韓国、大気汚染対策に本腰 北京よりソウル深刻? 石炭火力8基一時停止
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、深刻化する大気汚染対策の第1弾として、稼働32年以上の石炭火力発電所8基を6月に1カ月間停止する方針を決めた。来年以降も電力需要が比較的少ない3~6月に停止する。ソウルの大気汚染は中国・北京より悪化しているとのデータもあり、韓国国内からは期待の声が出ている。
停止するのは、韓国で稼働中の石炭火力発電所59基のうち、稼働32~44年の8基。文大統領はこの8基を含め、稼働30年以上の計10基を任期の2022年までに廃止する方針も表明した。子どもの健康への影響を監視するため、全国の小中高約1万1千校全てに大気測定の機器を設置する。
韓国大統領府は、老朽化した石炭火力発電所8基を1カ月間停止すれば、大気汚染の原因である粒子状物質「PM10」が1~2%減ると試算している。来年以降、4カ月間停止することで、液化天然ガス(LNG)火力発電所で発電を補うコストが約600億ウォン(約60億円)増える見込みだが、その分は韓国電力に負担させる。
世界保健機関(WHO)が設けているPM10の環境基準値は大気1立方メートル当たり年平均20マイクログラム。ソウル市の測定では16年の年平均は48マイクログラムに上った。世界の大気汚染を監視する団体が公表したPM10やPM2・5などの総合指数は今年3月時点で、ソウルがインド・ニューデリーに次いで世界2番目に悪かった。深刻な大気汚染で知られる北京(6位)より悪いデータに、韓国では「衝撃が広がった」(東亜日報)。
韓国の大気汚染は、老朽化した火力発電所や年式の古いディーゼル車の排ガスが原因とみられている。文大統領は、大統領選で汚染物質を任期中に30%削減する公約を掲げて当選。石炭火力発電所の削減のほか、電気自動車などエコカーの推進、工場の排ガス基準の強化などを柱とする対策を取りまとめる方針だ。
この記事は2017年05月19日付で、内容は当時のものです