千葉市  日本パラ陸連会長・増田明美さんに聞く

千葉市   【聖火の宿題】日本パラ陸連会長・増田明美さんに聞く

 

2年後に迫る五輪・パラリンピックに千葉はどう向き合うか。マラソン選手としてロス五輪に出場、引退後は海外の五輪・パラの現地取材を重ねる、日本パラ陸上競技連盟会長の増田明美さん(54)=いすみ市出身=に聞いた。

-五輪・パラ8競技の舞台。キャンプ地も多い。

「1896年の第1回五輪から採用のフェンシング、レスリングに、新しいテコンドー、サーフィンとバランスもいい。サーフィンなんて若者が千葉に来るチャンス。ボランティアで支える、見る、出場する、どんな関わり方でも五輪・パラからもらうエネルギーはすごい。肌で触れてほしい。観光担当の人はスポーツツーリズムで千葉に来たいと思う外国人を増やす。食のPRや交通整備でもそれぞれ頑張るのがいい」

「2年後に向かう過程でも千葉は効果が出ている。千葉市で5月に見た車いすラグビーの大会は驚くほど観客が多い。千葉市はパラ教育が活発。小中学校でパラ選手から授業を受けた子どもが親を連れてくる。応援が選手のためになり、子どもは共生社会や多様性を身に染みて感じられる」

「パラ選手は困難を乗り越え競技に出合っている。だから語ってくれると分かりやすいみたい。子どもたちも困難や悩みがあるから。このお兄ちゃん、お姉ちゃんにこんなことが。でもメダルを取ったんだと」

-2012年ロンドンパラリンピックが先進例か。

「ロンドン・パラの取材で一番感動したのは『ゲットセット』という教育プログラム。どの会場も子どもたちが前で応援し『何々選手格好いい』『きょうは何秒ぐらい出しそう』と、すごく詳しい。あらかじめパラ選手がそのスポーツを教えに来て、自分の人生も伝え、予習した子どもが来ている。チケットはどこで賄っているかと聞くと、寄付つき券を買う人がいて良い循環ができている」

「これを千葉の会議でも紹介した。重要性を指摘した人は他にもたくさんいたはず。今のパラ教育で同じようなことがされている」

-学校や子ども向けの低価格券も検討されている。

「特にパラリンピックは本当にたくさんの子に見てほしい。寄付があれば無料にすればいい。そういう文化もレガシー(遺産)で残ったら。千葉が先駆けてもいい。独自性を出して」

-猛暑などへの対策は。

「予行演習を重ねた方がいい。先日、東京五輪女子マラソン2年前の日に東京でコースを確認した。朝7時のスタートから『暑いね』と言いながら。ただ、序盤は高いビルが日陰をつくっていた。道幅や街路樹も見ておくと対策できる。千葉も、例えばサーフィン会場で期間中の気温や日陰を調べられるので、対策にベストを尽くしていい。それがアスリートファースト(選手本位)であり、観客も大事にした取り組み」

-大会組織委員会が具体的に示せていない点も。

「地元が五輪・パラに乗っていくためにも準備が必要。もう少し指示が早ければいいという感じはする」

-選手にとって良い五輪・パラリンピックとは。

「スタートまでストレスがなく、時間に正確であること。日本はその点はクリアできるはず。応援は多い方がいい。アクアラインマラソンでも地元の女性たちのフラダンスが人気で、高校生も書道披露や吹奏楽で盛り上げている。観客が応援に頑張ることはアスリートファーストだし、発表の場もつくれて一石二鳥」

-観戦を楽しむコツは。

「興味ある選手がいたら、その選手のことをよく知る。選手である前に人だから。なので私は取材をして(紹介用の)“小ネタ”も集める。五輪は自然に盛り上がるからパラを盛り上げたい。パラ陸連会長職も応援団長で引き受けた」
「体験も重要。パラ陸上車いすの800メートルや1500メートルはF1レースに近いが、私が挑戦したら時速10キロが精いっぱい。選手がいかにすごいか。千葉ではそれを目の当たりにする機会がある」
◇ますだ・あけみ 旧岬町(現いすみ市)生まれ。成田高校在学中から女子陸上長距離界を席巻し、1984年の米ロス五輪マラソンでは無念の途中棄権も、13年間の現役中に当時の日本・世界最高記録を次々更新。引退後はスポーツジャーナリスト、競技解説者として活躍する。大阪芸大教授。6月、日本パラ陸上競技連盟の会長に就任。県の五輪・パラ推進会議委員も務める。千葉日報にコラム「おしゃべり散歩道」を連載中。