スポーツ置き去りに=急ごしらえの南北合同チーム〔五輪〕
70年前の朝鮮半島分断以降初めて、平和の祭典でもある五輪で南北合同チームの結成が決まった。平昌五輪のアイスホッケー女子に開催国枠で出場する韓国チームに、北朝鮮の選手12人が加わる。政治主導による急ごしらえの色が濃く、スポーツも、アスリートも置き去りにされている。
開幕まで1カ月を切り、どのチームも仕上げの時期に入っている。動きの激しいアイスホッケーは攻撃と守備のユニットを複数セットつくり、戦況などに応じて頻繁に交代しながらプレーする。戦略と連携を軽視した合同チーム結成は、スポーツの本質をゆがめる。
韓国メディアによると、韓国代表チームを率いる米国人のサラ・マレー監督は、北朝鮮選手が韓国チームの戦術を短期間で理解することの難しさと組織力の低下を懸念している。日本女子の山中武司監督も「この時期に選手を替えられたりする韓国代表の監督に同情する」と話した。韓国選手の登録人数を変えずに北朝鮮選手を追加する動きには、初戦で対戦するスイスが反発している。ルールの公平性が損なわれれば、スポーツの大前提が崩れることになる。
1991年に千葉市で開かれた卓球の世界選手権で南北合同チームが結成された。国際卓球連盟会長だった故荻村伊智朗さんが韓国、北朝鮮の双方と粘り強く対話を続けて実現。女子団体は「コリア」が中国を決勝で破って優勝した。同年のサッカー世界ユース選手権でも前年のアジア・ユース選手権決勝を戦った両国が合同チームで臨み、アルゼンチンを破るなどしてベスト8入りした。
政治的に見れば一過性だったかもしれないが、27年前の二つの南北合同チームはスポーツ界主導で、意義があった。平昌五輪の南北合同チームは、結成の経緯を含め、スポーツをあまりに軽んじていると言わざるを得ない。