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【FACEちば人物記】千葉市近現代を知る会・市原徹代表(71)

 

■戦後の建築物、記録保存に尽力

千葉市稲毛区小仲台。現在の小仲台2、3、4丁目と呼ばれている町は、市原さんによると、戦後全部の地域が千葉市小中台町850番地という地番を使っていたという。

この町にある建築物の歴史を記録保存し、後世に残すため今年7月に発足した市民グループ「千葉市近現代を知る会」。地域の郷土史家として建築士や歴史好きな11人の地元会員らの先頭に立ち、歴史的背景などの調査研究を行っている。

6年前から調査を進める市原さんは一級建築士の資格を持ち、これまでに「千葉市小中台町850番地の歴史『陸軍防空学校と戦災復興公営住宅があった町』」などの報告書をまとめたほか、市民を対象にした講演会も行う。

会では毎月、定期的に近くの公民館で勉強会を開催している。市原さんは会員とともに「千葉市史に記載されていない、昭和の戦前から戦後にかけての歴史を少しずつ調べていきたい」と意気込みを語る。

小学校1年生までの約7年間、小中台町に住み、同じ建築士だった父親・隆夫さんの転勤で東京・池袋へ。引っ越し先の住居と比べ、小中台町の住居は天井がなく屋根の裏側が見える住宅だった。「父親とはたまたま、同じ職業になっただけ。建築のことをやってきて、小さな頃の記憶が残り、あの住宅は一体どういう建築物なのかという興味があった」という。

30年前に現在の居住地に戻り、当時の住宅を調べ始めた。資料がなく町内のお年寄りの話を聞きながら、平面図を再現し、戦災復興住宅の模型を制作した。

「小中台町には、大きな範囲で陸軍防空学校があった。そこに戦後、戦災者、引き揚げ者のための住宅ができた。珍しい住宅だと思いましたね。住宅営団が千葉だけでなく全国に造ったんですよ。ますます建設の背景が知りたくなった」と語る。

会結成の目的の一つには、昭和17年4月に千葉市弥生町に開学した東京帝国大第二工学部(現在の千葉大キャンパス)の古い木造校舎の学術的な建物調査などもある。所有者は東京大学。昨年3月に閉場した東大生産技術研究所千葉実験場の中に2棟たたずむ。跡地利用が検討され、歴史的建物の木造校舎は解体される可能性があるという。

市原さんは「地元の歴史に興味を持つ会員がいて、古い木造校舎があると教えてくれた。3年前に年に一度の公開日に見に行って本当にあるんだと非常に驚きましたね。建築士としても歴史的にすごいなと。立派な建物ではなく、ただ、戦時中に国をあげて、軍のバックアップがあってやった国家プロジェクト。調べることは歴史的に意味がある」という。

「建物の保存をすることは、なかなか難しい」と語る市原さん。そして「まず記録として残すこと。何があったか、ほとんど知られていない。それをちゃんとやってもらいたいと要望している。記録を取れるような体制ができるように望んでいる」と力強く話す。(平田浩一)

【プロフィル】市原徹

いちはら・とおる 昭和22年、千葉市小中台町(現在の稲毛区小仲台)生まれ。東京都立大工学部建築学科卒。高齢になった親のため、東京から現在の居住地に戻り、2世帯住宅を建設。趣味は建築史・地域史研究。建設設計「六葉舎」代表取締役。一級建築士。