千葉市【千葉刑務所から】(上)再犯防止へ情報発信

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【“塀の中”の日常 千葉刑務所から】(上)再犯防止へ情報発信 厳しい管理、私語厳禁 態度良ければ“個室”

刑務所から出所する受刑者が再び犯罪に関わらない社会を目指す「再犯防止推進法」が、2016年に施行。同法に基づき数値目標を定めた「再犯防止推進計画」は本年度からスタートした。法務省などは計画の実現には地域住民の協力が必要とし、「情報発信」に力を入れ始めた。10年以上の長期刑受刑者を対象とする「千葉刑務所」(千葉市若葉区、西見卓明所長)も「出所する受刑者の再犯防止には地域住民の理解が必要」と捉え、報道機関を受け入れて施設を公開。独居房や厳しい管理下にある作業工場…。“塀の中”の知られざる日常を取材した。

◆重厚な庁舎

千葉市中心街からほど近い千葉刑務所。取材の手続きを済ませて赤れんがの正門をくぐると、同じく赤れんが造りながら、さらに重厚な雰囲気の庁舎が待ち構える。

同所に収容された受刑者は、厳しい管理下で生活する。刑務作業中はもちろん、入浴中や就寝時間以降の私語は禁じられ、違反すれば懲罰を受けることも。施設内の移動の際は必ず刑務官が同伴する。

原則平日は午前6時半に起床し、1日3回の食事と約30分間の運動、夜約4時間の余暇活動以外はすべて作業時間。作業は受刑者の適性などを踏まえ、「木工」「革工」「金属」などの各部門に振り分ける。

無期懲役など長期刑が多い同所では、長く同一の作業にあたる受刑者が多い。職人技に達するケースもあり、山車や神輿(みこし)、靴などの製作は高い完成度を誇る。担当者は「顧客から指名され、製作する受刑者もいるほど」という。

3畳ほどの単独室。奥には洋式トイレや掃除用具が並ぶ
◆厚い扉の先に

緊張しながら足を踏み入れた刑務所。受刑者の収容エリアは、厚い扉で仕切られている。約11万3千平方メートルの広大な敷地には10月現在、殺人や強盗致死などの重罪を犯した約630人が収容されている。

収容エリアには、通路を挟んで両側に番号が刻まれた部屋が並ぶ。約3畳の単独室(独居房)と約10畳の共同室、合わせて約630室。“大部屋”の共同室は6人程度まで収容でき、ほぼすべての受刑者が入所後に過ごすことになる。生活態度が良ければ独居房に格上げされ、「一人の空間」が与えられる。

わずかだが、読書やテレビ視聴など自由な時間も。受刑者自ら購入した新聞や雑誌、衣類など大型スーツケース1個分(95リットル以内)の私物が持ち込める。テレビは夕食後から就寝までの間、地上波全チャンネルの視聴が可能。担当者は「祝日など特別な日には、映画を見せることもある」という。

◆「帰る場所」確保へ

法務省や刑務所が情報発信に力を入れ始めた背景に、再犯者率の上昇がある。国などの調査によると、17年の刑法犯の認知件数は約91万5千件と戦後最少を記録。一方で、検挙者に占める再犯者の割合は、統計を始めた1972年以降、2016年に最も高い48・7%となった。

なぜ、再び罪を犯すのか。担当者は「出所後の生活に課題がある」と指摘する。「仮釈放の場合、過去に犯した罪について不安を抱く地域住民が多く、地域で孤立してしまうと再犯につながる可能性が高い。再犯防止には地域住民の理解が重要」

出所間近の受刑者には、民間の協力者らを招き、健康面から就労、運動、コミュニケーション能力の養成まで支援。「出所後」を見据えた社会復帰への“ソフトランディング”を目指す。

「無期受刑者は満期がなく、一生保護観察を受け続ける。地域の理解を得ながら、民間と連携して帰る場所の確保へ取り組みたい」。出所する受刑者が再び犯罪に手を染めないよう、担当者は強く願う。

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千葉刑務所が力を入れ始めた「“塀の中”の日常」を伝える活動。受刑者の再犯防止につながるか。受刑者の生活と共に、同所が直面する課題を取り上げる。