市川市
「動かなくなっても水かけた」千葉・市川の自立支援施設で管理人の女、入居者暴行死の
平成29年8月、千葉県市川市の自立支援施設で入居者の川久保儀子(のりこ)さん=当時(84)=が暴行を受けて死亡した事件で、暴行と傷害致死罪に問われた元施設管理人、生田玲子被告(56)に対する裁判員裁判が千葉地裁(楡井英夫裁判長)で開かれている。生活に困窮する女性が共同生活を送る施設で起きた事件。法廷では、生田被告が繰り返した凄惨(せいさん)な暴行と、入居者に対する横暴が明らかになった。
生田被告は今月11~13日、3日間の審理にいずれも白い七部袖シャツで出廷。黒縁眼鏡をかけ、髪の毛を後ろで丸くまとめていた。まさに「真面目」といった印象だったが、法廷で語られた犯行の一部始終は、そんな風貌から想像できない執拗(しつよう)なものだった。
生田被告が川久保さんを死亡させた事件の顛末(てんまつ)はこうだ。平成29年8月27日夜、施設の食堂で川久保さんに腹を立てた生田被告は川久保さんの顔をビンタ。居合わせた他の入居者にボウルに水をくませ、約1時間、川久保さんに水をかけ続けた。川久保さんの自室でも、川久保さんの顔に布団をかけて鼻や口をふさぐなどの暴行を続けた。川久保さんが動かなくなると、入居者を呼び、さらに水をかけさせた。その後、川久保さんを残し、部屋の外から南京錠を掛けた。
翌28日午後、入居者数人が近くの交番へ通報。警察官が駆けつけ、川久保さんの部屋を開けるよう求めると、生田被告は「川久保さんは外出中」と拒否。不審に思った警察官が鍵を壊すと、室内で亡くなった川久保さんが見つかった。
事件を目撃していた元入居者の女性(44)は証言台に立ち、川久保さんが亡くなった夜、「警察に電話をかけたかった」と振り返った。弁護人が「なぜ電話しなかったのか」と問うと「生田さんに怒られるのが怖かった」という。「普段から『生活保護を停止するぞ』と言われていた」といい、生田被告が虚偽の内容で入居者を脅していたことが明らかになった。
生田被告は入居者の間から「寮長」と呼ばれていた。川久保さん以外にも気に入らない別の入居者の女性(65)に暴行していた。脅迫に暴行-。入居者は生田被告に弱みを握られ、おびえて共同生活を送っていたようだ。
一方、弁護側は「生田被告は入居者のトラブルで強いストレスを抱えていた」と弁明。川久保さんは平成29年6月の入居以来、「近隣からほぼ毎日クレームが寄せられた」。施設内でもトラブルは絶えなかった。問題が起こる度、生田被告が対応を迫られた。川久保さんを叱責しても、聞く耳を持たなかったという。
川久保さんを死なせた日は、施設で大掃除があったが、川久保さんは参加しなかった。川久保さんの部屋は生ごみが放置され、コバエが湧くほどだった。仕方なく川久保さんの代わりに掃除した。
その日の夕食時間、禁止していたサンダルを履いてきた川久保さんを見て、怒りが頂点に達した。押し倒して暴行した。
「事件の被害者の方に心より申し訳なく思います。どのように謝罪してよいのか分かりませんが、反省しています。今後は前を向いて真摯(しんし)に罪を償おうと思います」。最終陳述で生田被告は涙をすすりながら述べた。
検察側は生田被告に懲役10年を求刑。一方、弁護側は「犯行は被告の強いストレスによるもの」と懲役3年が相当と主張した。判決は20日に言い渡される。
一部始終