広域豪雨、被害を増幅 特別警報最大9府県に
数十年に一度の大雨が西日本一帯を襲った。6日から7日にかけ気象庁が出した大雨の特別警報は福岡、広島、岐阜など最大9府県に及び、同時期に浸水や土砂崩れなどが多発。道路陥没や家屋倒壊など被害が広い範囲にわたる異例の「広域災害」の様相を呈している。停電や断水などライフラインのほか、企業活動にも影響が及んでおり、被害状況の把握や救助活動には、なお時間がかかる見通しだ。
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道路脇の土砂が崩れた北九州市小倉南区の九州道(7日午前8時30分)=共同
「これまでに経験したことがない大雨。生命に重大な危険が差し迫った異常事態」。気象庁の梶原靖司予報課長は7日の記者会見で、今回の大雨への危機感を募らせた。
同庁が最初に特別警報を出したのは、6日午後5時10分ごろ。福岡、佐賀、長崎の3県に同時発令だった。その後、広島、岡山、兵庫、京都、岐阜、鳥取に広がり、最大9府県に上った。7日になり、特別警報は徐々に解除され、7日午後9時半時点、岐阜では続く。
2013年の運用開始以来、鬼怒川が決壊した15年9月の豪雨で出した3県が最も多く、「今回の9府県の発動は最多であり、これだけ広範囲の被害は珍しい」(梶原課長)という。
各地で記録的な大雨が続く中、今回の被害の特徴の一つは、一部地域の局所的ではなく、各地で同時期に多発的に土砂崩れや冠水などが発生していることにある。それが被害拡大を招いたとみられる。最も多くの犠牲者を出した広島県では土砂崩れが多発。それに伴い各地で道路の寸断が相次ぎ、物流の拠点となる中国自動車道や山陽自動車道などが通行止めとなった。
高知県災害対策本部によると、安芸市や香美市など8市町で、土砂崩れで一部陥没したり倒木でふさがれたりするなど道路が寸断された。少なくとも計約440人が孤立。土砂や倒木を取り除く作業が難航している。
建物の屋根に逃れ、救助を待つ住民、近くに土砂崩れで倒壊した家屋がある――。警察や消防、自治体には多数の救助要請や被害情報が寄せられ、SNS上にも発信される。一部が浸水した岡山県総社市では7日午後4時時点で3人の安否が未確認。担当者は「市内は濁流の勢いが激しく、捜索できる状態ではない」と声を落とした。
防災システム研究所の山村武彦所長は「初動段階では自治体が救助要請など様々な情報を職員不足で整理できず、災害の全体像を把握することができない」と指摘。実際時間の経過とともに、犠牲者数が増えるなど被害状況が深刻化している。
安否不明者の捜索や孤立した住民の救助活動は一刻を争い、ライフラインの早期復旧も不可欠だ。山村所長は「国や県が情報を整理できる専門職員を派遣するなど、連携した対応が重要」としている。
2018/7/7 19:40 (2018/7/7 23:16更新)