松戸市 閉店相次ぐ地方百貨店、復活への「特別」
いろいろではなく
地方百貨店が苦しんでいる。今年に入り西武小田原店(神奈川県小田原市)、伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)、丸栄(名古屋市中区)が相次いで閉店。九州・沖縄の百貨店で唯一東京証券取引所第1部に上場している井筒屋も、北九州市内と山口県宇部市の3店舗の閉鎖を決めた。大都市への一極集中やインターネット通信販売の拡大など理由はさまざまだが、業界が団結して解決策に向き合わなければ先細るばかりだ。
井筒屋は2019年5月末までにJR小倉駅前、同黒崎駅前、宇部市の店舗を閉める。3店舗合わせた18年2月期売上高は260億円と連結売上高の30%に達するが、同2月期まで9期連続減収が続く。主要商圏の北九州市と周辺地域の人口減や福岡市への顧客流出に歯止めがかからず、今後も収益改善が見込めないと判断した。今後本店と山口店に経営資源を集中する。
日本百貨店協会(東京都中央区)によると、17年の全国百貨店売上高は前年比微増の5兆9532億円。一部を除く大都市部は比較的堅調だが、それ以外の地方都市は北海道から九州まで全地域が低迷している。利便性の高いネット通販や、駐車場を完備した郊外型大型商業施設が人気で消費者がシフトしているにもかかわらず、百貨店業界は単一店舗に高額衣料品から食料品まですべてをそろえる旧態依然スタイルを変えていない。
北九州市は人口95万人。高齢化は進むが、近隣市町村を合わせた商圏人口はいまだ150万人とも200万人とも言われ、地方都市では恵まれた環境にある。若者離れは深刻だが、複数店舗で大都市と同等の品揃えを無理に続けたことも不振の遠因とも言えるのでないか。
百貨店は今後、高級・贈答品や物産品などを吟味したセレクトショップとしてサービスを訴求しつつ、同業他社と商品開発で連携し、“金太郎あめ”ではない地域の特徴を生かした新たなビジネスモデルを確立することが求められている。目が肥えた消費者は百貨(いろいろ)ではなく、「特別」を欲しているのを忘れないでほしい。