アベノミクス、北方領土、日韓関係…安倍総理が単独インタビューで語った”2019年の展望”

 再登板から7年目を迎える安倍総理がテレビ朝日の独占インタビューに応じ、2019年の展望を語った。安倍総理は今年10月に予定されている消費増税で懸念される経済情勢、レーダー照射問題に揺れる日韓関係、そして参院選・ポスト安倍についても言及した。

「日本の明日を切り拓く」 ■アベノミクス、経済政策について

ーー今年の抱負は「日本の明日を切り拓く」、これはどういう思いで書かれたのでしょうか。

 今年はなんと言っても皇位の継承があります。そして日本で初めてG20も開かれます。新たな国づくりを始めるスタートの年としたい、こう考えています。

ーーさっそくですが内政の話について、アベノミクスも7年目に入ることになりましたが、年末には株価が2万円を切る事態もありました。世論調査で見ると、アベノミクスについて「うまく進んでいる」26%、「うまく進んでいない」57%と、6割近くの人が好景気を実感できていないということなんだと思いますが、今年はここを解消することができますか。

 景気について、いろいろな感じ方をしておられる方々がいらっしゃると思います。そのように感じていらっしゃる方々がおられるということは、しっかりと肝に銘じながらさらに政策に磨きをかけていきながら、もっと多くの方々が景気の実感を感じていただけるようにしたいと思います。

 例えば内閣府の調査においては75%の方々が「今の生活に満足している」と答えていただいています。これは過去最高の数字となっていると思いますし、また「賃上げ」につきましては、この5年間で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが続いています。また中規模、小規模事業者のみなさんにおきましても、この20年間で最も高い水準の賃上げが行われている。最低賃金も昨年26円、これは時間給で見始めてから最も高い賃上げになりました。

 またボーナスも経団連の調査で初めて平均90万円を超えた、こうした勢いを、2019年の賃上げにつないでいく。皆さんに景気の実感を感じ取ってもらいたいと思っています。
ーー今後の景気の動向を鑑みて「消費増税はまだやるべきではないのではないか」という声がまだ根強く残っているが、増税は予定通り実施するということでよいのでしょうか。

 株価の動向について今質問がございましたが、株価の水準についてコメントは致しませんが、しかし日本経済のファンダメンタルズ(基礎)は力強いものがあると思ってます。日本の景気の回復も、いざなぎ景気を超えて、過去最長に並ぶと言われています。

 そして過去最長と言われたのは、小泉政権に始まり、第一次安倍政権から福田政権まで続いた景気回復期でありますが、その時と比べても、その時は100万人雇用が増えたわけですが、今回は370万人増えていますし、成長も当時はその期間に2.5%成長したんですが、今回は10.9%成長し、4倍近く成長している。かつ9地域に分けて、日本銀行の短観で調査をしたところ、前の景気回復期間は確かに長かったんですが、地域でずいぶんバラつきがあるんです。ずっと良かったのは関東と東海だけで、北海道や四国はずっと悪いんですね。そういうばらつきがあった。

 しかし今回は、この5年間9地域すべての地域でプラスになっているという意味においては、ばらつきが少なく多くの地域でよくなっている。それが結果として、47すべての都道府県で(有効求人倍率が)1倍を超えたということではないかと思います。

 その中でもちろんリーマンショック級の事態になれば別ですが、そうではない限り、こういう状況の中においては伸びていく社会保障費をまかなっていく上において、また日本の国の信認を維持していく上において消費税を2%引き上げていきたいと考えています。

 同時に、前回5%から8%に引き上げたときに消費が減退をしてしまった。あの時の反省をしっかり頭に入れながら、今回は軽減税率等がございますので、実質的な負担増は2兆円でありますが、2兆円を上回る、十二分な消費税対策措置を取りながら、しっかりとデフレ脱却を確かなものにし、経済の成長軌道をしっかりと維持していきたいと思っています。

ーーちょっと角度を変えますが、外国人労働者、年金医療といった社会保障の問題、行き着くところはすべては人口減少につながってくるんだというふうに思いますけれども、この特効薬が見つからない中で、この一年政策としてどこに力を入れていきたいとお考えでしょうか。

 直ちに効いていく特効薬というものは無いんですが、しかしこの人口動態に、安倍政権としては正面から向き合わなければいけない。少子高齢化に正面から向き合っていきます。

 今年10月からですね、消費税を引き上げてまいりますが、それに合わせて幼児教育の無償化を行っていく。そして来年の4月からは真に必要な子供たちの高等教育の無償化を行います。思い切って子供たちの世代に投資をしていく。そして子育ての支援もしっかりとしていきます。もちろん幼児教育の無償化をする以上、無償化なのに私の家の子どもは保育園、幼稚園に行けないじゃないかということがないように受け皿づくりを、急ピッチで進めてきています。

■日ロ関係、北方領土交渉について

ーー日ロ関係についてお伺いします。総理の様子を見ていると手ごたえをひしひしと感じるわけですが、ずばり、平和条約の文案作成は既に始まっていると思っていいのでしょうか。

 私の地元長門で行った長門会談以来、「新しいアプローチ」、両国の国民が、日本人とロシア人が一緒に協力することで、もっとそれぞれの国の、あるいは地域の未来は明るくなっていくと感じとっていただけるようなアプローチをスタートして、そしてシンガポールにおいて「56年宣言」を基礎として平和条約交渉を加速するということでプーチン大統領と合意をしました。70年間、残念ながら残されてきた、難しい課題でありますが、私とプーチン大統領の手で必ずこの問題に終止符を打つという決意を共有することができたと思います。

 2019年1月にロシアを訪問し、その前に河野外務大臣がロシアを訪問し、ラブロフ外務大臣と交渉をする予定でありますが、私たちとしてはこの平和条約交渉を加速する以上、もちろん領土問題を解決をしていくんですけど、まずはその中において、具体的な協議に入っていきたいと思っています。

ANN世論調査

ーー世論調査では、今総理がおっしゃった「日ソ共同宣言を基礎にする」つまり2島引き渡しが明記されている宣言を基礎にするということについては過半数の人が支持していますが、6月のG20の時には日ロ首脳会談の状況はどうなっているのか、ゴールをどう描いてらっしゃるのか。

 まだ交渉の過程ですから、今から6月のG20の際にプーチン大統領が訪日をされた時にですね、どういう内容になっているかということは、申し上げることはできませんが、とにかく1月の首脳会談においてですね、具体的な進展を見たいと思っておりますし、これは両国で領土問題の解決、平和条約については、両国の国民から理解されなければならないものでありまして、ということはお互いに100点ということはないんですね。日本側で100点だって、むこうロシア側が30点であれば、これは平和条約はできないわけであります。そういう観点に立ちながら、両国が受け入れ可能な解決策を必ず見つけていきたいと思っています。

ーー北方領土にロシアの方が住んでらっしゃる、この点をどうするかというのが一番難題だと思うんですけど、北方領土の将来像、どういう形を描いているんでしょうか。

 今まさに質問されたように、北方四島に住んでおられるみなさんは、全てがロシア人であります。残念ながら旧島民の皆さんはそこに住むことができないという状況になっている。誰も住んでいない島をどうするかということではなくて、ロシア人の皆さんが住んで生活をして、そしてすでに70年たっていますから、代を継いでいる。そういう中における交渉です。このロシア人の皆さんに「あなたたち、出ていってください」という態度では、これはもう最初から交渉は成り立ちません。ここに住んでいるロシア人の方々が日本に帰属が変わるということに納得していただける、受け入れていただく形でなければいけない。

 ですから今、共同経済活動を具体化しようとしています。つまり日本人と一緒に住んで、仕事をすればもっと豊かになる、この地域も、もっといい地域になっていくということを感じて頂くことが、極めて重要だと思います。

 この問題が解決すれば、北方四島の中において、日本人とロシア人がともに協力しながら、共生し、共に未来を作っていくという、そういう新しい世界でも、新しい解決策のもとに、この問題を解決していきたいし、この地域の未来を作っていきたいと思っています。

ーープーチン大統領は2018年の年末の記者会見で、在日米軍の撤退という発言がありましたけども、この言葉はどのように受け止めていますか。

 在日米軍はですね、これは日米安保条約の5条、6条によってですね、日本や極東の平和と安全を守るために在日米軍の存在があり、そしてこれは極東の平和と安全のためには極めて重要であります。決してロシアに対して、敵対的なものではありません。これは、今までもプーチン大統領に説明してきたこともございます。これは必ずご理解をいただけると思います。

■参院選、「ポスト安倍」について

ーー今年は在職日数の歴代最長が視野に入ってきますけども、その前には参議院選挙という大きな壁があります。改憲論議の行方も左右するということになると思いますが、この選挙、何をテーマに、何を問う選挙になるとお考えでしょうか。

 まだだいぶ早いんですが、参議院選挙までですね。選挙というのは、民主主義において、とても大切な機会だと思ってます。私たちが何をやってきたか、これから何をやろうとしているかということをしっかりと訴えて、選挙に臨みたいと思っています。

 今までも国論を二分するような大きな改革、平和安全法制もそうですし、さまざまな改革を選挙で、総選挙で訴え、国民の皆様から支持をいただいたことによって、大きな改革を進めていくことができました。まさに選挙というのは、民主主義のダイナミズムを実感できる、そういうものなんだろうと、大切なものなんだろうと思っています。

 この参議院選挙の機会を生かして、安倍政権がこれから目指すもの、平成のその先の時代にむかって、何を目指すのかということは、きっちりとお示しをしていきたい。これは私だけが今決めることではなくて、与党とも話しながら、何を訴えていくかということを決めていきたいと思っています。

ーー自民党の総裁任期も今回が最後の任期ということになりますけども、この1年、おそらくポスト安倍の動きもざわつくことになろうかと思うんですけども、3年先も含めて、どう見据えているのでしょうか。

 政治の世界というのは動きが早いですから、今すでにポスト安倍ということで名前が出ている方もおられますが、この3年間で新たに台頭する人もいるんだろうと思います。それぐらい自民党は、人材の宝庫であり、いまスポットライトが当たっていないけども、地道に努力を重ねている人たちもいますね。政策作り、あるいは政策を調整して、結果を出していくために汗を流している。党の中ではそういう仕事ぶり、評価は高いんですが、一般的に知られていない。そういう人にもスポットライトをあててもらいたいと思うんですが、そういう、真の実力者も出てくるかも知れない。

 もちろん、私としてはこの内閣でもそうなんですが、今までもそうですが、なるべく多くの皆さんにチャンスを提供したいと思っています。
ーーこれもちょっと下世話な話になってしまうかも知れませんが、竹下七奉行の時に「平時の羽田(孜)、乱世の小沢(一郎)、大乱世の梶山(静六)」というのがありましたが、いまこれをなぞらえて、「平時の岸田さん、乱世の石破さん、大乱世の安倍四選」というのが…

 (笑)。大変、下世話な話だと思うんですが(笑)。

ーー国際情勢を見ると大乱世ですから、そういう声も出てくるのかなという気もするが。

 少なくとも3番目の選択(安倍四選)というのは無いんですが、今のは確か金丸元副総裁が言ったのかな。それぞれの時代にふさわしい人は誰かということだろうと思いますが、時代から求められるということもあるんですね。実力があって、意欲があっても、時代から求められないと残念ながらその地位にはつけないということなんだろうと思いますが、ですから3年後、今から完全に予測することはできませんが、そうした色んな時代に適合できる、対応できる人は自民党には本当に山ほどいます。皆さんさらに研鑽されて、立派な、この人なら大丈夫という候補者、何人か、国民の皆様にお示しすることができると私は確信しています。

ーー消費税増税をするとその後が中々、総選挙が打ちにくい。あるいは任期満了の選挙はやっぱり避けたいとなると、翻ってこの夏、衆参ダブル選挙をした方がいいじゃないかという声も出てきてますが。

 選挙というのは常に、国民の声を反映すると同時に政権の選択肢を提供するものであります。政権にとって、安倍政権はよく選挙をやっているという批判もありますが、選挙のたびに、政権を失うかもしれないという緊張感の中で、5回の選挙に勝ち続けることができました。しかし今は、私の頭の中では、まずは通常国会を乗り越え、大切な法案を通し、そして、地方選挙もありますし、参議院選挙にとにかく勝ち抜くこと。総選挙でダブルということはですね、頭の片隅にもありません。

■日韓関係、レーダー照射問題

ーー日韓関係です。レーダー照射問題が発生し改善の兆しが全くありませんが、G20には文大統領も来日することが想定されていますが、どのようにマネージしていこうとお考えですか。

 朝鮮半島出身労働者の問題については、1965年の請求権協定で完全かつ最終的に解決をしている問題でありますし、国際法的に見ても、あり得ない判断でございます。今後、事態の推移によっては、国際裁判、あるいは、対抗措置も含めてあらゆる選択肢を視野に、毅然と対応していきたいと考えています。

いずれにせよ、韓国は国際社会において、責任ある行動をとっていただきたい、こう思っています。

ーーレーダー照射の問題、これはなかなか日韓で主張が食い違っているが。

 日本の主張というのは、火器管制レーダーの照射は、危険な行為であり、再発防止策をしっかりとやっていただきたいという点であります。韓国側にも受け止めてもらいたいと思います。