船橋市 「いい夫婦」夢に投資 古里で「第2幕」
長崎市出身の市瀬和広さん(60)、日登美(ひとみ)さん(57)夫妻が今年1月、関東から古里にUターンし、長崎市若草町で自分たちの店をオープンさせた。2階建て物件を借り、1階では日登美さんがハンドメイド雑貨店を、2階では和広さんが趣味で集めたバスケットボールグッズなどを展示販売する店を営む。和広さんを襲った突然の病、長年働いた勤務先の退職-。開店までは波乱の道のりだったが、「2人の関係はいい意味で何十年も変わってない」とほほ笑む。11月22日は「いい夫婦の日」。
城栄商店街を小江原方面に進むと、カラフルな建物が見えてくる。1階が日登美さんの「ORANGE★MARBLE(オレンジマーブル)」、2階が和広さんの「himitsuKICHI(ひみつきち)」だ。
約40年前、共通の知人を通じて知り合い、1981年に結婚した2人。2人の子宝にも恵まれた。結婚から約10年後、家族そろって長崎市内から関東地方に転勤。その後は、和広さんが北陸や関東に単身赴任をする生活が続いた。
2014年夏、和広さんを突然の病魔が襲う。職場の会議中に体のしびれが止まらなくなった。自律神経の病気だった。頭痛、しびれ、動悸(どうき)、めまい。業務にも支障が出るようになり、「周囲に迷惑を掛けたくない」と、16年3月、38年間勤めた職場を早期退職することを決めた。
療養を兼ね、日登美さんと千葉県船橋市の自宅で久しぶりに一緒の時間を過ごすようになった和広さん。そんなある日、趣味で始めた洋裁を生き生きと楽しむ妻の姿にうれしくなった和広さんは、こう提案した。「ママ、お店やってみない?」
日登美さんには長年、「自分の店を開きたい」という夢があった。しかし、金銭的なことなどから、なかなか言い出せずにいたという。そんな中での和広さんの一言。元々、夫婦にあった「2人が生まれ育った場所に戻りたい」という思いも重なり、夫婦はUターンし、店を持つことを決断した。開業資金には和広さんの退職金や貯蓄のほとんどを充てた。店は経営的にはまだ赤字だが、「2人の夢に投資しました」(和広さん)と後悔はしていない。
開店までの日々の中で、2人はお互いの存在の大きさを再認識した。「病気で少し不安になった時も、動じない姿に助けられた。(妻の存在が)一番の特効薬だったかな」と和広さん。日登美さんも「いろいろあったけど、2人の関係はいい意味で何十年も変わってない。パパと一緒に、死ぬまで楽しい自信があります」。夫婦の人生の「第2幕」は始まったばかりだ。