松戸市 三越伊勢丹、V字回復も地方店で苦戦続く
平成30年3月期に最終損益が8年ぶりに赤字転落した三越伊勢丹ホールディングス(HD)の業績が改善してきた。30年9月中間決算も好業績で31年3月期はV字回復が確実視される。しかし、頼みの綱は販売好調の都心の基幹店ばかりで、地方店で苦戦が続く構図は変わらない。持続的な成長に向け、地方店に改革のメスを入れる決断が求められている。
三越伊勢丹HDは30年3月期連結決算で構造改革に伴う特別損失261億円を計上したことなどから9億円の最終赤字に陥った。だが、杉江俊彦社長の「構造改革でうみを出し切った」との言葉通り、30年9月中間決算は本業のもうけを示す営業利益が前年同期比41.5%増の108億円に改善。31年3月期も最終損益を130億円の黒字とする予想を据え置き、V字回復へ道筋を付けた形となった。
好調を支えるのは都心の基幹店だ。伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)、三越銀座店(中央区)、日本橋三越本店(同)の3店は富裕層や訪日外国人客で連日にぎわい、化粧品や高級ブランド品などが絶好調だ。例えば銀座店の4~10月期の売上高は前年同期比7.1%増と全体平均を大きく上回る。
このため、三越伊勢丹HDは基幹店に経営資源を集中させてテコ入れを図り、日本橋三越本店など2店に約250億円を投じて改装を実施。10月下旬には第1弾として同店の改装部分がオープンした。また、33年度までに基幹店を軸に約1600億円を投資し成長戦略を加速させる考えだ。
だが、順風満帆にみえる三越伊勢丹HDにとって今後、火種となりそうなのが不振が続く地方店である。
地方店は三越伊勢丹HD最大の経営課題とされ、29~30年に伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)など計3店を閉店。それでも不振は解消されず、4~10月期の売上高は多くの店で前年割れで、広島三越(広島市)は7.2%減、松山三越(松山市)は5.1%減と基幹店とは対照的だ。ただ、杉江氏はV字回復への自信を背景に、閉店には否定的な考えを示していた。
ところが、三越伊勢丹HDは9月に突如として伊勢丹相模原店(相模原市)など新たに3店を32年3月までに閉めると発表した。これにより、29~32年に計6店が閉鎖されることになる。想定以上の業績悪化が背景にあるようだが、いずれにせよ三越伊勢丹HDの方針が定まり切っていない面が浮き彫りになったといえる。
杉江氏は7日の記者会見で「大規模店の閉鎖はいったん終了だ」と明言した。だが、地方は富裕層の厚みがなく、訪日外国人客も少ない。ショッピングセンターなどとの競争激化という構造的な課題を抱え、こうした環境が続く限り杉江氏の言葉を額面通りに受け止めにくいことは確かだ。
杉江氏は広島三越など2店を商業施設へ転換する再建の方向性を示したが、同様に苦境にあえぐ他の地方店の改革も急務だ。地方では今後、人口減少も加速する。杉江氏がこうした課題にどう向き合うのか、かじ取りが注目されそうだ。
百貨店は長期低迷が続いている。日本百貨店協会によると総売上高はバブル景気に沸いた平成3年に9兆7130億円のピークを付けた後、バブル崩壊に伴う景気低迷で百貨店離れが進行。ショッピングセンターやインターネット通販などに顧客を奪われ、29年の総売上高はピーク時の6割の水準に減少した。これに伴い都市部と地方の格差も拡大。総売上高のうち東京、大阪など10都市の合計額が占める割合は、3年の約6割から29年には約7割に上昇した。地方は苦戦が続いており、各社は閉店などの対応を余儀なくされている。