浦安市 世界初のロボットホテル「変なホテル」がビジネスユースに進出
・ロボットの導入で人件費削減と集客に成功
・ビジネス需要に応えるロボットホテルも開業
・最新技術を活用して、ストレスゼロの一夜を提供
ロボットはホテル業界の救世主
フロントのカウンターの向こう側にいるのは、にこやかな笑みを浮かべた女性従業員。と思いきや、実は精巧に作られたロボットだった。ここは2018年4月にオープンしたばかりの「変なホテル東京 浜松町」のエントランスである。
恐竜ロボットが出迎えることで知られる「変なホテル」。ロボットがスタッフとして働く世界初のホテルとして、ギネスブックにも登録されている。H.I.S.ホテルホールディングスが日本国内で9軒を運営し、さらに2018年内には3軒がオープン準備中だ。立地によってロボットの種類が変わり、「変なホテル舞浜 東京ベイ」(千葉県浦安市)のフロントでは、知能が高い恐竜として知られるヴェロキラプトルが業務を担当する。あいさつのお辞儀をしたり、時にはくしゃみをしたりするさまは、なんとも不思議でかわいらしい。
「舞浜のお客さまのほとんどはディズニーランドを利用される方です。テーマパークに行く前や帰ってきた後に、無機質なホテルで過ごすのでは、せっかくの楽しい雰囲気が台無しになってしまう。そこで恐竜ロボットを登場させ、水槽では古代魚ロボットを泳がせました。最初は驚いて泣きだすお子さんもいますが、すぐに笑顔になって一緒に写真を撮っていますよ」(エイチ・アイ・エス経営企画本部広報室主幹の三浦達樹さん)
変なホテルが誕生したのは2015年、テーマパークのハウステンボス(長崎県佐世保市)にあったホテルを大幅にリニューアルしたのが始まりだ。元々は40人ほどのスタッフが働いていたが、ロボットを増やすことで、144部屋のホテルを7人で運営できるようになったという。
「最初は、人件費を抑える目的でロボットを導入しました。それが、ロボット自体が価値となり、エンターテインメント性が加わって話題を呼んだのです。変なホテルは三つ星から三つ星半クラスのホテル。期待値がさほど高くないので、ロボットのパフォーマンスが付加価値を生むのでしょう」(三浦さん)
ロボットの活用によって、少ない人員で効率的にホテルを運営でき、さらにはエンターテインメント性も高まる。人手不足が深刻な日本のホテル業界にあって、一つの理想形といえるだろう。1期棟がオープンした時には6種類、82体だったロボットも、ホテルの数が増えるにしたがって開発が進み、今や30種類、300体近くにまで増えたという。
ロボットの利点はビジネスユースでも生かされる
進化を続ける変なホテルは、2017年末からビジネス需要を狙ったホテルを開業。その一つが、東京駅にも羽田空港にも行きやすい「変なホテル東京 浜松町」である。外観はビジネスホテル。看板がなければ、ロボットが働くホテルだとは誰も気付かないだろう。
チェックインを担当しているのは、おそろいの制服姿をした男女2体のロボット。「ようこそ」とあいさつされた後、アナウンスにしたがって宿泊客が名前を告げ、タッチパネルで電話番号を入力する。海外からの客はパスポートを機械にかざし、最後に署名をすれば手続きは完了。横の精算機でクレジットカードか現金で支払いをすると、部屋番号が記載されたレシートとルームキーが発行される。
言語は日本語の他、英語、韓国語、中国語(簡体/繁体)に対応しているので訪日観光客にも利用しやすい。当然、フロントの奥にはスタッフが待機しているので、困ったことがあった場合は対応してくれる。
「人と話すのは、相手がホテルの従業員であっても意外とパワーを使うものなのです。商談や打ち合わせで疲れているビジネスマンにとっては、なおさらわずらわしいことだと思います。そこで、ビジネス需要にもロボットの特性が生かせると考えました。変なホテルでは、人と一切会話することがなく、チェックインからチェックアウトまで過ごすことが可能なのです」(三浦さん)
ホテルで働くロボットは彼らばかりではない。男女の人型ロボットの隣で愛らしい姿を見せているのは「unibo(ユニボ)」。簡単な会話ができるだけでなく、周辺の飲食店やスーパー、コンビニの場所など、ちょっとした調べ物に手を貸してくれるコンシェルジュロボットだ。
操作も簡単なLG Stylerで洋服をリフレッシュ
エンターテインメント性は舞浜やハウステンボスに比べて乏しいが、「健康・快眠」と「近未来」をコンセプトに、ビジネスユースに応える工夫が部屋の随所に施されている。その代表格が全室に備えられた話題の家電、衣服のリフレッシュ機「LG Styler」だ。スーツなどをハンガーに掛けてボタンを押せば、高温スチームと振動で、においやほこり、花粉を除去し、シワ伸ばしまでしてくれる。ビジネスパーソンだけでなく、観光客にとっても「あったらうれしい」機能だろう。
国内だけでなく海外にも無料で電話がかけられ、テレビやエアコンのリモコンになるスマートフォン「handy」も全室に導入。さらに、スマホをかざすだけで周辺の観光情報を取り込んだり、ゲームをしたりすることができる「スマートプレート」も用意されている。
「変なホテルの“変”はおかしなという意味ではなく、変化の“変”に由来しているんですよ」と三浦さん。最新技術を駆使し、変化と進化を続ける「変なホテル」が次にどんな未来を見せてくれるのか楽しみだ。