欧州ではしかが流行、WHOが警告 ワクチン接種を呼びかけ

欧州ではしかが流行、WHOが警告 ワクチン接種を呼びかけ

 

世界保健機関(WHO)は20日、欧州ではしかが流行しているとの報告書を発表した。今年1~6月に4万1000人以上が感染し、37人が死亡している。

昨年の感染件数は2万3927件、2016年は5273件だった。WHOは欧州各国に対策を呼びかけている。

専門家は、ワクチンを接種しない人が増えていることが流行の原因だと非難している。

英イングランドでは、今年に入って807件が報告された。

イングランド保健局(PHE)は、イングランドでの流行は、欧州大陸ですでにはしかが流行している地域に旅行した人が持ち込んだものだと説明している。

はしかは感染力が高く、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染によって広まる。

症状は7~10日程度で治まり、ほとんどの人が完治するが、中には脳炎や髄膜炎、熱性けいれん、肺炎、肝炎といった深刻な症状に発展することもある。

はしかは新三種混合(MMR)ワクチンで防ぐことができる。

しかし、誤ってMMRワクチンと自閉症の関係性を示した論文によってワクチンを信用しない人が出てきた。この論文は20年前に発表されたが、現在は信頼性を失っている。

英国の国民保健制度(NHS)は、全ての子どもに満1歳の誕生日ごろと就学直前にMMRワクチンを受けさせるよう指導している。

欧州ではウクライナとセルビアで特に感染が広がっている。

WHOのネドレット・エミロル博士は、「この部分的なはしかの再流行は、免疫のない人はどこに住んでいてもはしかにかかりやすいことを示しており、全ての国がワクチン接種率の向上を推進し続けなくてはならない」と話した。

イタリア上院は先に、就学前の子どものワクチン接種を義務付ける法律を破棄する改正法案を可決したばかり。これにより、子どもにワクチンを受けさせなかった親には罰金が課されなくなった。

PHEによると、イングランドではこれまでに807件の感染が確認されている。感染者の多い地域はロンドン(281人)、サウス・イースト(166人)、サウス・ウェスト(139人)、ウェスト・ミッドランズ(84人)、ヨークシャーおよびハンバーサイド(75人)となっている。

PHEの免疫部門を統括するメアリー・ラムゼイ博士は、「イングランドで多くのはしかの流行事例が出ているが、これは欧州でのはしかの大流行と結び付けられる」と話した。

「感染者の大多数は、幼少期にMMRワクチンを接種しなかった10代の未成年や若者。過去にMMRワクチンを受けていなかったり2回接種したか不安な人は、かかりつけの医師に相談してワクチンを受けるべきだ」

「はしかが流行っている国やフェスティバルなど人が集まる場所に行く人、あるいは大学が始まる前に、MMRワクチンの摂取履歴を最新の状態にしておくことを推奨する」

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のポーリーン・パターソン博士は、「ワクチンで予防できる病気なので、感染例は1件たりともあるべきでないが、今年のはしかの流行には驚かされている」と話した。

はしかの症状:

・鼻水やくしゃみなど、風邪に似た症状
・高熱、だるさ、食欲不振、筋肉痛など、体が感染と戦っている兆候
・眼の充血、目やにや涙の発生(結膜炎)
・口内に灰色の斑点ができる
・発症から2~4日で赤く盛り上がった発疹がうなじの辺りに出はじめ、頭や首、体全体に広がっていく