2040年、日本は「男性のタバコと肥満」で“長寿大国”トップから陥落する

2040年、日本は「男性のタバコと肥満」で“長寿大国”トップから陥落する――米ワシントン大学の最新研究

2040年にはスペインの平均寿命が日本を上回る――。

米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)が10月16日に発表した論文が、世界中で話題を呼んでいる。2040年には、世界最高の平均寿命を誇る「長寿大国」として知られた日本が首位の座から陥落し、スペインと入れ替わるというのである。

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日本首位陥落の原因は「男性のタバコと肥満」
同論文によると、世界の平均寿命(2016年→2040年)は、調査の対象とされた世界195カ国・地域のうち116カ国・地域で大きな伸びを示すという。とりわけ、日本・シンガポール・スペイン・スイスの4カ国では平均寿命が85歳を超える。

論文は、世界各国で長寿化を妨げる最も大きな要因は、「肥満」「高血圧」「血糖」「喫煙」「飲酒」の5つであることを指摘。

スペインが首位を奪い日本が陥落する理由については、一連の調査分析を率いたワシントン大学のクリストファー・J・L・マレー博士が、英ガーディアンの取材に対し、「日本人男性の行動が平均寿命の伸びに悪影響を及ぼす。喫煙がそうだし、肥満も男性だけ増えている」と答えている。

“【平均寿命が85歳を超える国】
スペイン 4位(82.9歳)→1位(85.8歳)
日本 1位(83.7歳)→2位(85.8歳)
シンガポール 3位(83.3歳)→3位(85.4歳)
スイス 2位(83.3歳)→4位(85.2歳)”

一方で、中央アフリカ共和国とレソト王国(アフリカ)では60歳以下にとどまる見通しだ。2040年に至っても、平均寿命ランキングの150位以下は、アフリカ諸国と中米諸国でほぼ占められると予想されている。

“【平均寿命が60歳を下回る国】
中央アフリカ 195位(50.1歳)→194位(58.4歳)
レソト 194位(50.4歳)→195位(57.3歳)”
「地中海の食生活」が寿命に好影響
平均寿命で見た2040年の世界地図は、下位こそあまり変化はないものの、中上位では大きな「下剋上」が起きる。平均寿命の伸びが特に著しい国・地域の例を、以下に挙げておこう。

“【順位が15位以上躍進する国】
ポルトガル 23位(84.5歳)→5位(86.6歳)
ルーマニア 83位(75.1歳)→46位(80.9歳)
ラトビア 86位(75.0歳)→66位(79.7歳)
ハンガリー 73位(75.7歳)→57位(80.2歳)
ブルガリア 85位(75.1歳)→52位(80.3歳)
スロベニア 27位(80.8歳)→14位(83.9歳)※上位が同順2カ国のため
マレーシア 75位(75.6歳)→60位(79.9歳)
インドネシア 117位(71.7歳)→100位(76.7歳)
ブータン 96位(73.8歳)→81位(78.6歳)
ネパール 124位(70.9歳)→99位(76.8歳)
サウジアラビア 61位(77.0歳)→43位(81.2歳)”

世界首位となるスペインに加え、同じ地中海沿岸のポルトガルでも平均寿命が大きく伸びる。両国の躍進の理由について、論文は「食(栄養)の影響が最も大きい」としている。

冷戦下で内戦が頻発するなど経済停滞と政情不安が続いた東欧・南欧諸国では、平均寿命が軒並み5歳前後伸びると予測されている。また、地道な経済成長を続けてきた東南アジアや南アジアの開発途上国でも、2040年にかけて平均寿命が75歳を超える見通しとなっている。

中国は今日の日本並みの高齢化社会に突入
ほかに注目すべき順位変動は以下の通りだ。

“【注目すべき順位変動】
北朝鮮 125位(70.8歳)→153位(72.1歳)
パレスチナ 114位(71.9歳)→152位(72.2歳)
シリア 137位(68.2歳)→80位(78.6歳)
インド 135位(68.6歳)→129位(74.5歳)
ロシア 123位(71.0歳)→116位(75.6歳)
アメリカ 43位(78.7歳)→64位(79.8歳)
中国 68位(76.3歳)→39位(81.9歳)”

北朝鮮やパレスチナといった紛争地では、平均寿命の伸びが鈍化する。ただし、同じ紛争地でもシリアでは2040年までに約10歳平均寿命が伸びると試算されている(論文には、昨今の内戦の影響で数字が下振れする可能性があること、近い将来に内政再発の可能性もあり正確な予測は困難であるとの記述がある)。

人口や経済の規模から超大国とされるアメリカ、ロシア、インドでも平均寿命は大きく伸びるが、特に注目すべきは中国だ。2040年の平均寿命が約82歳と、今日の日本に匹敵する高齢化社会の到来が予想される。このことが世界経済にどんな影響を及ぼすのか、今後も目が離せない。

※なお、上記の見通しは「ベースライン・シナリオ(reference scenario)」に基づくものであり、気候変動や伝染病の蔓延などの不確定要素、あるいは医療・保険などの革新的な進歩によって上振れもしくは下振れの可能性があるとされている。