習志野市【ソフトボール】全勝で決勝T進出の日本

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【ソフトボール】全勝で決勝T進出の日本、光る上野の力「監督が使える選手であることが第一」

 

ピンチで好救援、プエルトリコ戦へ「チャレンジャーの気持ちで」
世界女子ソフトボール選手権予選最終日が9日に行われ、日本は習志野市の第一カッター球場でオーストラリアに8-1でコールド勝ち。初回先制3ランの4番・山本優(ビッグカメラ高崎)、そして、3回押し出しで1点を失った藤田倭(太陽誘電)を救援した上野由岐子(ビッグカメラ高崎)と、投打にベテランの力が光った。

勝敗で並べば、直接対決の結果が優先される予選リーグ。日本は1位通過の可能性を残していた1敗のオーストラリアを実力で退けた。

まずは初回1死一、二塁、山本が左翼へ先制の3ランで弾みをつけた。今大会4本目。打率.400で10打点目と打線の牽引者になっている。

そして、「投」ではやはり上野。3回まで2併殺を含む2安打に抑えていた藤田倭(太陽誘電)が4-0の4回に突如制球を乱した。3四死球で押し出し。1点を失い、なお2死満塁でマウンドに上がった上野は「流れはよくない場面だったが、(1番の)ポーターには回したくなかった。(9番打者で)絶対に抑えたかった」と見逃し三振でピンチを切り抜けると、5、6回も3人ずつで打ち取り、コールド勝ちに結びつけた。

7戦全勝で4年ぶりの世界一へ。10日から始まる決勝トーナメント。日本はプエルトリコ、アメリカはオーストラリアを破ると、11日に全勝同士で最大のライバルと初対決する。台風接近で8日の試合が流れ、1日空く予定が連戦になったものの、上野は「空いてはほしかったが、想定はしていた。左右されることはない。チャレンジャーの気持ちで。(あの場面のリリーフは)監督が使いたい時に、使える選手であることが第一条件」と頼もしかった。

 

◇気を吐くベテラン河野
第16回世界女子ソフトボール選手権は9日、千葉県習志野市の第一カッター球場で日本(世界ランク2位)がオーストラリア(同4位)を8-1の六回コールドで下し、7戦全勝のB組1位で10日からの決勝トーナメントへ進んだ。大会が進むにつれ、主軸とベテランがさすがの働きを見せる日本。中堅・若手の野手が決勝トーナメントでどれだけ得点に絡めるかが、優勝へのカギを握る。

この日は当初、大会の休養日だったが、前日の試合が台風の影響で中止。強い風雨の中、午後7時に予定されていた日本戦の試合中止が決まったのは、何と6時すぎだった。
選手たちは悪天候でも常に試合が行われるつもりで準備する。「やるぞという気持ちでいっぱい待って、そこから中止。でもみんなに気持ちのブレがなくて、すごいチームだなと思いました」。そう話すのは上野由岐子(ビックカメラ高崎)、山田恵里(日立)に次ぐ年長、33歳の河野美里(ビックカメラ高崎)だ。
その河野がコールド勝ちを決めた。六回裏二死2、3塁。外角球が続いた後、内角寄りの変化球をたたく。一、二塁間を鋭いライナーで抜き、2者を迎え入れる二塁打。「外攻めかと思ったけど、ずっと続けてくるとは思わなかったので。チェンジアップかな…(重心を)後ろに残して打てたのが一番良かった」と安堵(あんど)の笑みが漏れた。
河野といえばヘッドスライディング。三拍子そろったベテランは7日、雨中のカナダ戦に9番で先発した。足場が悪く、野手が守りにくい中で隙を突いて次の塁を奪うよう、宇津木麗華監督に足を期待されてのこと。2安打2盗塁、相手のバッテリーミスでもすかさず進塁し、起用に応えた。
与えられた出番を生かし、今大会11打数5安打5打点。「自分が打つより若手が打つ方が評価されるかもしれないけど、私は私で小さいことを積み重ねていきたい」と泣かせることを言う。

◇山本、山田、藤田で10発
藤田倭(太陽誘電)が制球に苦しみ、上野の救援を仰いだ投手陣を、序盤と中盤に助けたのは頼れる主砲たちだった。
一回に4番山本優(ビックカメラ高崎)が4号3ラン。これで3本が、立ち上がりに主導権を握る一回の本塁打だ。まだ相手投手の球筋もよく分からないうちの一発。一回に強い理由を聞かれても「さあ…あんまり考えたことないです」と笑って返すとぼけた表情に、肝の据わった強さがのぞく。
宇津木監督は山本の長打力の秘密を「日本人離れした下半身」という。6日のベネズエラ戦では内角球をバットが体に巻き付くような体の回転で、この日は外角の変化球に「崩されながらよく運べた」と、腰の粘りと速いスイングで左越えにライナーで運んだ。
三回には山田が右中間へ低い弾道の3号ソロ。カナダ戦で無安打2三振に終わり、構えで頭の位置にあったバットを下げた。「その時々の感じなので、上げる時もあるし」。どんな打者も、常にフィーリングや相手投手との関係などで修正や試行錯誤をしながら、調子の維持に努める。
それが奏功した結果だが、勝負の厳しさを知る主将は「でもカナダ戦の試合中に修正できなかったのが反省点。決勝トーナメントでは、1球で修正できないと終わってしまう」と続けた。
そして四回裏には藤田が中越えに3号2ラン。マウンドで上野の助けを借りた直後だった。投手としての不調を取り返し、上野を援護する一発。「二刀流」だからできることだった。ホームインした後、宇津木監督が藤田の頭をなで、肩を抱いた。

◇複雑で厳しい試合方式
決勝トーナメントはまずA組2位のプエルトリコ戦。勝てば米国-オーストラリアの勝者と対戦し、勝つと決勝へ進める。ページシステムという敗者復活を含む独特のトーナメント方式で、日本はプエルトリコに負けても、その次の試合で負けてもまだ決勝へ進むチャンスがあるが、それだけ試合数が増えて不利になる。
負けずに決勝へ進んでも、敗者復活で勝ち上がって来るとみられる米国とまた戦う可能性が高く、優勝までの道のりは互いに厳しい。
日本打線は15本塁打のうち山本、山田、藤田で10本。121塁打のうち55塁打、52打点のうち21打点をこの3人で挙げており、徐々に依存度が高まってきた。大会序盤に好スタートを切った市口侑果(ビックカメラ高崎)、渥美万奈(トヨタ自動車)、長崎望未(同)らは、対戦相手のレベルが上がってきたこの2、3試合は快音が出ていない。
山田は「もっと投手陣を楽にできた試合もあるので、全体の出来は7割ぐらいですかね」という。山本は「強い相手からはチャンスはそんなにつくれない。今までは自分がチャンスで打つことを考えていたけど、自分もチャンスをつくらないと。日本はどこからでも得点できる力はあるので」と、戦い方が変わることを見通す。優勝には中堅・若手打者の働きが欠かせない。
山本の前後を打つ打者では、カギを握るのが13打数2安打と苦しむ洲鎌夏子(豊田自動織機)だ。大会前から「頭と体がいま一つ一致しない」と首をひねっていたが、格下チーム相手の大会序盤に四球が多く、バットを振る場面が少なかったせいもあるかもしれない。宇津木監督は気楽に打たせようと5番から打順を下げるなどして爆発を待っている。この日の第3打席は、タイミングが合ってきたようにも見えた。
投手陣は浜村ゆかり(ビックカメラ高崎)が体調不安でまだ投げていない。宇津木監督は上野、藤田で勝負と腹をくくっているが、打線がリードを広げ、18歳の勝股美咲(ビックカメラ高崎)に経験を積ませる機会があれば理想だろう。
山田はまずプエルトリコ戦をにらみ「打者は一発があるし、投手は横の変化がすごくいい。打者がしっかり打ち崩していかに点を取るか」という。宇津木監督は「洲鎌はこれも試練。使いながら調整してもらいたいと思っている。チームというのは誰かが3割を打てば誰かが1割。お互いにカバーし合いながら戦っていくもの。みんな一生懸命やっている」と、選手への信頼を口にした。(時事ドットコム編集部)