千葉市 ITで介護に劇的変化〈AERA〉

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ゲーム感覚でリハビリ、目線でiPad操作…ITで介護に劇的変化〈AERA〉

近年、急激に生活の中に普及し始めたIT。その技術は、多くの問題を抱える介護の現場でも助けとなってくれそうだ。すでに、介護施設やお年寄りの居室で活用されている機器もある。「ゲーム感覚でリハビリできる機械」もその一つだ。

「では、いすの背につかまって足の運動からはじめましょう!」

千葉市中央区にこの春オープンしたばかりのデイサービス

「carelabo西千葉」生活相談員の秋山由美さん(57)が利用者ふたりに声をかけた。テレビ画面に映ったトレーナーのお手本を見ながら、「1、2、3、4」という掛け声と音楽に合わせて、足を前に上げていく。

足首には「モフバンド」と呼ばれる腕時計型のウェアラブル端末。これが動作を読み取って、画面上の目盛りが足の高さに合わせて上下する。リアルタイムでカウントも増えていく。真剣な顔つきで取り組んでいたふたりだが、10回終わって拍手音が流れたころには、「とても気持ちいい」と笑みがこぼれた。

このデイサービスが導入しているのは、「モフトレ」という自立支援プログラムだ。iPadにダウンロードした専用アプリとモフバンドとを連係させ、画面操作で簡単にトレーニングを行うことができる。

アプリには、ふたりがやっていたような、介護が必要な人が様々な日常動作を行えるようになるための、手や足を使った運動メニューも収録されている。このデイサービスを運営するcocolabo代表取締役の立川大輔さん(36)は言う。

「モフトレは、理学療法士やリハビリの専門職がいない現場でも、無資格の職員が専門性をもって指導できる。導入コストも高くないので助かります」

現在、個人での利用はできないが、モフバンド自体はアマゾンでも5千円程度で購入できる。この機器を販売するMoff代表取締役の高萩昭範さん(41)は、そもそも子ども用のアプリ「モフサウンド」を開発。モフバンドをつけて手を振ると、楽器の音がするというゲーム。これを、高齢者のリハビリ用に進化させたものが「モフトレ」だ。

「体を動かすことに気が進まない方々に対し、いかに動いてもらうかは、楽しさが鍵だと思います」(高萩さん)

実際に記者も、モフトレを試してみた。まず驚いたのは、リチウムイオンバッテリーではなく、ボタン電池を使っていること。価格も安く、リチウムイオンに比べて熱を持たないので高齢者にもやさしい。しかもこのモフトレ、意外にハマる。

テクノロジーは高齢者を、そっと、静かに見守ったりもする。Z-Worksが開発する「施設向け介護支援システム」は、高齢者の寝室に心拍数や呼吸数を検出できるレーダーを設置。ほかにも、人の所在や部屋の明るさ、温度、湿度、ドアの開閉を検出するさまざまなセンサーを組み合わせ、高齢者を見守る。

ここから得た膨大なデータはクラウドで解析され、異常を検知。例えば、「トイレから20分経ってもベッドに戻らない」「夜中も電気がつけっぱなし」といった異常状況のみ、介護職員などに通知される。

体に何も装着しなくても呼吸や心拍数が測れるレーダーは、電波を人体に反射し、その反射波を解析する仕組みだ。多少のノイズは拾うというが、高齢者がベッドにいるかいないかは十分検知できる。

このシステムを手掛けるZ-Worksの開発コンセプトは「がんばらない介護」。介護支援システムにも、代表取締役の小川誠さん(46)が経験したつらい介護経験がベースにある。小川さんの祖母は、夜中にトイレに行こうとしてベッドから転落。その状態のまま朝まで気づかなかったため、肺炎を引き起こしてしまったという。

「何かあったときのために、自分が横に布団を敷いて寝るくらい頑張らないと、介護はできないと考えていた。でもテクノロジーで、負担は軽減できるんですよね」(小川さん)

iPad画面のボタンを見つめるだけで、タップできるという驚きのコミュニケーション支援システムも開発されている。「リカナス」という名のシステムを使えば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者や、寝たきりで声や動作で意思を伝えることが困難な人が家族や介護者への意思伝達を目線で行える。

使うのは専用のアプリがダウンロードされたiPadのみ。操作も簡単で、最初に目の形状を登録すると、画面上の見ているところに丸い形状のカーソルが現れる。その丸をタップしたい選択肢のほうに目線で動かしていけばOK。例えば「体調」「食事」「空調」と書かれたボタンから「食事」を見ると、それが選択される。

また、メッセージを伝えたい相手の名前を目で選べば、それまで選択した全ての内容を送信することもできる。実際に記者もやってみたが、目線通りにスムーズにカーソルが動き、選択ボタンを2秒見つめるだけで、本当にボタンがタップされた。

そもそもは、自動車のナンバーを読み込むときに使われる画像解析技術を応用。開発したデジタリーフ代表取締役の寺島健一さん(46)は、この画像解析の技術を発揮する場所として、医療介護に目をつけた。

視線追跡でコミュニケーションをとる同様のシステムは以前からあったが、大きな専用モターを必要として、製品価格は100万円を超えるものばかり。一方、こちらリカナスの製品は、iPadのカメラを使用することで、月額費用を2万2千円まで抑えることができた。

こうして、先人たちが開発した既存のテクノロジーを借りて、さまざまなケースにフィットする介護が、安く提供される日も近い。そう、テクノロジーは、意外と人にやさしいのだ。

 

本日、千葉市花見川区朝日ヶ丘自宅より依頼を受け、お伺い、車椅子にて

千葉市中央区亥鼻千葉大学医学部附属病院に

通院治療をされ戻りました。