インドがセイシェルに軍事拠点、中国の進出拡大に対抗

インドがセイシェルに軍事拠点、中国の進出拡大に対抗

ニューデリー(CNN) インド洋に浮かぶ小さな島国、セイシェル。白砂のビーチと熱帯雨林で知られるこの国が、中国の影響力拡大に対抗しようとするインドにとっての要衝となりつつある。

インドとセイシェルは先月、アフリカ大陸から約1650キロ東部にあるセイシェルのアサンプション島にインドが基地を建設する計画について、改訂合意文書に調印した。

今回の合意は、数年に及ぶ外交交渉を経て実現した。これでインドは、急速に戦略的重要性が高まる地域に軍事拠点を築くことになる。

2016年、世界の石油供給量の半分近くに相当する1日約4000万バレルの石油が、ホルムズ海峡やマラッカ海峡、バブエルマンデブ海峡などインド洋の海峡を通過した。

インド洋の中央に位置するインドの貿易は、そうした輸送路への自由で開かれたアクセスに依存する。インド海運省によると、同国の貿易量の約95%、貿易額の70%はインド洋を経由する。

一方、隣国の中国は習近平(シーチンピン)国家主席の下で海軍拠点を大幅に拡大し、中国本土の海岸線を越えて、これまで中国の影響力が及ばないと考えられてきた範囲にまで進出しつつある。

昨年7月、中国はバブエルマンデブ海峡に近いジブチに初の海外軍事基地を設けた。

バブエルマンデブ海峡は最も狭い部分で幅わずか29キロ。地中海からスエズ運河と航海を経由して、アデン湾とインド洋を結ぶ。

ジブチ基地の開設からわずか数カ月後、中国はスリランカのハンバントタ港の経営権を取得した。マラッカ海峡とスエズ運河を結ぶインド洋シーレーンから同港までは、推計によってはわずか22.2キロしか離れていない。

オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デイビス研究員は、ハンバントタ港の経営権獲得について、「インドを犠牲にして、インド洋全域で影響力の拡大を図る中国の断固たる戦略」の一環とみる。

今月に入ると、インド洋の海運にとってもう1つの欠かせない拠点であるモルディブで、中国に土地を収奪されているという反発が強まり、中国はこれを否定する異例の措置に出た。

スリランカと同様、モルディブは以前からインドとの関係が深かった。しかしここ数年はヤミーン大統領の下で中国と急接近、中国が掲げる「一帯一路」構想に基づき投資を呼び込んでいる。

モルディブの野党指導者ナシード氏は先月、報道陣に対し、モルディブの対外債務の80%を中国が占めていることから、モルディブもいずれスリランカのように、債務と引き換えにインフラを引き渡さざるを得なくなると語った。

中国はそうした意図を否定しているものの、インドはこれで中国による囲い込みに対する警戒感を一層強め、改めて地域の同盟を強化する動きに出たと専門家はみる。

インドのシンクタンクNMF所長はCNNの取材に対し、今回のセイシェルとの合意は、インドが領土の安定を守ろうとする取り組みの一環だと指摘。「我々(インド)には、守らなければならない利益がある。中国がインド洋で大規模な進出を進めるなら、我々の戦略的利益も拡大していかざるを得ない。インドが自らを保全するためにはそれが唯一の方法だ」と指摘した。