浦安市   あなたに合う終の棲家は 

浦安市    あなたに合う終の棲家は みとりまで対応する施設も

 

高齢者の住まいが多様化している。「生きがいづくり」や「地域交流」など特色を打ち出す老人ホームや住宅が目立ってきたほか、病弱な高齢者のための「介護医療院」と呼ぶ施設も登場した。選択肢は広がるが、一般の高齢者や家族にとっては複雑でわかりにくい面も強まる。主な住居・施設の概要や費用を知っておき、いざというとき慌てないようにしたい。
■駄菓子屋で店番
千葉県浦安市。住宅街にある「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の「銀木犀(ぎんもくせい)」を訪ねると、ここがどういう施設なのかわからなくなる。玄関脇に駄菓子屋があり、子どもたちが頻繁に出入りしているからだ。
そして駄菓子屋の店番をしている高齢者がここの入居者であると知って驚く。87歳の女性は「ここは気に入っている。最期までいたい。店番もできるうちはずっとやりたい」とほほ笑む。
サ高住は入居者が室内で倒れたりしていないかといった安否確認などのサービスを提供する賃貸住宅。普通のワンルームマンション風のところが多く、共用の食堂を備え3食を提供するのが一般的だ。国が2011年に設けた制度に沿って民間事業者が運営する。急速に整備が進み、現在全国で約23万戸ある。
数が増えるにつれ特色を示すサ高住も出てきた。銀木犀もその一つ。麓慎一郎所長は「何でも自由に可能な限り自分でやってもらうこと、地域に開かれた場であることが特色」という。
建物内に介護事業所を併設し、近隣の医療機関と提携しているので、みとりまで対応できることもアピールする。サ高住は当初、「一人暮らしは少し不安」といった比較的元気な高齢者を想定して始まっただけに、みとりの対応は難しいところも珍しくない。
特色づくりは成功しているようだ。全42室の銀木犀浦安は満杯だ。費用は1人部屋の場合で1日3食付けて月約20万~25万円。ほかに日用生活費、医療費、介護費なども必要になる。
10月12日。東京都内で優良な高齢者住宅を事業者の団体が選ぶ「リビング・オブ・ザ・イヤー2018」があった。大賞を獲得したのは入居者に仕事の場を提供する介護付き有料老人ホーム。最終選考に残った施設には「生きがいづくり」「地域との交流」を打ち出す例が目立った。
一般的に介護必要度が高まれば「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」、認知症なら「グループホーム」などが適しているとされる。しかし単にからだの状態で選ぶだけでなく、最近は「高齢者本人がしたいことを尊重できる場が求められている」

■病弱な高齢者のために介護医療院制度
一方、病弱な高齢者はからだの状態で施設を選ばざるを得ない場合もある。国はそういう人たちのための新たな居場所として介護医療院制度をつくった。

埼玉県川口市のはとがや病院。この病棟の一角に5月、同制度の認可を受けた施設がオープンした。一見、普通の病室と変わりないが、生活の場であることに配慮して4人部屋でも1人当たりのスペースは広め。スペースとスペースの間はついたてで仕切っている。
ここに入るのはからだが弱ったり認知症になったりで食事や入浴、排せつなどの介護が必要なだけでなく、経管栄養、たんの吸引などの医療処置も欠かせない高齢者。途中で退院を求められることはなく、最期までいることができる。

同病院によると、「別の病院から退院を迫られたものの、家族に頼れず自宅に戻ることもできないといった人が病院の紹介で入るケースが大半」という。かかる費用は総額で月13万円程度。定員は98人で、ほぼ埋まっている。

写真:NIKKEI STYLE
■病院介護の受け皿
これまでも病院には介護が必要な高齢者が長期入院する療養型病棟を設ける場合があった。しかし生活の場とは言い難いため国は従来よりは居住面を重視した介護医療院制度を始め、そこへの転換を促している。
現時点ではまだ数は限られているが、「近い将来、全国で10万ベッドほどに増える」(日本介護医療院協会の鈴木龍太会長)ともみられる。数が増えれば特色を出す施設も増えるだろう。そうなれば高齢者やその家族が選んで入る場合も出てくるかもしれない。
からだの状態や意欲、希望などによって高齢期の住まいは様々に広がる。とはいえ住み替えで最も重要なのはやはり「立地と費用」(田村社長)。
住み慣れた地域や子どもの家の近くであるか、負担可能な費用かどうかが重要だ。公的な補助を受けて建設される特別養護老人ホームは概して安く済む。有料老人ホームは入居一時金も月々の費用も施設によって大きく異なる。毎月必ずかかる費用のほかに、利用した分だけ発生する費用などもある。よく確認したい。体験入居ができれば、ぜひ活用し、施設の雰囲気も知りたいところだ。

■早めに情報収集を
「本当に住み替えが必要なのか考えたい」(高齢者住宅財団の落合明美氏)との声もある。介護保険サービスなどを使えば不安があっても一人暮らしが可能になることもある。なんといっても自宅で暮らせば費用はぐっと抑えられる。
シニアライフ情報センターの池田敏史子代表は「このところ都市再生機構(UR)など公的な賃貸住宅も注目されている」という。まだ元気な人がいったん自宅を片付け生活をコンパクトにして老後に備えるのに適しているそうだ。サ高住などに比べ費用もかからないし、部屋も広い。
いずれにせよ早め早めに情報を集め、どこでどう暮らすかを考えておきたい。