千葉市   財政が危ない自治体ほど”自前主義”の矛盾

千葉市   財政が危ない自治体ほど”自前主義”の矛盾

 

東京から発想するだけでは、問題は解決できない。いまこそ地方の発想が必要だ。雑誌「プレジデント」(2018年4月30日号)では、地方から改革を進める4人の首長に、「いま必要な人材」について聞いた。第3回は千葉市の熊谷俊人市長。テーマは「先見性」だ――。(第3回、全4回)

 

■危機的状況だった財政を17年度で健全化

2017年、3度目の当選を果たし、任期9年目に入った千葉市の熊谷俊人市長。その優れた経営者的手腕は全国に20ある政令指定都市の中でも突出している。数々の新事業や行政改革を行い、就任時は危機的状況だった財政を17年度で健全化した。そんな中で今、地方公務員に求められる条件は「時代の変化に敏感であること」だと明快に語る。

「今はむしろ公務員のほうが会社員よりもすばやく社会の変化に対応しなければなりません。特に都市計画を考えたとき、行政が取り組んだものが現れるのに10年、20年という長い年月がかかる。だからこそ、その20年後に社会全体がどうなっているかを先読みする必要があるのです」

AIや車の自動運転が普及したとき、道路はどうなるのか、公共交通はどうあるべきか。まちづくりのビジョンを描くには、いち早く新しい技術に接触する積極性が求められる。今なら自動運転について知るために自動車メーカー主催のカンファレンスに参加するなど、通常の職務を超えて動くことも必要だ。

「従来の地方公務員は、既定路線をどう改良していくかが基本的な仕事でしたが、これからは未来像から逆算して施策を展開していくことも重要です。そして、官民の境界線がなくなりつつある今、いかに民間に対して公共分野の門戸を開きコラボレーションするかということも大切になってきますね」
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国の特別史跡に指定された加曽利貝塚。縄文文化を体験できる日本最大級の貝塚遺跡。
■当初、市職員は民間コラボに積極的ではなかった

千葉市は首都圏にあってビジネスチャンスに恵まれた環境。それを活かし、民間企業とともにいくつもの事業を立ち上げて、大きな成果を挙げてきた。

「これから千葉競輪場を国際レースが開催可能な多目的アリーナとして建て替える予定です。これには運営委託する民間企業に70億円の建設費を負担してもらいます。また、稲毛海浜公園のビーチも、市で白い砂浜を作りウッドデッキを設置するというインフラは整備しますが、その場所で民間企業にビジネスをしてもらい、長期的な維持コストを下げる計画です」

官民がWin-Winとなるコストカットの手法。しかし、就任当時、市の職員は民間とのコラボに積極的ではなく、抜本的な意識改革が必要だったという。

取材時には国政で財務省職員による公文書改ざんが発覚した。この問題が地方に与える影響についても聞いた。

「私にとってもショッキングなニュースでした。取り戻しつつあった公務員に対する信頼が損なわれたわけですから。行政を預かるということは未来に対する責任があるわけで、歴史に恥じる行為をしてはならないと思います」

公務員のモラルが問われている今、公務員志望者に伝えたいことは何か。

「純粋に社会づくりに関わりたいのであれば、『国家公務員より地方公務員という選択もあるよ』と言いたい。今こそ地方に来てほしいですね。自治体の行政には目の前の人を助けられるという充実感があります。私もそれが楽しくてこの千葉市を選んだのですから」