松戸市 東京五輪・パラ事前合宿地 全国1割超の自治体が合意
2020年東京五輪・パラリンピックの開催を控え、全国自治体の約1割超にあたる186の市町村と特別区で、外国チームの選手が事前合宿を行うことで合意していることが産経新聞の調査(1日現在、内定含む)で分かった。自治体側とは各国オリンピック委員会がまとめて締結している場合もあれば、各競技連盟が単独で交渉し、締結している場合もある。自治体間で有力国の激しい招致競争が起きており、今後も増える見通しだ。
今回の調査で、合意件数が最も多いのは静岡県、2位は神奈川県。メイン会場が東京のため関東圏の都県が上位に並ぶが、3位の福岡県は県が主導して戦略的に招致作戦を練り、多種多様な国、チームの受け入れに成功している。5位の山形県は首長が積極的に招致を狙う国を訪れ、トップセールスを行っている。
区市町村別では石川県小松市が6カ国のカヌーチームの招致に成功し、全国最多。施設の充実ぶりや空港が近いことが評価された。千葉県松戸市や神奈川県小田原市でも複数の国の選手団が事前合宿を行う。
一方で、地方では競技施設や宿泊施設でバリアフリー化が進んでおらず、パラチームの招致には「大きな課題」(高知県)との声が上がっている。自治体側が各国チームの滞在費用の面倒を見るなど支援策をPRして、招致合戦を繰り広げている実態も判明した。
まだ事前合宿の合意に達していない地域もあるが、「いずれ東京近郊の施設は頭打ちになる。今からが勝負」(大阪府)との声もあり、今後、合宿地は全国に広がるとみられる。
東京大会でメダルを狙う有力選手たちは日本の高温多湿な気候に慣れるため、すでに今年から合宿地を訪れ、練習を開始している。地元の子供たちとの交流も進めており、神奈川県の担当者は「東京五輪は実質的にもう始まっている」と話した。
2012年ロンドン大会では、250以上のチームが英国内で事前合宿を実施。スポーツ振興や国際的な認知度の向上、観光面でも効果があったと報告されている。
五輪・パラの運営で国や東京都の財政負担に厳しい目が注がれる中、地方でも大会関連の支出が増えている。人口千人余の小さな村だった大分県中津江(なかつえ)村(現日田市)が2002年日韓サッカー・ワールドカップ(W杯)でカメルーン代表の事前合宿招致に成功したことは、今回の合宿誘致運動でもモデルケースになっているが、過度な公金支出には慎重な対応が求められそうだ。
全国の担当者によると、アフリカ諸国など大会予算が限られている国ほど「合宿のためどれだけ(自治体が)資金を出してくれるのか」と聞いてくるという。自治体側には「負担を断れば、合宿地に選んでもらえない」とのジレンマがある。三重県はカナダのチームの宿泊費用などに1400万円を負担する予定だが、誘致合戦が「マネーゲームになるのを危惧している」との声も出ている。
三菱総合研究所は五輪のレガシー(遺産)を地方に残すためのポイントとして「地域活性化のために大会・キャンプをいかに活用するか」「戦略に基づく準備と大会後の取り組みを重視する」「公的資金に依存せず、持続可能な事業モデルを模索する」の3点を挙げる。財政負担にはその使い道や目的について、丁寧な説明が求められる。
■2020年東京五輪・パラリンピック
五輪は7月24日~8月9日の日程で、史上最多となる33競技・339種目を42会場で開催。パラリンピックは8月25日~9月6日、22競技540種目が21会場で実施され、史上最多の約4400人が参加予定。両大会の期間中、選手と観客合わせて1千万人以上が訪れるとみられる。