千葉市  若手選手、狙うメダル=東京五輪あと2年☆2・完

千葉市   若手選手、狙うメダル=東京五輪あと2年☆2・完

◇現実味帯びる五輪金=15歳張本、長足の進歩―卓球
一足飛びの成長ぶりに、本人が一番驚いている。卓球男子の張本智和(15)=エリートアカデミー=。今年になって世界ランキング1位(当時)の樊振東、リオデジャネイロ五輪2冠の馬竜ら中国のトップ選手を次々に撃破した。「こんなに早いタイミングで勝ててびっくりしている」。そのたびに率直な気持ちを口にした。

両親は中国出身の元卓球選手で、母の凌さんは同国代表に選ばれた経験を持つ。才能を受け継いだ張本のボールタッチは柔らかい。前陣速攻型でミスなく強い球を打ち、技術が必要なストレートへのコース変更も自在。同じように台の近くでの高速ラリーを得意とする樊振東でさえ「コースの変更がとてもうまい」と舌を巻いている。

のみ込みが早く、技術の幅をどんどん広げている。日本男子の倉嶋洋介監督は「1のことを言ったら、そこから広げて3を返してくる」と表現する。3月のカタール・オープンでウーゴ・カルデラノ(ブラジル)に敗れた後、相手がトスを高く上げて繰り出した「投げ上げサーブ」に着目して自主的に練習。6月のジャパン・オープンでの馬竜戦では、そのサーブで意表を突いて勝利を引き寄せた。

フォアの力強さはまだトップ選手に及ばず、台から少し離れて打つ際のフットワークにも課題がある。今後、中国勢が徹底的に研究をしてくることも予想され、張本は「常に勝ち続けられるようにしたい」とかぶとの緒を締める。

15歳にとって残り2年は、表彰台を狙うトップ選手へと進化を遂げるには十分な時間だろう。小学生の頃から公言してきた「東京五輪で金メダル」は現実味を帯びている。

◇積み重ねる経験と実績=16歳伊藤、トップの自覚―スポーツクライミング
東京五輪の実施競技となったスポーツクライミングで、女子の伊藤ふたば(16)=TEAM au=がトップ選手としての存在感を示している。6月に盛岡市で開催されたコンバインド・ジャパンカップで2位。東京五輪と同じボルダリング、リード、スピードの3種複合で争う新設大会で結果を出した。「五輪に向けて3種目でやることに慣れないといけない。良い経験にしていきたい」
岩手県出身。趣味としていた父に連れられ、小学3年から競技を始めた。長い手足と柔軟性が持ち味で、14歳だった昨年1月のボルダリング・ジャパンカップでは最年少優勝を達成。今年の同大会でも3位となるなど、コンスタントに好成績を残し、五輪を目指すアスリートに仲間入りした。

年齢制限をクリアした今季からはワールドカップ(W杯)にも参戦。6月に東京・八王子で行われたボルダリング第5戦では、初めて決勝に進んだ。6人で争う決勝は6位となったが、「今年は初めてなので、一戦一戦全力で。大会ごとに学ぶことも多いし、たくさんあるのでいっぱい吸収する」。海外を転戦し、学業との両立に難しさも感じながら、着実に経験を積んでいる。

2年後に迫った東京五輪については「初めての五輪でまだイメージはできていない。でも3種目をどんどん強化していって、出場はしたい」。日本は女子にベテランの野口啓代や野中生萌(ともにTEAM au)、伊藤より若い14歳の森秋彩(茨城・手代木中)ら有力選手を抱えるスポーツクライミングの強豪国。18歳で大舞台を迎えるであろう期待株が、激しい競争の中で成長を誓う。

◇飛躍誓う若き王者=体操・谷川翔、2年後へ台頭
10代最後の今春、体操男子の谷川翔(19)=順大=は喜びと悔しさとをかみしめた。4月の全日本選手権個人総合で、内村航平(リンガーハット)の連覇を10で止め初優勝。しかしその後の大会では演技失敗が響いて世界選手権(10月開幕、ドーハ)代表を逃した。「終わったことはしょうがない。昨年に比べれば自信もつかめた」。前向きな気持ちで2年後に向かっている。

昨年までの苦しみを糧にした。千葉・市船橋高3年だった2016年に全日本選手権個人総合で10位と健闘。慢性的に抱える手首や腰の痛みが影響し、昨年は思うような成績を残せなかったが、「練習方法を見つめ直して、量をこなすより質のいい練習を心掛けるようになった」。痛みが引いた今年、強みでもある演技の美しさを試合で存分に発揮できるようになり、一気に花開いた。

しかし、5月のNHK杯は優勝を目前にした最後の鉄棒で落下。全日本種目別選手権でもゆか決勝で尻もちをつくなど、普段は考えられないミスがあった。「最後の場面ではこんなにプレッシャーがある、と経験ができた」。成長の試練と受け止めた。

今は8月開幕のアジア大会に向けて集中している。完成度の高い流れるような演技は、アテネ五輪団体総合金メダリストで順大コーチの冨田洋之氏も評価しており、「今の演技の質を維持しながら、これからはDスコア(演技価値点)を上げてほしい」と期待する。29歳の内村を継ぐオールラウンダーとして期待を背負う19歳。東京五輪での飛躍を目指し「前までは間に合うのか不安があった。今は(五輪)代表が近いところまできている。もっと強くなりたい」と言い切る。