中途失明原因の第1位 緑内障になりやすい「7つのタイプ」
緑内障は中途失明原因第1位の病気だ。頭痛や吐き気がする場合もあるが、失明直前まで患者に自覚がないケースがほとんどだ。この緑内障が今後の日本で急増する可能性があるという。なぜなのか? 日本眼科医会の眼科専門医で、「清澤眼科医院」(東京・南砂)の清澤源弘院長に聞いた。
緑内障は世界中で見られる目の病気だ。海外でも多くの研究報告があるが、日本では2002年に岐阜県多治見市で行われた緑内障の大規模疫学調査の結果が発表されている。
それによると、40歳以上の20人に1人、70代では実に10人に1人が緑内障であり、その9割が未治療であることがわかっている。
「この多治見スタディーから日本人の緑内障のリスク因子は、加齢、強度近視、家族歴の3つあることがわかっています。10年に超高齢社会(65歳以上が人口の21%超を占める)に突入した日本では、16年には総人口の27.3%が65歳以上となるなど高齢化は進む一方です。ITの普及で目を酷使している人が増え、最新の研究では年をとっても近視が進むことも判明。日本人にとって緑内障は、今後もっとも警戒すべき目の病気なのです」
米国緑内障研究財団のホームページには日本人にも関係するであろう緑内障発症を高めるリスクが挙げられている。
①60歳以上。そうでない人に比べて6倍高い②家族歴。直系家族(父母、祖父母)が緑内障である場合、リスクを4~9倍高める③ステロイド使用者。喘息をコントロールするために約14~35回のステロイド吸入器を必要とする成人の場合、高眼圧症および開放隅角緑内障の発生率が40%増加するとの報告がある④目の傷害。ボールなどが当たるといった以前の目の負傷は外傷性緑内障を引き起こす可能性があり、傷害の直後だけでなく数年後にも起こり得る⑤強度近視⑥2型糖尿病⑦レーシックなどの屈折手術。角膜が薄くなると、眼球内圧が実際より低く測定されることがあり、緑内障が見逃されるリスクが高まる――などだ。
「こうしたリスク因子は大いに参考にすべきです。とくに日本人は、中高年になると2型糖尿病が増えてくるので注意が必要です。合併する目の病気といえば糖尿病網膜症が有名ですが、それが悪化すると、新しい血管が目の虹彩や隅角に生じます。その結果、房水の流れをふさぎ、眼圧が上昇して新生血管緑内障を発症することがあるのです」
■視力・眼底検査だけではわからない
そもそも人が物を見るには、物が発するか物に反射した光が目の中に入り、目の奥の網膜上で像を結ぶ必要がある。その光の刺激に網膜の細胞が反応して電気信号が発生。100万本の神経線維が集まってできた視神経を通って脳の後頭葉視覚中枢へ伝わり、脳で「見た」と認識する。
緑内障になると、眼圧が高くなることで視神経が障害されて神経線維が徐々に減少。欠損した線維が担っていた部分の視野が失われていく。
「眼圧は目の中の水分である房水の量で調節されており、房水は角膜の隅にある出口(隅角)から流れ出ていくようできています。しかし、隅角が詰まったり狭くなったりすると、房水が流れづらくなり、眼圧が上昇。視神経の出口である視神経乳頭が圧迫され、視神経が障害されて視野が欠けていくのです」
緑内障は生まれつき隅角に問題がある発達緑内障の他に、他に原因があって眼圧が上がる続発緑内障、他に原因がない原発緑内障に大別される。原発緑内障はさらに隅角が狭い閉塞隅角緑内障と、隅角が広い開放隅角緑内障に分かれる。日本人を含めたアジア人は開放隅角緑内障が多いとされ、正常眼圧緑内障もそのひとつとされている。
この病気が厄介なのは、早期発見が難しいことだ。ヒトは両目で物を見ているため、片方の視野が欠けても気づかないことが多い。最後まで視力は維持されるので視力検査でも気づかないことが多い。
しかも、日本人は正常眼圧緑内障が多く、眼圧を測っても必ずしも病気の発見に直結しない。緑内障は治療で元通りに視野を回復することはできないが、早期発見、早期治療すれば点眼薬やチューブシャント手術などで進行を抑えることも可能だ。では、どんな検査を受ければいいのか?
「大切なのは視野検査と眼底検査です。眼圧検査は最も有効ですが、08年の特定検診開始とともに会社の健診でも条件付きとなり受診率が激減しています。意識して受けるようにしましょう。加えて乳頭陥凹拡大などが疑われる時には視神経の状態がより詳しく観察できる3次元眼底画像解析装置(OCT)での検査を受けるといいでしょう」
40歳を過ぎたら1~2年に1度の割合で視野検査や眼底検査を受けることだ。