習志野市   秋の叙勲 

習志野市

秋の叙勲 千葉県内から193人受章 旭日双光章受章の表具用刷毛製作技術者、田中重己さん 家業継ぎ60年

 

平成30年秋の叙勲受章者が3日付で発表され、千葉県内からは193人の受章が決まった。発令は同日付。このうち、旭日双光章を受章した表具用刷毛(はけ)製作技術者の田中重己(しげみ)さん(77)=同県習志野市=に喜びの声を聞いた。

絵画や書画などの文化財を補強、修復するため、和紙を裏側にのり付けするのに使われる「表具用刷毛」を60年以上にわたり、丹精込めて製作してきた。平成22年には文化財保存のため国が伝承を支援する「選定保存技術」の保持者にも認定されており、叙勲受章の喜びを「職人として認められ、報われたという思い。長年頑張ってきたご褒美かな」と笑顔で語った。

中学を卒業してすぐに、父親がやっていた刷毛製作の仕事を引き継いだ。「本当は刷毛作りを継ぐのは嫌だった」というが、昼間は実家で刷毛を作りながら夜に定時制の高校、大学で勉強に励んだ。大学では「刷毛屋の仕事に応用できたら」と化学を専攻。今でも接着剤の選定などでその知識が役に立つことが多いという。

大学を卒業して2、3年がたった頃、「父がやらないことをやってみたい」と考えるようになり、当時刷毛に使用されていなかったブタ毛を使うことを思いついた。試行錯誤の末、クセが強いブタ毛をまっすぐにすることに成功。「ブタ毛を使った刷毛は当時、刷毛屋の中でも話題になった。あのときから自分なりの商品を作れるようになった」と振り返る。

平成の初め頃までは商売で苦労することはなかったが、現在は中国製などの安価な刷毛に押され、約30年前に50軒ほどあった同業者は片手で数えられるほどにまで減ってしまった。最近は民家から和室が減り、障子やふすまの張り替えなどの需要がなくなったことも、売り上げ減につながっていると嘆く。

ただ、海外では美術品の修繕に日本の和紙や刷毛が重宝されており、ホームページなどで購入を希望する外国人も少なくないという。ネックは送料などの手数料が高いことで、今後は日本と同じように手軽に購入してもらえるようにしていきたいと話す。