市川市
家の買い替え「住宅ローン残して賃貸に回す」と“大変な事”に?〈AERA〉
家の購入は人生の一大イベントだが、様々な理由から家の買い替えを検討することもあるはず。買い替えの際には、今の家を売ることと、新しい家を買うことを同時進行することが重要だと専門家は語る。失敗しない買い替えの秘訣を聞いた。
「子どもも独立したので、都心近くの便利な中古マンションに買い替えたい」
「子どもが大きくなったので少し広めの部屋に移りたい」
そんな買い替えで心配なのがお金の問題だ。今の家を売ったお金を、無駄なく新しい物件に回すにはどうすればいいか。リフォーム費用はどう捻出するか。理想は、売りと買いを同時に進行させながら、同時決着させることだ。
その成功の秘訣について、1級建築士であり、不動産の総合管理・売買・仲介を手がける柴総合計画代表取締役の柴英寿さんはこうアドバイスする。
「買いたい物件が見つかってから買い替えを進める人が多いのですが、その場合には、契約を結ぶ前に必ず今の住まいがいくらで売れるのか相場を確認してください。査定は無料のことが多いので数社に見てもらい、いくらで売れるのかを把握しておきましょう」
相場を知ったら、いよいよ不動産業者と契約することになる。このときに重要なのが「買い取り保証」だ。
「購入契約を結ぶとき、買い取り保証を付けておけば、スムーズに同時決着できます」(柴さん)
買い取り保証とは、売買契約にあたって、現在の住まいが当初の売り出し価格で一定期間内(通常は3カ月程度)に売れない場合、あらかじめ取り決めた価格で不動産業者が買い取ってくれるという約束だ。
その買い取り価格を判断する際に、相場を知っておくことが武器になる。相場を知らないと、価格の設定で不動産業者に足元を見られてしまう。
一方で、物件の価値を高く見積もりすぎていると買い取り価格で業者と折り合えないおそれがある。予定通りに売却できなければ、新しい物件を買うための資金がショートすることにもなりかねない。
千葉県市川市で買い替えを成功させた会社員の男性(45)は、こんな体験を語る。
「不動産会社から示された買い取り価格に納得できないので、周辺の不動産会社で聞いたところ、もう少し高く売れそうなことが分かりました。それを材料に交渉して、少しだけですが、買い取り価格を上げてもらいました。実際には、1カ月で買い手が見つかったので、買い取りのお世話にはならなかったのですが」
住宅ローンも重要なポイント。すでに返済が終わっているのなら問題はないが、残っている場合には、売却代金で一括返済できるのかどうかを確認しておこう。
中には元の家を売却せず、住宅ローンを残したまま賃貸に回して家賃収入を得ようと考える人もいるようだが、それはやめたほうがいい。ファイナンシャルプランナーで信共社長の中村諭さんはこう話す。
「自己居住用として住宅ローンを組んでいるのですから、それを賃貸運用に回すのは契約違反になります。万一発覚した場合には即刻優遇金利が適用されなくなり、店頭表示金利になってしまうこともあります。二重ローンになっても賃料収入が入るから大丈夫と思うかもしれませんが、返済額は重くなります、空室や滞納が発生するとたいへんなことになります。ローン返済が滞ると、最悪、一括返済を迫られることもあり得ます」
そんな事態に陥らないように、ローンはできる限り売却代金で一括返済しよう。(住宅ジャーナリスト・山下和之)