快晴の日本海で水中翼船の旅を楽しんでいた乗客は、一瞬でパニックに陥った。9日昼すぎ、佐渡汽船ジェットフォイル「ぎんが」が新潟県佐渡市の両津港近くで海洋生物とみられる異物に衝突し、80人が負傷した。
衝突現場はあと20分ほどで佐渡島の両津港に着く洋上。通常は最大時速80キロ近くだが、衝突時は65キロ程度まで減速していたという。衝突後、「ぎんが」はいったん停船したのち自力航行し、約1時間10分後に港に到着。乗客らは岸壁の臨時救護所で手当てを受けた。
1階客室の座席に座っていた佐渡市の男性によると、衝突の瞬間、シートベルトが胴体に食い込んだ。周囲では、顔から血を流した乗客のうめき声、子どもの泣き声がこだましたという。救護所から歩いて出てきたこの男性は、腹部を押さえながら「まだ痛みます」と顔をゆがめていた。
2階客室の座席で寝ていた東京在住の大学院生は、佐渡市の実家に帰るところだった。「むち打ちのような痛みがあります。衝突直後の船内はパニックでした。船内放送でなにか説明していたが、よく覚えていません」と青ざめていた。
救護所に座りながら赤ちゃんを抱いていた母親は「子どもが頭を打ってしまいました」と不安そうな表情だった。軽傷の乗客らは腰をさすったり、鼻血で赤くなったタオルを顔にあてたりしながら、ターミナル内の特別室に向かった。
島の玄関口は、乗客を搬送する救急車のサイレンやドクターヘリの爆音がこだまして騒然となった。
クジラ