松戸市   【女児殺害1年 地域の安全模索】

松戸市    【女児殺害1年 地域の安全模索】広がる新たな見守り活動 「見せる警戒」で成果

「おはようございます」「気をつけていってらっしゃい」-。23日午前7時半ごろ。時折雨がぱらつく中、我孫子市布佐平和台地区で傘をさして登校する小学生を、街頭の要所要所で見守る大人たちの姿があった。蛍光色のベストや帽子に加え、全員が共通の隊員証を首からぶら下げている。市と市教育委員会、我孫子署などが中心となって昨年10月に発足した「我孫子市子ども見守り隊」のメンバーだ。

昨年3月の松戸市の小3女児殺害事件で、逮捕された容疑者が通学路の見守り活動に携わっていた保護者会会長だったことに加え、遺体発見現場が我孫子市だったことの衝撃は大きかった。

◆隊員は登録制

事件後、児童や保護者の不安を払拭するにはどうすべきか。市や同署が考えたのは、各自治会や小学校の学区単位で行っていた見守り活動や組織を集約。活動の質や連携を高めることだった。

同隊は市職員などが面接などを行う登録制の仕組みを採用。また、隊員証があれば、地元だけでなく市内全域で見守り活動に参加できる特徴もある。活動は自由だが、地域によってばらつきが出る活動や、不審者情報の共有などが進む効果が期待される。

布佐平和台地区で活動の中心を担う布佐平和台5丁目防犯パトロール隊代表の倉橋清治さん(80)によると、地域の防犯活動は平成15年に開始。その後も警察や学校などの関係機関と連携し、独自のパトロール活動を続けてきた。

昨年10月に見守り隊に参加。現在は約30人のメンバーが登下校時を中心に見守り活動を行う。共通の隊員証をもとに連携が進むことについて倉橋さんは「近隣でのお互いの情報交換などにもつながるのでいいと思う」と評価する。

同署によると、昨年10月の発足時は隊員は約1200人だったが、賛同が増え今年2月末時点で約2180人まで拡大した。

成果も出ている。同署管内の刑法犯認知件数は29年10月~30年2月は前年同期比41件減の324件。交通事故の発生状況も同40件減の981件。発足直後は声かけやつきまといといった重大犯罪の前兆事案の認知件数も大きく減少。同署の中川武生活安全課長は「(街頭に立つ)見せる警戒が一定の成果につながっているのでは」と分析する。

◆住民意識に濃淡

松戸市でも地域住民による「六実っ子安心安全見守り隊」が同様の登録制を採用。隣接する鎌ケ谷市の県立鎌ケ谷西高校の生徒が参加するなど、事件を機に実効性ある見守り活動や新たな動きも広がる。県警も「あり方の一つのモデルケース」(永井達也県警本部長)と期待を寄せる。

一方、地域で住民意識に濃淡があるのも事実だ。松戸市の活動に参加しているある人は「周辺の活動が目立ちすぎると、事件が起きた六実地区の住民の方がどう思われるかは気になる」と声を潜める。

我孫子市の活動も一定の期間後活動を検証する考えだ。事件から1年、再発防止の取り組みもまだ手探りの状況が続いている。

リンさんが殺害され遺体で見つかってから26日で1年となる。通学路や地域の安全をどう確保するか。事件を教訓とした試行錯誤の活動を報告する。

松戸市の女児殺害事件 昨年3月、松戸市に住むベトナム国籍の同市立六実第二小3年、レェ・ティ・ニャット・リンさん=当時(9)=が登校途中に行方不明となり、我孫子市の排水路脇で遺体で見つかった。同年4月14日、同小保護者会会長の渋谷恭正被告(46)が逮捕され、殺人や死体遺棄などの罪で起訴された。6月4日に千葉地裁で裁判員裁判の初公判が開かれる。