千葉市
【パラアスリート支える最新鋭器具(1)】選手に徹底ヒアリング・車いす界のポルシェ
2020年東京パラリンピックは8月25日に開幕する。本番まで2年を切り、障がい者スポーツも盛り上がりを見せてきているが、競技の理解を深めるには、器具を抜きにしてはありえない。そこで今回は最新鋭の器具を大特集。ピックアップしたのは車いす、義足、ブラインドサッカー(視覚障がい者5人制サッカー)ボールの3つだ。各メーカーに強みや工夫を取材すると、そこには職人たちの「ものづくり」の精神があふれていた――。
競技用車いすの開発で知られるのがオーエックスエンジニアリングだ。8度のパラリンピックで122個のメダル獲得をサポートした。車いすテニスの国枝慎吾(34=ユニクロ)が使用するモデル「TRZ」を始め、千葉市の工場で手作業で組み立てられる。
製品作りはまず、選手への徹底したヒアリングから始まる。競技ごとに担当制を敷き、会場に足を運んだりして日常的に情報を収集。その上で長い時で2時間にわたり聞き取りを行う。注文書には寸法だけで20か所以上もの記入欄がある。「場所によってはミリ単位でお受けすることができる」(広報の櫻田太郎氏)。技術者が選手と強固な信頼関係を築いていく。
前身はバイクショップでその伝統も受け継がれている。車いすも機能的かつスタイリッシュだ。「見た目はとても大事。オートバイの時でも速くて格好いいものは注目してもらえる。車いすに変わっても同じ」(同)。技術力は抜群で代表的な部品のパイプには独自のひょうたん形やモナカ形を開発した。
選手や関係者もうならせる。ついたあだ名が“車いす界のポルシェ”。陸上用を20年担当する小澤徹氏は「私たちのやってきたことが結果として出てくると評価につながる。車いすは福祉的なもののような感じがするけど、乗り物を作っているイメージ」と胸を張る。
同社の作る車いすは日常用が9割で競技用は1割にすぎない。しかも、オーダーメードで手間もかかる。「今は混み合っていて納期は半年以上です」(櫻田氏)。工場に黙々と響く作業音は職人魂の結集を感じさせた。