千葉市
「VTuber」関連ビジネスに広がり 新会社、ツールやサービス提供…企業熱視線
キャラクターを使って動画配信を行う「VTuber(バーチャルユーチューバー)」への関心が高まっている。フィギュア(人形)を展示・販売するイベントのワンダーフェスティバル2018[夏]では、大手メーカーによるVTuberのフィギュアが展示されて注目を浴び、ネットサービスのniconicoを運営するドワンゴ(東京都中央区)は、VTuber事業を手がける新会社を7月末に立ち上げた。大手の芸能事務所が有名VTuberを所属させる動きもあって、ビジネスとして盛り上がる兆しを見せている。
■トーク、フィギュア化…来場者の関心誘う
千葉市美浜区の幕張メッセで7月29日に開かれたフィギュアと模型の祭典、ワンダーフェスティバル2018[夏]にグッドスマイルカンパニー(東京都千代田区)とマックスファクトリー(東京都千代田区)が合同で出展したブースで、ひときわ盛り上がっていたのがバーチャルアイドルのコーナー。ショーケースの中にはキズナアイや月ノ美兎(つきのみと)といった人気VTuberがフィギュアとなって並べられ、大型モニターでもVTuberの電脳少女シロらがトークを繰り広げてファンを集めていた。
ほかにも輝夜月(かぐやるな)、ミライアカリ、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんといったキャラクターが、ねんどろいどと呼ばれるデフォルメされたシリーズのフィギュアや、figma(フィグマ)と呼ばれるアクションフィギュアにされて登場。「艦隊これくしょん-艦これ-」や「Fate/Grand Order」といった大ヒットゲームに登場するキャラクターたちと遜色のない扱いが、VTuberへの注目の高さを表していた。
早くからVTuberとして活動していたキズナアイは、セガ・インタラクティブ(東京都大田区)からアミューズメント施設向け景品としても登場する模様。模型メーカーの壽屋(ことぶきや、東京都立川市)でも電脳少女シロのフィギュア化を進めており、ワンフェスの会場でフィギュアの表情に関するアンケートを行っていた。Wonderful Works(東京都千代田区)は輝夜月をフィギュア化する予定で、ブースでは等身大の輝夜月を置いて来場者の関心を誘っていた。
■「ちょっと間違った未来をつくる」
VTuberでは、芸能事務所のワタナベエンターテインメント(東京都渋谷区)がVTuberの葉邑(はむら)ゆうを所属させ、ドワンゴと共同で立ち上げた、ゲーム実況者やオンラインタレントをプロデュースするワタナベアマダクション(東京都中央区)を通して活動を開始した。そのドワンゴでは、新しいVTuberの登場につながる事業分野で攻勢をかける。VR空間でキャラクターを操作してコミュニケーションを楽しめるツール「バーチャルキャスト」を共同開発したインフィニットループ(札幌市中央区)と、VR事業のための新会社バーチャルキャストを設立。「バーチャルキャスト」のサービス拡充にも手を付けた。
新会社の設立は7月27日。社長はインフィニットループの松井健太郎代表、COOはドワンゴの石井洋平氏で、バーチャルキャラクターを扱うCVO(最高仮想化技術責任者)という役職も設けられ、インフィニットループの山口直樹氏が就任した。新会社の目的は「ちょっと間違った未来をつくる」こと。VR空間を人類が手に入れた新大陸と位置づけ、そこに入植した人たちが文化を作っていく上で、既存の常識を持ちこまず、遊びとユーモアにあふれた世界にしていくことを標榜してツールやサービスを展開していくという。
■人気の度合いに応じて奨励金、配信者の育成も
VRヘッドセットやコントローラを手にしてVR空間に入り込み、コミュニケーションやVTuberとしての発信を行えるのが「バーチャルキャスト」というツール。8月1日にはこの「バーチャルキャスト」のサービスを改良して、バーチャルキャスト内で配信者にバーチャルアイテムを贈る「Vギフト」の機能を利用できるようにした。花束や鮭、冷蔵庫といったアイテムを配信者に贈れるようにしてサービスを盛り上げる。ギフトはniconicoで提供されている「クリエイター奨励プログラム」のスコアに加算され、人気の度合いに応じた奨励金が与えられる。これによって次代の人気配信者育成にもつなげていく。
ドワンゴではまた、VRコンテンツ開発のIVR(東京都千代田区)が提供する、ハイクオリティな3Dアニメキャラクターを無料で作成できる「Vカツ」と「バーチャルキャスト」を連携。「Vカツ」で作ったキャラクターをプラットフォーム共通ファイル形式のVRMで出力し、「バーチャルキャスト」上で使えるようにした。
Vカツは、顔の形や髪の形、色、体型、衣装、アクセサリーなど300を超える設定項目から選んで、オリジナルのキャラクターを簡単に作り上げることができるツール。これによって従来は数百万円かかっていたキャラクター造形を、誰でも手軽に行えるようになり、VTuberへの参加をしやすくした。「Vカツ」では男性キャラクターの作成や設定項目の追加、無料での商用利用、スマートフォン対応なども予定。こうしたサービスメニューの拡大と、「バーチャルキャスト」やniconicoといった活用の場の広がりが、VTuberにさらに広い活躍の機会をもたらす。
■無料スマホアプリで誰でも手軽にVTuber
ドワンゴではS-court(エスコート、東京都豊島区)と共同開発した、誰でも手軽にVTuberになれる無料スマートフォンアプリ「カスタムキャスト」の8月下旬のリリースも発表。手にしたスマートフォンの上でキャラクターの造形を行えるだけでなく、フェイストラッキングの機能を使って、スマートフォンを持つユーザーの表情をキャラクターに反映させられる。
既存の人気VTuberがフィギュアとなり、タレントとなって浸透していく一方で、新しいVTuberも続々と登場し、活躍する場も広がることで単なるブームにとどまらない安定した認知をVTuberが得ていく可能性が強まってきた。