浦安市 東京じゃない!? 年収ランキング3位は北海道の“村”だった
みなさん、高収入にあこがれませんか。年収1千万円もあれば人生もっと楽しいのに、と思う人もいるでしょう。実は全国の自治体には高収入の人が集中するところがあるんです。企業経営者が多い東京中心部から、意外な地方の農漁村まで、「勝ち組」が集まる街を紹介します。
東京都港区にある2014年開業の虎ノ門ヒルズ。商業施設に加え住居部分もあり、家賃相場は月100万円前後になる超高級物件だ。この家賃でも住居部分はほぼ埋まっていて、高収入の「勝ち組」が集まる。森ビルは周辺の開発を続けていて、新たな高層マンションなどもできる予定だ。広報担当者はこう説明する。
「周辺では住宅もオフィスもまだ足りません。空室は少なく、ほとんど在庫がない状況です」
こうした虎ノ門ヒルズのようなビルが、港区には複数ある。住民が全国的に見ていかに高収入なのかデータが示している。
総務省が毎年発表する市町村税の課税状況で、住民1人あたりの年収(年間平均所得)がわかるのだ。
2017年の港区の年収は1115万円。5年前と比較して23%増え、全国で唯一、1千万円を超えた。全国平均は334万円で3倍以上となっている。
港区には企業の経営者が多い。東京商工リサーチの調査によると人口の約10人に1人は社長だ。23区では社長の割合は100人中3.81人にとどまる。港区役所税務課の担当者はこう答える。
「大企業が多く立地し、社長や役員ら高所得者が多く住んでいる。数億円もの年収がある人もいて、平均年収を引き上げている」
東日本の上位で目立つのはやはり東京23区。トップの港区のほかにも、2位は千代田区944万円、4位は渋谷区801万円、5位は中央区634万円と続く。
背景には郊外よりも利便性の高い中心部に住みたいという「都心回帰」がある。千代田、渋谷、中央、いずれの区でも人口は増加傾向だ。千代田区役所企画課の担当者はこう説明する。
「最近は交通が便利で、大きな病院もある都心を好む傾向が強い。ファミリー層や高齢者が郊外から戻ってきています」
都心に行きやすい周辺の街でも人口が増えて、高所得者が流入している。ランキングに入る武蔵野市(東京都)や浦安市(千葉県)などは、会社員らに人気があるエリアだ。
高収入というと大企業の社員や公務員らを想像しがちだが、実は農林水産業に従事する人も負けてはいない。
東京周辺が上位を占める中で、意外な自治体が食い込んでいる。猿払村(さるふつむら・北海道)は813万円で3位。北海道北部のオホーツク海に面し、人口は2700人(6月時点)。
水揚げ量が市町村の中で全国一のホタテ漁のおかげだ。村には“ホタテ御殿”が立ち並び、ベンツなどの高級車が走る。村の漁業関係者はこう明かす。
「海が荒れて水揚げが全国的に少なくなると、1キロあたりの単価が跳ね上がる。猿払村は水揚げが安定しているので単価が上がると、年収が1千万円を超える人は珍しくない。3千万円を超える人もいる」
移住したいと思う人もいるだろうが、ホタテ漁ができるのは漁業協同組合員に限られるという。
「新たに参加できるのは、いま従事している親の息子、もしくは、娘と結婚した娘婿に限られる。後継者は2人まで。これは乱獲を防ぐためです」(漁業関係者)
大企業の恩恵を受けているところもある。13位は忍野(おしの)村(山梨県)の484万円。富士山のふもとにある自然豊かな村で、人口は9700人(5月時点)。
村役場総務課の担当者は、「住民の平均年収が高いのはファナックがあるためです」と説明する。産業用ロボットなどを製造する世界的な企業だ。一般消費者向けの製品は扱わないため知名度は低いが、企業の市場価値を示す時価総額は6月21日時点で約4.6兆円。日産自動車や日立製作所などを上回り、超優良企業として知られる。
有価証券報告書によると、17年3月期の社員(平均年齢42.2歳)の平均給与は1318万円。12年と比較すると240万円増えた。
「村には2千人弱の従業員や役員が住んでいます。家族を含めれば村民の3割くらいが関係者。太陽光発電などを備えた高機能な家に住んでいる人が多いですね」(村役場総務課の担当者)
年収の水準だけでなく、どのぐらい増えているのかも気になるところだ。年収の増加を5年前と比較すると、東日本のトップはホタテ漁で潤う81%増の猿払村。
3位の葛尾(かつらお)村や6位の大熊町など福島県の自治体も入る。自治体の担当者らは、原発事故に伴う東京電力からの賠償や、行政による土地の買い上げが進んだことで、住民の所得が一時的に上がっていると説明する。
2位の遠軽(えんがる)町(北海道)や4位の二宮町(神奈川県)などは、土地や株などの資産を売却した住民がいたことも増加の要因だ。人口の少ない自治体の1人あたりの年収は、一部の資産家の影響を受けやすい。
11位には26%増の川上村(長野県)が入った。レタスの出荷量が市町村としては日本一だ。白菜なども生産しており、15年の村全体の野菜の販売額は約200億円で、農家1戸あたりの平均収入は4千万円を超えるという。後継者不足で悩む農家が全国的に多い中、村の農業従事者には若い人も多い。村役場の担当者は「経営が安定し収入も確保できているため後継者が見つかる」と喜ぶ。