浦安市   正社員「不足」5割超 企業、労働力確保で苦戦 

浦安市

正社員「不足」5割超 企業、労働力確保で苦戦 省力化投資でカバーへ 千葉県内4月調査

千葉県内企業が労働力の確保で苦戦している。帝国データバンク千葉支店の4月調査によると、正社員が「不足」と回答した県内企業は5割を超えた。アベノミクスによる景気回復で雇用環境は大幅に改善。県内有効求人倍率は約3年、1倍台の高水準を維持し、今月1日の大手企業の面接解禁は相次ぐ事前内定で形骸化し、学生優位の「売り手市場」が鮮明だった。人手不足による企業の供給制約が経済成長の足かせになる恐れがあり、県内企業では省力化目的の設備投資が上向いている。

(報道センター長・安原直樹)

同支店の「人手不足に関する動向調査」によると、正社員が「不足」と回答した県内企業は53・6%。1年前と比べ12・3ポイントも上昇し、4月としては過去最高を記録した。

規模別では、大企業が30・5ポイント増の67・6%、中小企業が9・0ポイント増の51・1%と大手でも正社員の不足感が強くなっている。非正規社員が「不足」の回答でも、同様の傾向が見られた。

例年なら4月は、新卒社員を迎え人手不足感が一服するが、同支店は「大手でも人が集まらない状況。春の採用計画数に達しなかったため、不足感が出たのだろう」(担当者)と分析した。

◆バブル期並み

県内の有効求人倍率をみると、4月は1・34倍。バブル期並みの高水準で、千葉労働局は「少子高齢化を背景に全体的に人手不足感は高い」(担当者)とした。有効求人倍率は2015年6月に1倍になってから2年11カ月間、大台をキープしている。

今春卒業した大学生の就職率も98・0%と、3年連続で過去最高となり、アベノミクス効果で業容拡大している企業の採用意欲は旺盛で、「売り手市場」の継続は今後も予想される。

今月1日に解禁となった大手企業による来春卒業予定の大学生らの採用面接は、経団連指針が形骸化。指針では面接初日となるはずが、優秀な人材確保へ水面下で選考を始め、事前に内定を出す企業が相次いでいるためだ。

◆首尾よく着地?

では、県内大手の金融、レジャー、スーパーなど実際の新卒採用現場はどうか。

地元金融機関のトップ千葉銀行(千葉市)は1日の面接状況について「(学生が)結構、来てくれた」と好感触。だが、銀行を取り巻く厳しい環境を考えると、「(来春採用数が)首尾よく着地するかは分からない」(広報担当)と不安を隠せない。

ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(浦安市)は、来春の採用計画75人に対し「相当数の応募。(採用プロセスを経て)順次、内定を出している」と順調だ。ただ、ランド新エリアの2020年春開業に向け、「魅力的な職場環境を整備し、採用力と人材定着の向上を図っていきたい」(広報担当)と先を見据える。

イオン(千葉市)は今春、グループ約65社で約3500人の新人を採用。来春も同規模を予定しており、「順調に応募が集まっている」(イオン広報)と人員確保に強気だ。

◆生産性向上を

16年の日本の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟35カ国のうち20位。少子高齢化で労働人口が減少する中、労働生産性の向上が課題となっている。

帝国データバンク千葉支店の調査によると、18年度に設備投資を行う予定が「ある」県内企業は58・0%と意欲的だ。

投資の内容は、設備の老朽化に伴う代替えが53・0%とトップだが、人手不足をカバーするためのIT関連や省力・合理化もそれぞれ25・4%、21・6%と上位にランクした。

規模別で、資金に余裕がある大手の設備投資予定が66・7%と高いのは当然だが、日本の全企業数の99・7%を占める中小の省力化投資による労働生産性の底上げが、経済成長には不可欠だ。

ただ、政府は生産性向上だけでは高い成長率が厳しい現実に目を向け、「骨太方針」案で外国人の受け入れ拡大を示しており、人手不足に関しては問題が山積している。

*   *

帝国データバンク千葉支店は全国約2・3万社を対象にした調査から県内603(有効回答231)社を抽出した。調査期間は4月16~30日。