ミサイル実験どころではない!「北朝鮮」が大地震・白頭山噴火で滅亡する日
10世紀には「渤海国」も地震で滅亡?
「北朝鮮に大規模な地震が起きた時、かの国にどのような影響があるのか、しっかりとシミュレーションしておくべきだと思います」――多くの人々とって“盲点”であろう事実を指摘するのは、朝鮮半島研究家として名高い安部南牛氏だ。
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もともと朝鮮半島は地震が少ない国だと、我々は勝手にイメージしていた。だが、それは全く非科学的な妄想だと判明してきている。
北朝鮮の核実験も影響を与えたようだ。例えば時事通信は12月9日、「核実験場付近で『自然地震』=M3.0と韓国気象庁-北朝鮮」の記事を配信した。
記事中には《韓国気象庁は、9月3日の6回目の核実験で「地盤が弱まったことで誘発された自然地震」とみている》との記述がある。とはいえ、北朝鮮で発生する地震の全てが人為的なものかと言えば、そんなことはない。
北朝鮮には白頭山(ペクトサン)という標高2744メートルの活火山がある。韓国の公営放送「KBS」はラジオで9月25日、「北韓の地震 白頭山噴火の可能性も」と報じた。この中で、
《(核実験が地震を生んだことに関し延世大学地質学科教授の)ホン・テンギョンさんは、一連の揺れが中朝国境地帯の白頭山のマグマ層に影響を及ぼし、白頭山が噴火する可能性もあると指摘しました。
白頭山は946年に噴火した記録があります》
と注意を呼びかけている。
もし白頭山が噴火する事態になれば、当然ながら地震も起きる。そして北朝鮮の首都である平壌には、50階を超える高層ビルが乱立している――。安部氏が指摘する。
「7世紀後半から10世紀前半にかけて、今の朝鮮半島北部と、旧満州に渤海という国家がありました。奈良時代の日本と交流したことでも知られていますが、その白頭山が10世紀初頭に大噴火を起こし、滅亡を招いたという研究結果があるのです。白頭山の火山灰は東北地方でも火山灰層として残っています。どれほど激しい噴火だったかを物語っているわけですが、大韓民国を含めて朝鮮半島は地震と無縁だという印象が独り歩きしています。しかし、それは科学的証拠に乏しいということは極めて重要です」
“空洞”の上に立つ高層ビルの恐怖
関心のある方はご存じだろうが、白頭山の噴火は日本でもリスクとして受け止められている。航空網がマヒするほか、農作物への甚大な被害も心配されている。
だが、それ以上に懸念されているのが、北朝鮮に建つビルの安全性だ。17年11月15日に韓国で発生した地震でも、少なからぬ建物が損壊した。耐震基準の甘さと、手抜き工事が原因として浮上している。例えばハンギョレ新聞は11月19日(電子版)社説で「浦項地震で現れた手抜き工事疑惑は徹底調査を」と訴えている。
韓国でもこういう状態なのだから、北朝鮮は更にリスクが高い。地震などが起きていないにもかかわらず、平壌では14年5月、高層マンションが崩壊して多数の死者が出たと報じられた。
報道によると、23階建てのアパートが建設中に崩壊したのだが、ここには92世帯が入居しており、巻き添えを食って多数の死者が出たのだという。安部氏が言う。
「実は平壌は無煙炭の産地として有名でした。石炭と言っても様々な特徴があり、基本的に煙の出る石炭は質が悪く、煙の少ない無煙炭は熱効率が高いことでも知られていました。更に無煙炭は、例えば蒸気機関車などで使えば、沿線住民に煙害の被害が減少することもあり、一種のブランド石炭だったのです。戦前の日本政府は平壌で無煙炭の採掘を大規模に行いましたので、今の平壌には様々な空洞が残されていると考えた方がいいと思います」
大量の難民が押し寄せるリスク
普通の石炭であれば、左右に長い地層として存在することも珍しくないが、無煙炭は局地的な球形の層を成すことが多いという。つまり、採掘してしまえば、そこに大きな穴が残るというわけだ。
「そうした地盤の上に、甘い耐震基準で、手抜き工事の高層ビルが建てられたら、どのような危険性が生じるか言うまでもありません。そもそも北朝鮮に高層ビルを建てられるだけの鉄骨を製造する技術があるとは思えません。中国の製品でも心もとないですが、仮に中国産の品質が日本の耐震基準を満たしているとして、貧乏な北朝鮮に、それだけ質の高い鉄骨を買う余裕があるとも思えません」
昔の北朝鮮であれば、高層ビルが少なかったため、逆説的に耐震性は高かった。高層ビルを建てるようになってから、初めて地震リスクが顕在化したというわけだ。
「やはり大きな地震や、白頭山の噴火が起きると、それだけで北朝鮮という国家が崩壊するという予測シナリオは準備しておくべきだと思います。アメリカが攻撃しなくとも、内部でクーデターが発生しなくとも、大量の難民が海を越えて日本を目指すという可能性を想定しておかないと、いざという時に日本人がパニックを起こしてしまいます」
日本ほど高度に発達したシステムを持つ国家でも、やはり東日本大震災の時にはパニックに陥った。同じことが北朝鮮で起きたなら、何が起きるのか予測もつかない。これこそ文字通りの恐怖だろう。