千葉市   千葉市の子どもルーム待機児童激増

千葉市     千葉市の子どもルーム待機児童激増

■放課後の居場所づくり、真剣に議論を

千葉市の「子どもルーム」を利用したくても利用できない待機児童数が、昨年度の2倍以上の631人に急増したことが明らかになった。預けたい保護者のニーズは今後も高まりそうな一方、見守り役となる指導員は不足しており、“需給ギャップ”を放置すれば事態は深刻化しかねない。未就学児の保育園だけでなく、子どもルームの待機児童問題も重要課題に浮上しつつある。(藤川佳代)

「ただいま!」。弾けるような挨拶とともに子供たちが「帰って」きた。同市中央区の都小の校内にある子どもルーム。在籍児童がほぼそろった頃にチャイムが鳴り響き、速やかにおやつをもらう列を作った。取材に訪れた3月、1年間をともに過ごし、児童も指導員も家族のようだ。十分な広さはないが、児童はここで帰宅までの時間をリラックスして過ごす。

低学年80人に指導員4人が対応。同校の特別教室を利用した高学年は指導員2人がつき、大人6人で低・高学年を連携して見守る。

保育所の待機児童問題に隠れがちだが、子どもルームも飽和状態だ。共働き世帯の増加や治安上の不安が理由とみられる。「親が帰宅するまで安全な場所で」-。昨年には松戸市で小3女児誘拐・殺人事件もあり、保護者の漠然とした不安を増幅させた。

同小の子どもルームは、高学年ルームが設置された当初から定員オーバーで、本来の低学年ルームに入れない3年生を高学年ルームで受け入れる弾力的な運用を行う。学年ごとの定員をやり繰りする窮余の策ともいえるが、問題は解決しない。指導員の友利喜久江さん(60)は「高学年ルームは特別教室を間借りしているため、過ごし方にも制約が多い」と、学齢に応じた対応ができないと打ち明ける。

最大の問題は「見守る側」の指導員の不足で定員を広げられないことだ。子どもルームの運営を受託する市社会福祉協議会によると、指導員の給与水準は低く、勤務後の深夜に飲食店などで働く指導員も少なくないという。やりがいを持って志しても、副業を検討せざるを得ずに見守りに専念できないケースも。指導員の9割は女性で、退職理由で最も多いのは待遇への不満だ。保育所の保育士不足と課題は同じといってよい。

千葉市には、中央区の官民複合施設「きぼーる」内の「子ども交流館」以外に、放課後や長期休暇期間を無料で自由に過ごせる常設の遊び場はない。渡辺忍市議(市民ネット)は、「問題全てを市の財政で解消するのは限界」と指摘。「行政と保護者が意見を出し合い、子供中心に考えた居場所づくりを真剣に考えるべきだ」と強調する。

市も子どもルームの待機児童問題をめぐり、28年9月から緊急3カ年対策を実施。教室の改修など施設確保のほか、待遇に「経験給」の要素を導入して補助するなど指導員確保に取り組んできた。しかし、社会環境の変化で利用希望者の増加に対応が追いつかないのが実情だ。

保育園の待機児童問題に比べ、子どもルームは切迫度が低いと受け止められることもある。しかし、児童が放課後に安全に過ごせる居場所を確保することは、働く親の安心につながる。「子育てしやすいまち」は、人口減少時代の都市間競争でアピール材料にもなる。市の担当者は「緊急対策は今年度が最終年度だが、後継の対策を当然行っていく必要がある」と話している。