「絶対にほしい」プロが目の色変えた金足農・吉田輝星

「絶対にほしい」プロが目の色変えた金足農・吉田輝星 注目進路は「八戸学院大」「楽天」

人生が激変した。今大会に彗星のごとく現れた金足農(秋田)の吉田輝星(こうせい)投手(3年)は、21日の決勝で大阪桐蔭(北大阪)に打ち込まれ5回12安打12失点。今大会で初めて途中降板し、チームも2-13で敗れ東北勢初優勝を逃した。しかし最速150キロをマークし、甲子園6試合計881球、秋田県大会を含めると通算11試合1517球の熱投で一気にスターダムにのし上がった吉田をめぐり、大会前は「大学進学確実」とお手上げだったプロのスカウトたちが、「絶対にほしい逸材」と目の色を変えている。

「ここで優勝したかったですけど、この負けはこれからの野球人生で取り戻していきます」

吉田は敗戦後、そう言い切った。

相手の大阪桐蔭は1位候補3人を含めドラフト候補生6人を抱えるエリート集団。エースの柿木蓮(3年)の投球には「気付けば(ボールが)目の前にあって通り過ぎていた。今まで対戦した投手で一番すごい」と脱帽。5回には根尾昴(3年)にバックスクリーンへ2ランをたたき込まれ「打たれた瞬間、入ると思った。完璧にとらえられていた」と力の差を痛感した。「実際に戦ってみて(すごさが)わかった」

一方で、疲労困憊での決勝ではなく、「できるなら初戦から当たりたかった」というのも偽らざる本音だ。

進路については「まだ考えていないですけど、野球は続けます。もっと上のレベルで戦いたい」と明言。柿木や根尾へのリベンジの場として「できるならプロで」との発言も飛び出した。

大会前までは「進学」が濃厚だった。2年生のころから青森県の八戸学院大学(北東北大学リーグ)の正村公弘監督(54)の指導を受けて成長した恩義から、同大への進学が鉄板視されていた。

プロ側の反応も「プロ志望届さえ出してくれれば、ほしいんだけど…」(某球団幹部スカウト)という程度だった。

しかし、今大会の急成長で目の色が変った。別のスカウトは「言っては悪いが、東京六大学や東都の強豪ならまだしも、北東北大学リーグは吉田の力量を磨くのに適したレベルではない。本人も今大会の活躍で、プロでやれる自信をつかんだと思う」と断言する。

日本ハムの山田スカウト顧問は吉田を「文句なしの大会ナンバーワン」と最大級に評価。

「真っすぐは現時点で最速150キロだが、もっとスピードは伸びるだろう。打者の手前でホップするような球の質が素晴らしい。制球力と変化球もまとまっているし、フィールディング、牽制の技術も高い。全体的なパッケージで見て今年の高校生では1番。(ドラフト会議では)1位で消える」と断言した。

横浜DeNAの吉田スカウト部長兼GM補佐は「走者のあるなしや、相手打者の力量をみて力が加減できる。先発投手として必要な能力を備えている」とほれこむ。

同じ秋田県出身(秋田工OB)で元中日監督の落合博満氏も「1人で6試合投げてバテバテだっただろう。12点取られても評価が下がるわけではない。見た中ではドラフト1位。オレが監督なら(獲得に)いく。一級品の投手ですよ」と絶賛。吉田をめぐる状況はプロへ加速しているようにもみえる。

吉田の父、正樹さん(42)はこの日、「進路について話すのは控えさせてもらっています」と口をつぐんだが、12日には夕刊フジの取材に「(吉田の幼少の頃からの)夢はプロ野球選手」「楽天の則本昂大投手に憧れているみたいです」と明かし、「親としては、近くの球団だと(応援に)行きやすいので助かりますけどね」と地元の楽天に好感を抱いていることを示唆した。

また、本人に海を渡る意思を問うと、「メジャー? メジャーリーグですか? それはわからないですね…」と目を丸くしたが、もはや大リーグから声がかかってもおかしくないレベルだ。

ちなみに、遊撃手を中心に投手、外野手もこなす“多刀流”の根尾はこの日、「プロ野球に入りたい。両方やってきましたが、ショートかなというのはある」と野手一本に絞る意向を示した。岐阜県出身だけに早くも中日が1位指名候補としてリストアップ。大阪桐蔭で4番を張った藤原恭大外野手(3年)も複数球団から高い評価を受けており、「上の世界でやりたい。トリプルスリーが目標」とぶち上げた。

吉田は「第12回U18アジア野球選手権大会」(9月=宮崎)に出場する高校日本代表に根尾、藤原、柿木らとともに選出された。

「日の丸を背負って戦いたいと思っていた」という吉田は、大阪桐蔭勢と今度はチームメートとして過ごし語り合う中で、プロへの思いを新たにするかもしれない。