ロシアステルス機「SU57」日本の頼み「F35」

ロシア最新鋭ステルス機「SU57」来年配備へ 日本の頼みの綱「F35」より優位に?

ロシアの最新鋭ステルス戦闘機「SU57」が来年にも軍に配備される見通しだ。露政府系メディア「RT」は6月30日、「クリボルチコ国防副大臣が『初量産の12機のSU57の引き渡し契約が結ばれ、来年にも配備される』と述べた」と伝えた。これに合わせるようにRTは同月25日、「(米国の最新鋭ステルス機)F35とSU57、どちらが優れている?」と題した記事を掲載。日本も導入するF35は今後の国防の要であり、日本人として気にならないわけはない。露メディアの目から見た両機の優劣は-。(外信部 小野田雄一)

■高性能をアピール

SU57は露航空機メーカー「スホイ」が開発した戦闘機で、開発段階では「PAK-FA(パクファ)」「T50」などとも呼称。旧式化しつつある主力戦闘機「SU27」や「MiG29」の後継機として、2000年代から開発が進められていた。

SU57は、レーダーでの捕捉が困難なステルス性能を備える「第5世代ジェット戦闘機」に分類される。現在、ステルス機の国産開発に成功したのは米国と中国のみとされ、SU57が配備されれば、ロシアは3番目の国産ステルス機保有国となる(イランも国産開発に成功したと主張しているが、専門家は疑問視)。

RTが軍事ジャーナリストや軍関係者の話として伝えたところでは、SU57は高いステルス性能、高性能レーダーと超音速クルーズ機能を備える上、高い機動性を持ち、どんな高度や距離での戦闘もこなせる。さらに敵の迎撃圏外から攻撃できる専用ミサイルも搭載。搭載兵器の性能は前世代から1・5~2倍向上しているという。

さらに同じ空域にいる他の戦闘機とネットワーク化され、「(僚機が発射したミサイルの誘導など)作戦空域内のプラットホームの役割も果たせる」とした。

■F35を圧倒?

こうした性能が事実なら、ロシアの脅威を感じつつもステルス機を持っていない国々には脅威となる。

旧西側諸国内で対抗できる戦闘機と目されているのは、米軍が開発した最新鋭ステルス機であるF22とF35だ。ただ、F22は“世界最強”との呼び声が高いものの、軍事機密保持などの観点から米国外に輸出されておらず、生産ラインも既に閉鎖。再生産の可能性は低い。

一方、F22よりも新型で、電子装備面で優れるとされるF35は一定の開発が既に終わり、輸出も順次行われている。日本も計42機(一部は既に配備済み)の導入を決定しているほか、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州諸国にも配備が進められていく見通しとなっている。

RTもこうしたF35に注目しており、6月25日、F35とSU57を比較する記事を掲載した。記事の執筆者は退役大佐という。

同大佐は軍事ウオッチャーの話として、「両機体はコンセプトが全く異なる。F35は低コストの軽戦闘機であり、(高性能だが高価な)F22を補完する戦闘機だ。一方、SU57は制空用の大型戦闘機として設計されており、速度・高度・各種センサー・武装搭載量・航続距離・機動性でF35を上回っているとみられる」と述べた。

■「情報が足りない」

一方で、この記事は“謙虚”ともいえる姿勢も見せている。

記事によると、現代の空戦では、第一次世界大戦や第二次大戦時のような戦闘機同士のドッグファイト(接近戦)は行われない以上、機動性や武装搭載量は往年ほど重要ではないとも指摘。「本当に重要なのは武装搭載量と射程のバランス、レーダー性能などだが、第5世代戦闘機にはそれらに関して公開されたデータが存在しない」とした。

さらに現代の戦闘機の能力は、早期警戒レーダーや人工衛星とのデータリンクなど支援環境によっても大きく左右されるが、それらに関する確たるデータも存在しないとした。

記事の結論は「そうしたデータが公にされることは決してない以上、両機の優劣に関しては推測しか可能ではなく、メディアで比較するのは適切ではない」と、いささか“拍子抜け”ともいえるものとなっている。

■人類にとって最良は…

ただ、これまでにも軍事専門家やインターネット上のマニアらの間では、両機の優劣に関する議論が盛んに行われてきた。

西側の軍事ウオッチャーの間では一般に「ステルス機開発で長い歴史を持つ米国に比べ、ロシアの歴史は浅い。仮にF35が単純な性能でSU57に劣っても、運用環境や電子装備性能などの総合力でF35の方が優位に立つ」という見方が大勢を占めているようだ。

結局のところ、RTの記事が指摘するように、どちらの戦闘機が総合的に優秀かは実際に戦闘が起きなければ分からないのが実情だ。しかし、それが判明するときは世界のどこかで戦争や紛争が起きているということでもある。“世界最強の戦闘機”をめぐる議論には一種のロマンがあるが、人類にとっては、その答えは永遠に出ない方がよさそうだ。