客転用を検討したのは今回で3回目になります。1度目は1993年頃です。このときは、路面電車ではなく、普通の電車を走らせることを検討しました。当時の新金線は、まだ運行本数が多く、旅客化転用するために新金線の複線化が検討されました。新金線は単線ですが、複線化できる用地が確保されているのです。しかし、費用的に難しいことがわかり、断念しました」(同)
新金線の旅客化が再び浮上したのは、10年後の2003年前後です。この頃になると、新金線を走る貨物列車は少なくなり、事業費が少なくて済む単線での旅客転用が模索されました。
「新金線は金町駅を出ると南へとカーブします。そこで、国道6号線と平面交差しています。国道6号線は、一日平均で6万台が通行する幹線道路です。新金線に電車が頻繁に走ると、国道6号線が渋滞する恐れがありました。立体交差も検討されましたが、工事費は膨大になります。そうした事情から、2度目の検討でも新金線の旅客転用が見送られることになったのです」(同)
予想される高齢化の進行……その前に区民の足、公共交通整備を
それから約15年が経過。3度目は、新金線をLRTに転換した上で旅客化するという案が検討されています。2度目の旅客化を阻んだ国道6号線は、相変わらず交通量が多く、立体交差化もされていません。つまり、状況は15年前とそれほど変わっていません。なぜ、3度目の検討が進められているのでしょうか?
「もっとも大きな理由は、高齢化です。今後、自動車を運転できなくなる区民が増えることは確実ですから、そのために区民の足となる公共交通を整備しなければならないと考えています」(同)
バスや路面電車のほか、葛飾区内には地下鉄の整備計画も浮上しています。東京メトロ有楽町線豊洲駅から分岐して、東陽町駅・住吉駅・押上駅を経由して亀有駅に至るルート、そして現在は墨田区の押上駅止まりになっている半蔵門線を北へと延伸させて金町駅へと至るルートです。この2本の地下鉄計画は、江東区・墨田区・千葉県松戸市と連携して取り組んでいます。
さらに、環状7号線に沿って足立区・葛飾区・江戸川区を結ぶメトロセブンという鉄道も計画されています。これら地下鉄計画は、ほかの自治体とも連携して取り組んでいる事業です。そのため、葛飾区単独でプロジェクトは動かせません。また、地下鉄は計画段階で着工はしていません。
葛飾区の調査は始まったばかりです。新金線の旅客転用もクリアしなければならない課題は多く残っています。LRTによる旅客転用を進めるため、葛飾区は予算に2017年度は2000万円、2018年度は3100万円を計上。実現に意欲的です。
葛飾区のほかにも路面電車による公共交通網の整備・充実を検討している自治体が、都内には複数あります。それだけに、葛飾区の動向が注目されています。
本日、松戸市六実自宅より依頼を受け、お伺い、車椅子にて
松戸市栗ヶ沢旭神経内科リハビリテーションに
通院治療をされ戻りました。