千葉市
1杯の“善意”リレー コーヒーレタープロジェクト 「ギフト経済」で地域貢献
「あなたにとってコーヒーはどんな存在ですか?」「コーヒーを通じて、人と人のステキな出会いが広がりますように!」
1枚のメッセージカードが、まだ会った事もない誰かと誰かをつないでいく。店を訪れた人は、前の客が残したメッセージと一緒に、1杯のコーヒーを味わう。そして、次に店を訪れる誰かのために、メッセージとコーヒー1杯分の代金を残していく。
千葉市稲毛区の閑静な住宅街にたたずむ1軒の小さな店を舞台に、ユニークな試みが広がっている。店の名は「珈琲とワインのある暮らし25」。2016年1月にオープン。「コーヒーレタープロジェクト」と名付けた試みを先月から始めた。
前の人から受けた親切を、別の人に贈りつないでいく、という「ギフト経済」の考え方に基づく。「世界を変える」という学校の課題に対し、主人公の少年が「他人からもらった善意をその人に返すのではなく、別の3人に贈る」というアイデアを実践していく00年のヒット映画「ペイ・フォワード可能の王国」が有名だ。
同作から着想を得たという店主の蛭田智也さん(35)は「店を開業して間もなく3年を迎えられる。感謝の気持ちを込めて、プロジェクトで社会に恩返しがしたい」と語る。
君津市で9月初旬に開かれた「オデカフェ珈琲マーケット」を皮切りに、千葉県内各地で毎週末に開かれるイベントで無料配布するはがきが招待状代わり。興味を持った人が「コーヒーレター案内所」(同店)へ足を運ぶ仕組みだ。美術館や家具店など「コーヒー好きが集まりそうな場所」にも置いて、自由に持ち帰ってもらう。
これまでに約20人がプロジェクトに参加。SNSを通してメッセージやコーヒー代の送り手と受け手が交流したり、“善意”の流れを追跡できるような試みも進行している。
蛭田さんは店周辺の魅力を紹介したり、招待状の配布場所を記したオリジナルのマップ作りにも意欲。「千葉はイベントが多彩。県内各地を訪れた人が旅をするように、次の目的地として店を訪れてほしい。そしてコーヒーを飲むだけでなく、街を散策して個性的な店が集まる西千葉の魅力も知ってほしい」と、プロジェクトの発展に期待を寄せる。