船橋市   第60次南極観測隊

船橋市

【南極観測隊員に聞く】(上)多目的アンテナ担当・内海雄介さん 船橋市

 

■実感したい極地の寒さ

第60次南極観測隊(堤雅基隊長)の越冬隊員に決まった船橋市の内海雄介さん(30)が、今秋の出発に向けて準備に追われている。担当は「多目的アンテナ」。地球観測衛星から送られてくるデータの受信や、機械のメンテナンスが主な仕事だ。「自分の担当だけでなく、専門外の業務も学びたい。力を合わせ、隊員みんなが『成功』といえるようにしたい」と張り切っている。

普段は、通信インフラを手掛けるNECネッツエスアイに務めるサラリーマン。大学は工学部で学び、就職先を考える中で同社が南極観測隊に社員を派遣し続けていることを知り「いつかは南極へ」との思いを抱き、平成23年4月に入社した。

観測隊希望者の社内公募があったのは、3年前の3月。58~60次隊までの越冬隊員3人を一度に選考した。「採用されるのは30代半ばが多く競争率も高い。自分は若いので、駄目でもともとという気持ちで応募した」が見事、60次隊員に合格。約2年前にアンテナ関連の部署に異動し、南極で必要な技術や知識の習得に努めてきた。

多目的アンテナは直径11メートルで、昭和基地にあるアンテナでは最大。暴風雪を避けるため「レドーム」と呼ばれる球状の施設内にあり、衛星からのデータ受信などを担ってきた。

ただ、設置から30年が経過し、衛星の性能が向上して日本でも受信が可能になるなどして出番は徐々に減り、現在はVLBI(超長基線電波干渉法)観測に使われている。天体が放つ微弱電波を地球上の複数のアンテナで受信し、数千キロ離れたアンテナ間の距離をミリ単位の精度で測る作業で、48時間連続で行われることもあるという。

「古いだけに、どこが壊れてもおかしくない状態。アンテナ、モーター、電源など、あらゆる箇所のトラブルを想定しないといけない」と気を引き締める。多目的アンテナは、あと数年での解体が決まっている。そのため「取り壊す手順や必要な重機、工具などの現状を把握し、リストアップする」のも重要な仕事だ。

業務以外では、極地の厳しい寒さを実感したいという。「シャボン玉や干したシャツは本当に凍るのかなど、南極では当たり前のことを試したい。氷河も見てみたい」と目を輝かせる。

帰国は再来年の3月。1年4カ月に及ぶ南極出張で、気がかりなのは家族だ。7月に長男が生まれたばかりだけに「日々の成長を見られないのが残念…」と、少し表情を曇らせた。

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第60次南極観測隊が11月下旬、日本を出発する。オーストラリアで南極観測船「しらせ」に乗り込んで昭和基地に向かう予定で、メンバーは出発に向けた準備に追われている。本県から参加する3人に派遣への意気込みなどを聞いた。