北朝鮮は日本からの借金「約86億円」を踏み倒し中

北朝鮮は日本からの借金「約86億円」を踏み倒し中――数百回の督促状を完全無視

“取り立て”も実施中だが……

北朝鮮が日本から借金した約56億円と、その利子である約30億円が、実質的に全く返済されていないのを、ご存じだろうか。
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話は1995年に遡る。北朝鮮の食糧危機が深刻化し、当時の村山富市内閣がコメ支援を閣議決定。すったもんだの交渉を経て、何とか日朝間で契約書に署名、無償15万トンと有償35万トンのコメを送った。このうち有償分が約56億円というわけだ。
では当時、どんな返済計画を結んだのか、農林水産省の政策統括官に訊いた。
「約56億円を30年で償還することを約しました。最初の10年間は元本据え置きで利子だけ、11年目からは元本と利子の支払いで完済となります。現在の利率は3%です」
当時の報道などを見ると、最初の10年間は年利2%、11年目から3%という利率だったようだ。世は移り変わってマイナス金利の時代となり、利率の評価は難しくなった。とはいえ、借りたものは返してもらわないと困る。にもかかわらず北朝鮮が返済したのは、翌96年の約8400万円分のみ。おまけに1500円足りなかったというから、デタラメ極まりない。
「それ以降、現在まで支払は一度も行われていません。督促の内容については公表していませんが、きちんと行っております。そのため、時効を迎えるようなことはありません」(同・農林水産省政策統括官)

 

督促状の内容
ちなみに督促の詳しい内容は、「週刊新潮」(05年7月21日号)が「『督促100回』でも北朝鮮が踏み倒している『有償コメ支援』12億円」で紹介している。
《〈朝鮮国際貿易促進委員会書記長殿
平成7年、当時の食糧庁と契約したものの内、請求した利息を頂戴していない。早急に払って頂くようお願いいたします〉
そういった内容が記されたA4の紙1枚の文書は、農水省が北朝鮮の政府機関に送りつけた督促状だ。農水省は同様の文書を平成9年から送り続け、この7月15日でちょうど100通目になるのだという》
《北朝鮮からは、いまだに支払はおろか返事もない。“踏み倒し”が日常茶飯事の北朝鮮とはいえ、何でこんな事がまかり通っているのか》
当時でも利子が12億円に膨らんでいた。ならば現在は、どのぐらいの額になっているのか、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏に計算してもらった。
「最初の10年間は、元本56億円に対して利子は2%ですから、年1億1200万円になります。20年目からは利子3%ですから年1億6800万円。これを元に2017年まで足していくと、利子は31億3600万円です。うち約8400万円が返済されているそうですから、差し引き約30億5200万円。元本の56億円を足すと約86億円以上が焦げ付いている計算になります。返済が遅れれば、普通の契約なら延滞利息が発生します。もし日朝間で延滞利息について取り決めを結んでいたとしたら、利子は更に膨れ上がります」

 

安倍首相に求められる解決
参議院の農林水産委員会調査室は2013年、「食糧支援のために売り渡したコメの代金債権の免除」とのレポートを発表している。これは現在でもインターネット上で閲覧することが可能だ。
そもそも日本は79年から83年にかけ、マダガスカルなどのアフリカ5か国に有償コメ支援を実施したものの、こちらも不良債権化。99年のケルン・サミットで重債務貧困国の債務免除が決定したことを受け、国会に「コメ債権免除法案」が提出された。その背景や経緯を解説したのが、このレポートというわけだ。文中に次のような一節がある。
《今般債権免除となるアフリカ5か国、返済済みの3か国、計画どおりに返済中の5か国を除くと、初回だけ返済された後、支払いが遅延している北朝鮮の米穀債権(25年度末の債権総額約77億円[※編集部註:55.3億円で計算])のみが残る。このため、今後の北朝鮮への対応が問われた。
これに対し、政府は、「北朝鮮に対し引き続き債務返済の督促を行うとともに、外務省とも定期的に情報交換を行うなど適切に対応していく」旨答弁した。
しかし、慢性的な食糧不足、外貨不足に陥っていると報道されている北朝鮮の経済状況が好転しない限り、将来的にこれまでと同様に債権が履行されない可能性が高いため、関係省庁間で調整を進めつつ、様々な対応策を想定して準備しておくべきと考える》
あくまでも立法府たる参議院、その調査室が作成した文書だが、やはり行政=政府の諦めムードも伝わってくる印象だ。
国家予算に比べれば、70億や80億は確かに端金だろう。しかし、かけがえのない「日本人」を奪われた拉致問題と同じ状況であることは論を俟たない。安倍首相を頂点とする政府が真に有効な“圧力”をかけ、少しでも解決の糸口を見つけられるのか、有権者の継続的で冷静な監視が求められている。