千葉市  第60次南極観測隊

千葉市

【南極隊員に聞く】(中)通信担当・里中俊大さん(千葉市) 15年越しの夢がかなう

千葉市花見川区の里中俊大さん(44)は、第60次南極観測隊(堤雅基隊長)の越冬隊員(通信担当)として、11月に日本を出発する。現在は国立極地研究所(東京都立川市)で準備に追われる日々。「15年来の希望がかなった」という里中さんは、責任の重さを感じながらも、憧れの極地に思いをはせている。

生まれ育ちは広島県。父親に影響され、子供の頃から無線が大好きだった。小学生でアマチュア無線免許を取り、交信や無線機の分解などを楽しんだ。同じ頃、地元の呉に入港した南極観測船「しらせ」を見学した記憶もある。

高校卒業後、就職した郵政省中国電気通信監理局(現総務省中国総合通信局)が越冬隊員を派遣していると知り「行きたい」と思った。希望する職種の隊員に必要な資格を持っていなかったため、仕事の合間に猛勉強を重ね、陸上無線技術士の免許を取得した。

ところが、その後は人事異動などもあって観測隊への参加を希望するタイミングに恵まれなかった。今回、関東総合通信局勤務で単身赴任中に南極行きを打診された。「希望者がいなかったため自分にオファーがあった」といい、15年来の願いは思いがけない形でかなった。

通信担当は、昭和基地を離れて野外観測に出かけた隊員との無線交信や機器のメンテナンスを行う。「無線機の不調で交信できないのは許されない。緊急事態では命に関わる」と気を引き締める。「予備の機器が壊れることを考えると怖い」と懸念するものの「過去のトラブル記録を参考に対処方法を整えて必要な部品、資材を持ち込み、万全な備えをしたい」と話す。

普段は無線局の許認可事務や電波監視の業務などに携わっている。極地の仕事とは全く異なるが「元々はアマチュア無線好きが高じて入った世界。交信も機械いじりも大好き。昭和基地は古い機械が多いと聞いているので楽しみ」と笑う。

「自分は縁の下の力持ち。回り道をしてここまできた。任務を地味にこなし、隊の仕事が円滑に進むよう尽力したい」との言葉に誠実さがにじむ。

南極での楽しみはアマチュア無線という。「昭和基地のアマチュア無線局との交信は、世界中のマニアにとってあこがれ。できる限り期待に応えたい」と張り切る。同時に、極地の自然を全身で感じたいとも考えている。「飽きるほどオーロラを見たい。そして空気を味わいたい」