千葉市  自然災害続く日本列島

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地震、台風、豪雨…自然災害続く日本列島 企業や会社員が「急ぐべき対策」は?

北海道地震、西日本豪雨、相次ぐ台風被害――。2018年、日本列島は未曽有の自然災害に襲われた。東日本大震災などを受け、企業のBCP(事業継続計画)対策は進んできたが、地震への備えが中心のところが多い。災害対策に詳しいSOMPOリスクマネジメント(東京・新宿)の篠目貴大BCMコンサルティング部長に、多様化する自然災害への対応策について聞いた。

■災害の種別の予測は限界 損害の結果から考える
――今年は様々な自然災害が起こりました。企業からはどんな問い合わせが来ていますか。

「内閣府の調査によると、すでに大企業では6割がBCPを策定しています。政府の地震調査委員会の調べでは、30年以内に震度6以上の地震が発生する確率は、熊本市では8%でしたが実際に発生しました。しかし、(複数のプレートが重なる南関東の)千葉市や横浜市では80%以上ですがまだ起きていません。広域で予期しない甚大な被害が出るのは地震なので、地震対策が主軸です」

「一方、まさか大雨で洪水となり、何人もの方が亡くなる大災害に発展するというところまでは想定していない企業がほとんどです。特に西日本豪雨の後は水害についての対策についての問い合わせが増えています」

――想定外のことばかりですが、企業はどんな対策をすべきですか。

「もし地震を主軸にすでにBCPを策定しているなら、それを水害に応用することをやるべきでしょう。水害については、例えば台風だと数日前からどういう進路をたどるかが予測できます。西日本豪雨のときも前日に気象庁から『数十年に一度の災害が起こる可能性がある』と警戒のメッセージがありました。予知しにくい地震に比べると対策はとりやすいと思います」

「とはいえ、様々な災害を想定して対策を考えるのは限界があります。また、大きな台風がきたとして、洪水になるかもしれないし、空港の設備が破損するかもしれないし、結果として何が起こるかは予測しきれない。ですから、『もし何らかの事情でこの工場が使えなくなったら』『部品が供給されなかったら』と、企業に与える損害の結果からケーススタディーをすることが必要でしょう」

「BCPとはビジネスの継続です。もし工場が動かないのなら代替手段を考える必要があります。別の工場でも作れるようにするならば、どんな生産設備が必要か、部品の供給ができるか、その工場は認証がとれているのか、といったことを考えます。BCPの見直しはもちろん、訓練することが重要になってきており、当社にもどのように訓練をすればよいか問い合わせが増えています」

――具体的にどんなことをするのですか。

「避難訓練ではなく、実際に災害対策本部を設置し、大地震が発生したとして、どんな手順で情報を収集し、社員に指示を出していくかという一連の流れをやってみます」

■訓練で課題の洗い出しを
「訓練をやると何がいいか。いざというときに動けるようにする狙いもありますが、課題を洗い出すことができます。別の工場で代替生産するといったプランを考えていたとしても、もし国道が使えずに輸送ができなかったらどうするか、サプライヤーの工場で火災が起きていたらどうするかなど、色々な穴が見えてきます」

――訓練をするときに気を付けるべきことは。

「まず安否確認や生産状況などの情報収集・共有が第一ステップになりますが、様々な情報が入りますので、優先順位付けが重要になります。訓練で『A工場に津波が襲来したようです』という情報を入れたとしても、他にも色々な情報が入ってきますから対処の順番などが混乱し、人命の優先がおろそかになってしまった例もあります。また、情報が集まってきても整理しきれず、責任者が対応を決められないこともありました。情報整理の甘さは対応の遅れにつながります」

「情報の伝達ルートを一元化して周知しておくことも大事です。取引先にはどの部署から連絡するのか、誰を連絡役にするのかといったことです。例えば元工場長が心配になって勝手に工場に電話をしてしまったという事例も現場ではよくあるそうです」

――災害対策を進めた結果、経営の改善にもつながったという話も聞きます。

「中小企業で多いようです。ある段ボール工場では各生産ラインの担当者を固定して決めていたのですが、災害時には誰か出勤できない可能性があります。そこで、他の従業員でも代替できるように見直したところ、繁忙期に効率よく従業員が動けるようになり、売上が増えたということがあります」
■会社のルールをあらかじめ確認
――会社員個人が気を付けることは何でしょうか。

「会社から家への帰宅経路はもちろん、会社のルールも知っておくべきです。どういう事態になれば自宅待機なのか、出先だった場合にどうするかなどのルールです。もし対策が十分ではないと思ったら組合を通じてルールを整備してもらうことも必要かもしれません」

「最近は共働きの夫婦が増えています。保育園や学校で災害伝言ダイヤルの使い方などを案内しているところも多いですが、家族の安否確認でどの方法を使うかをあらかじめ決めておけば、いざというときに素早く行動できます」

――会社側も社員の安全を守るルールは見直しが必要そうですね。

「実際に東日本大震災の後には、社員の安全をきちんと確保していたのかという点でいくつかの訴訟が起きました。例えば海沿いで定期的に仕事がある会社では災害時のマニュアルがあったのか、周知していたのか。明確なルールがない場合、敗訴の可能性が高まるのは言うまでもありません」