松戸市  セブン、1万店で挑む「売り場大改装」の勝算

松戸市   セブン、1万店で挑む「売り場大改装」の勝算

千葉県松戸市のとあるセブン-イレブン店舗。一見すると普通の店舗と何ら変わらないが、店内に足を踏み入れると不思議な違和感を覚えた。

コンビニの定番である雑誌コーナーのスペースが縮小されている一方で、冷凍食品を収容する巨大なオープンケースを2台も設置。中にはギョーザなど定番アイテムにとどまらず、「かつ煮」や「グリル野菜」など食卓を彩りそうなアイテムがずらりと並ぶ。品ぞろえは “スーパーさながら”といった様子だ。
■ここ数年で変わった消費者ニーズ

この店舗はセブンが2017年から導入を進めている新レイアウト店舗だ。冷凍食品売り場の拡張に加え、レジカウンターの長さを従来の店舗の1.5倍にすることで、揚げ物などの総菜類やカフェマシンを充実させた。

全国約2万店のうち、新レイアウトの導入店舗数は2018年5月までに1600店になった。新店は基本的に新レイアウトを導入し、既存店についても2021年度までに1万店で新レイアウトを導入する。セブンがここまで大掛かりなレイアウト変更に踏み切るのは、1973年に創業して以降初めてのことだ。
背景にあるのが、消費者ニーズの変化だ。かつては男性が客層の中心だったが、働く女性や高齢者の増加で、コンビニにおける買い物のシーンはこの10年ですっかり様変わりした。中でも特徴的なのが、中食需要の増加だ。2006年と2016年の品目別売上高を比較すると、冷凍食品は約5倍、カウンター商品は約2.5倍に増えた。

セブンが実施した消費者へのグループインタビューやWeb調査によると、コンビニの冷凍食品はスーパーの冷凍食品と比べて購入してすぐ、あるいは1~3日後までには食べる人が圧倒的に多いという。ただ、売られている冷凍食品はギョーザやチャーハンといった単品商品ばかりではない。目下、セブンが力を入れるのが料理の時短につながる“お助け商材”だ。
セブンの商品本部で総菜や冷凍食品を担当する岡田直樹・シニアマーチャンダイザーは「冷凍食品をそのまま食卓に出すのには心理的に抵抗があるという人が多い。たとえば生鮮食品をカットし調理するという手間を省く商品を考えた」と話す。

■冷凍食品の取扱品目は1.5倍に

具体的にはベーコンほうれん草、肉入りカット野菜といった組み合わせの冷凍野菜や、いちごやブルーベリーなどの冷凍果実だ。冷凍野菜はオムレツやグラタン、パスタの具材として活用されているほか、冷凍果実もヨーグルトや炭酸水、酒に入れるなど幅広い使われ方をしている。

新レイアウト店では扱う冷凍食品のアイテム数は約80品と、通常のセブン店舗と比べ1.5倍に上る。導入店舗では「特に子ども連れの女性が増え、冷凍食品の売り上げが増加した」(松戸常盤平駅前店の西山靖彦店長)。

ただ今回のレイアウト変更の狙いは、単に中食需要の増加に対応することだけではない。そこには業界トップのセブンが抱く危機感も垣間見える。

”一強多弱”といわれるコンビニ業界では、長年、店舗数や日販(1日当たり1店売上高)でセブンが競合他社を圧倒してきた。2016年9月にサークルKサンクスがファミリーマートとブランド統合を果たしたことで、店舗数でこそファミリーマートが猛追しているが、日販の差は相変わらず縮まらない。
セブンの全店平均日販は65.3万円(2017年度)と、ローソンの53.6万円(同)やファミリーマートの52万円(同)に10万円以上の差をつける。ただ、セブンは自らのピークである2011年度の66.9万円を抜けずに、ここ数年横ばいが続いているのも事実だ。全店日販では70万円の壁をなかなか越えられない。

■セブンの日販は横ばいが続く

セブンとしては、中食を強化することで、スーパーやドラッグストアから客を奪い日販を増やす構えだ。実際、今回のレイアウト変更で約1.7万円(新レイアウトに改装後10カ月経過した店舗の5月度の実績)の押し上げ効果があったという。冷凍食品を筆頭に、総菜などの売り上げが伸びた。
さらに、セブンをはじめとするコンビニは、人手不足や人件費の上昇により加盟店の負担が増している。力を入れる総菜などのカウンター商品や保存の利く冷凍食品は、いずれも利益率の高いカテゴリーだ。新レイアウトの導入で、日販に加え、粗利も増やしたいという思惑もあるだろう。

ある競合関係者は「これまでのレイアウトは店内での買い回りを緻密に計算したものだった。新レイアウトはデイリー品や冷凍食品の売り場とその他の日用品、酒類などの売り場が左右に分断された印象があり、”ついで買い”の誘発はしにくいのではないか」と指摘する。
コンビニ業界のガリバーは、新レイアウトへの転換効果を最大限に生かすことで、今後の成長を確かなものにできるか。