千葉市 刑務所の「いま」 弁護士会館で写真展開催

千葉市

大学生がカメラにおさめた刑務所の「いま」 弁護士会館で写真展開催

 

死刑の統計など、刑事司法に関する情報提供をおこなうウェブサイトを運営する「CrimeInfo」(イギリスの「レディング大学」と「監獄人権センター」による共同プロジェクト)は、「刑務所の『いま』を知る写真展」(日本弁護士連合会共催。入場料無料)を弁護士会館(東京都千代田区)1階ロビーで開催する。10月23日(火)から11月2日(金)まで。

本来であれば立ち入りも、撮影もできない一般市民が刑務所を収めた日本初の写真展として注目され、今年4月に日比谷図書文化館で開催された同展には1000人以上が訪れた。

展示される40枚前後の写真は、東京工芸大学の芸術学部(写真学科)で学ぶ6名の学生が、主に関東の刑務所や拘置所を訪れ、撮影したものだ。撮影は今年2月下旬から3月はじめ、まだ寒さを感じる時期におこなわれた。

「CrimeInfo」事務局の塩田祐子さんは「写真展を通じて、多くの人たちに刑務所のことを知ってほしい」と話す。

●「想像と全く違う」学生たちの純粋な感想

学生たちはなにを見て、なにをカメラにおさめたのだろうか。初回の展示会後、学生たちは、それぞれ感じたことをレポートにまとめた(以下、コメントはすべてレポートにつづられたもの)。

府中刑務所(東京都府中市)の運動場にずらりと並ぶ8つの便器に目をとめたのは、鬼頭佑輔さんだ。「トイレをする時も監視される監視社会とトイレの便器達が放つ存在感に圧倒されていました」とつづった。

千葉刑務所(千葉県千葉市)を訪れた2人の学生は、運動する受刑者の姿が印象に残ったようだ。

「運動の時間などは楽しげな笑顔や笑い声が聞こえ、想像と全く違うものでした」(生原かれんさん)

「運動時間では受刑者同士のコミュニケーションも見られ、談笑の場面もありました」(佐藤海帆さん)

木工製品をはじめ、刑務所でつくられる製品はハイクオリティで、いずれも高い技術を要するものばかりだ。製品が販売される「矯正展」などで、人気を博す商品もある。

木村戒さんが、黒羽刑務所(栃木県大田原市)で収めたのは、刑務作業中の受刑者の姿だった。

同じく黒羽刑務所を訪れた松村誠也さんは「受刑者達が実際に刑務所内でどのような作業に従事し、手に職をつけているのか世間にもっと広く知られれば、出所後の社会復帰に繋がるのではないかと思います」。

1月に開所したばかりの東日本成人矯正医療センター(東京都昭島市)は、日本最大規模の医療刑務所だ。横山渚さんは、人工透析を受けている受刑者の写真を撮影した。

「とっつきやすく視覚的に、一般の市民や学生、子供までもが感覚的に現場の空気感に触れることができるような機会が増えていったら良いのではないかと思う」と写真展を終えて感じたことを記している。

●刑務所の「いま」を知ってほしい

塩田さんによると、「CrimeInfo」のウェブサイトに刑事施設の写真を使おうとしたことが、写真展開催のきっかけだった。

レディング大学法学部准教授・佐藤舞さんが法務省と交渉。受刑者本人を特定できないようにすることなどを条件に刑事施設の撮影が許可された。

塩田さんは「学生たちは『作品』として写真を撮影していました。せっかくなので、ウェブサイトだけではなく、写真展という形で作品を発表してみようということになりました」と話す。

写真展には、学生たちのカメラがとらえた刑務所の「いま」がある。そこには、どのような事実がうつしだされているのだろうか。知られていない刑務所の日常をみることができる貴重な機会だ。

【刑務所の「いま」を知る写真展】

展示期間:2018年10月23日(火)ー11月2日(金)

展示時間:平日は8時30分から19時(土曜日は15時)まで。28日(金)は休館日。最終日の2日(金)は13時まで。

展示会場:弁護士会館1階エントランス(東京都千代田区霞が関1-1-3)

撮影者:鬼頭佑輔・木村戒・佐藤海帆・生原かれん・松村誠也・横山渚(50音順)