松戸市
カンヌ映画祭パルムドール受賞『万引き家族』で話題 城桧吏の存在
カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞
日本人21年ぶりのカンヌ映画祭・パルムドールを受賞作品の『万引き家族』が、本日6月8日(金)より公開となった。
都会の高層マンションの谷間にぽつんと取り残された、今にも壊れそうな平屋に住む柴田初枝の元に4人の「家族」が転がり込む。彼らの目的は初枝の年金。それ以外の生活費は、実は万引きで賄っている。ある日、母親に見捨てられた少女を見かねて連れて帰ってきてしまうが、彼女の境遇を思いやり家族として育てることにする。貧しい中でも笑いが絶えない家族だったが、ある事件をきっかけにバラバラに引き裂かれ、家族が抱えていた秘密も明らかになっていく…。
監督は、『三度目の殺人』で日本アカデミー賞最優秀賞最多6冠を成し遂げた是枝裕和監督。キャストにリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優と実力派が並ぶ中、今注目を浴びているのが一家の長男・柴田祥太を演じる城桧吏だ。
物語の大きな展開となる重要な役を演じ、11歳とは思えない卓越した演技力で世界を魅了し、今や「第二の柳楽優弥」との呼び声も高い。
そんな城にインタビューを行った。
城桧吏は役者のほか、実は7人組男子小学生ユニット「スタメンKiDS」の一員として活動している。スタメンKiDSはスターダストプロモーション所属の新人&若手俳優集団「EBiDAN」内の1グループで、すでにキャリアは2年。昨年弊誌が事務局を務めた「全国ふるさと甲子園」でもパフォーマンスを見せてくれている。
そんな城だが、スタメンKiDSと俳優の活動は、明確に差別化して考えているそうだ。
「スタメンKiDSでは楽しくみんなで歌って踊って、お客さんを喜ばせることを考えていて、俳優のお仕事は真剣に役になりきって演技をする、という感じで違う活動だと思っています」
しかしスタメンKiDSで培った経験は、この撮影でも役立ったという。
「ミカンを持って走るシーンがあるのですが、ダンスでの経験があったから、バランスを取ってうまく走れたのだと思います。とても難しいシーンだったので、身体を動かすことをしていなかったら、多分できなかったと思います」
カンヌ映画祭で感じたこととは?
今回の作品の受賞に対して、周囲は「凄いね!」「おめでとう!」と声をかけてくれたそうだが、城自身はまだスクリーンの中の自分を直視するのは恥ずかしいらしい。
「普段の僕は明るくてやんちゃなのですが、祥太は大人しいイメージがあっていつもの自分とは違いますし、やっぱり褒められるのは恥ずかしいです」
照れながら話してくれる姿は等身大の11歳の少年だが、カンヌ映画祭での堂々とした姿は記憶に新しい。
「カンヌの街は凄く綺麗でした。ゴミ一つなくて。町中に何個もゴミ箱があって、ちゃんとゴミを捨てるようになっているんです。日本はゴミが落ちている場所もあるので、日本とは少し違いました」
そんなカンヌの印象を話してくれる城だが、実際はとても緊張していたのだとか。
「みゆちゃん(ゆり役:佐々木みゆ)もいたから落ち着けたのだと思います。もし子供一人だったら、もっと緊張していたと思います」
オーディションで一緒だった城と佐々木
妹役の佐々木みゆとはオーディションも一緒
妹役の佐々木みゆとは撮影の合間にも遊んだりして、まるで本当の兄弟のような関係になっているという。
「かくれんぼや鬼ごっこをしていました。あの押入れの中によく入っていて、本当は押入れに誰もいないシーンのはずだけど、実は僕とみゆちゃんがいるシーンもあるんです。是枝監督が『静かにしていればいいよ』って言ってくれたので。『スタート!』の声がかかったらお互いにシーッ!ってやって黙って、『カット!』って聞こえたら二人で笑い出したりしていました」
そんな佐々木とは、実はオーディションの時から一緒だったとか。
「同じ年代の女の子3人、男の子3人で一緒にいたんです。中でもみゆちゃんは『一緒に受かるなら、みゆちゃんがいいな』と思っていました。面白い子だったので。歳は下ですが、みゆちゃんの方が僕よりずっと精神年齢が高いと思います(笑)」
是枝監督は、城がオーディション会場に入ってきた瞬間「この子だ!」と思ったとか。
城と相性ぴったりの佐々木も、そうだったのかもしれない。
海水浴シーンは千葉県いすみ市で撮影
他の共演者とも楽しく撮影ができた、と城は語る。
「父親役のリリーさんは凄く優しくて、カメラが回ると本当に演技が素晴らしくて。とても優しい俳優さんです。安藤さんはいつも現場を楽しくしてくれていました。面白い歌を歌ってくれて、話をしてくれて。現場に行くのがいつも楽しみでした」
まるで、本当の家族のように見えた出演者たち。
是枝監督はどのように演技指導をしたのだろうか。
「(子役には)台本がないので、監督が『祥太はいま、こういう所にいてこういう気持ちでいるんだよ』と教えてもらってから台詞を言います。だから、自分で監督が話す内容をひとつひとつ理解しながら演じていました。大変なこともあったけど、現場が凄く楽しかったので、あまりそういうのは感じていなかったです」
監督については「優しいんです」と語る。
「素晴らしい人だと思います。凄い監督さんでもあり、演出も編集もやっていると知って凄いと思いました。演技指導も凄く理解しやすくしてくれました」
特に自然体で演じられたのは、海水浴のシーンだったとか。
ロケが行われたのは千葉県いすみ市の大原海水浴場。地元で人気の海水浴場だ。
「一番最初の撮影でした。まだ一回しか皆で顔を合わせていなかったんですが、あの時は海ではしゃぐシーンだったのでとても楽しかったです。監督からは自然に楽しんでいていいよ、と言われました」
そこから家族の気持ちも育まれていったようだ。
「撮影の最初の方はやはりまだ慣れていなくて。『家族』という設定だけどリリーさんから話し掛けられて返事するのに「うん」じゃなくて「はい」と言ってしまって。それでもリリーさんは失敗を『大丈夫だよ』と言ってくれました」
そして、小湊鉄道で撮影した、海水浴場に行くまでの家族の電車シーンも、風景の美しさが印象に残っているという。
「電車の前から風景が見えるのですが、それが凄く綺麗で。CGを使っているのかな、と思ったのですが本当の景色だそうで、最初に試写で観た時はびっくりしました」
仲睦まじく、楽しそうな様子が印象的なシーンだ
作品のほかのロケ地としては、東京都内、千葉県松戸市、神奈川県綾瀬市などでも撮影が行われている。その点にも注目して観たい。
苦戦した万引きのシーン
演技をする「現場」にも驚きは大きかったという。
「家族が住んでいる家はセットとロケでの本当の家と二つあったのですが、ロケをした家の埃が凄くて。特に押入れはセットとロケの二つあったのですが、ロケの方は本当に凄かったです。最初は狭くて大変でしたが段々と慣れてきて。お母さんが『ドラえもんみたいだね』と言ったので、そう思ってからは普通の家みたいに思えてきました。中でみゆちゃんと遊んだりもしていましたし(笑)」
まさに祥太そのものになっていた城だが、最初のスーパーマーケットでの万引きシーンは苦戦したそう。
「お菓子が鞄の中になかなか入らないんです。でもやっていくうちに慣れたので、最後は百発百中で入るようになりました(笑)」
そんな城だが、自分とは違う祥太の役作りは色々と考えさせられたのだとか。
「祥太は、最初は普通に万引きとかをしていたけど、”やまとや”のおじさんに『妹にはさせるなよ』と言われてから『万引きはダメなんじゃないか』ということに気づき始めるんです。僕も祥太と同じように考えていくようにしました」
是枝監督の入魂の作品をぜひ劇場で観てほしい
印象的に残るバスのシーン
リリーさんとの親子関係の作り方についても
「『男だけの方が楽しい』という台詞があるんですが、それを理解しながらやったからできたのだと思います」と語る。
特に印象に残っているシーンを聞いたところ、バスに乗る祥太を治(リリー・フランキー)が見送るシーンだそうだ。
「撮影の最後の方だったんです。僕自身も祥太と同じ気持ちで演じていました」
見送る治の表情はもちろんだが、祥太の表情もまた、観る者に強い印象を残すシーン。
ぜひ、劇場で確認して欲しい。
タレント活動に、役者活動に、と忙しい城だが「今後は役者に力をいれてみたい」と思っているのだとか。
「どちらもやりたいと思っているのですが、役者さんに興味があります。撮影が楽しいです。色々な所へ行ったり、できないことができたり。万引きなんて普通は絶対にやっちゃいけないことです」
そう言って真っ直ぐにこちらを見つめる目には、物語の中にあった祥太のような、静かで全体を俯瞰しているような目の光を感じる。
年相応の雰囲気もありつつ、インタビューの受け答えは非常にしっかりしている。とはいえ、友人たちからは「年齢より幼い」と言われることもあるそうだ。
そんな二面性こそが、彼の役者としての魅力の源なのかもしれない。底知れない可能性を秘める、城の今後のますますの活躍が楽しみだ。
本日、松戸市六実自宅より依頼を受け、お伺い、車椅子にて
松戸市和名ヶ谷新東京病院に入院致しました。